バンドじゃないもん!がついに掴み取った成功 豊洲PIT公演を機にグループの歴史を振り返る

バンもん!がついに掴み取った成功

 その後、メンバーが道行く人に突撃取材するという設定の映像が流されたが、これもバンドじゃないもん!らしい茶番感があった。そして、インタビューに出てきた「プリン」「弾む」「リズム」という別々の人の発言をカットアップしてつなげる力技で、次の曲紹介をしてしまった。「プリズム☆リズム」である。

 そして、この日のハイライトは突然やってきた。ピアノの伴奏でしっとりと始まる新しいアレンジの「歌うMUSIC」だ。

 私が「歌うMUSIC」を初めてライブで見たのは、バンドじゃないもん!がでんぱ組.incらと原宿アストロホールに出演した2011年5月7日のことだ。もう5年以上前のことになる。その日は、それまでメンバーであった劔樹人とミナミトモヤがステージ上に現れなくなり、みさことかっちゃんによるツインドラム編成となった最初のライブでもあった。

 「歌うMUSIC」は、東日本大震災後にミナミトモヤによって作詞作曲された楽曲だ。バンドじゃないもん!が、混乱している当時の社会で生きる人々へ贈ったメッセージ・ソングである。初めて聴いたときから、「歌うMUSIC」は激しく私の胸に突き刺さったことを思い出す。「歌うMUSIC」こそが、私を5年後もバンドじゃないもん!の現場に居させたと言っても過言ではないし、バンドじゃないもん!最大の名曲だと思っている。2011年5月7日の「歌うMUSIC」のライブ映像は残念ながらYouTubeから消えてしまったが、私はその映像をiPhoneに入れて今も持ち歩いているほどなのだ。

 今回のツアー「バンドじゃないもん!全国ツアー2016 〜てっぺん目指そうぜ!武者修行編〜」で、バンドじゃないもん!が「歌うMUSIC」を披露していることは友人からも聞いていた。熊本県出身の望月みゆが、2016年4月14日以降の熊本地震に際して、Twitterで現地に向けた情報を発信したり、あるいは現地からの情報を発信したりしていたことも思い出す。

 そして、この日の会場である豊洲PITは、一般社団法人チームスマイルが東日本大震災の被災地復興支援活動を継続するために開設した会場なのだ。「PIT」とは「Power Into Tohoku!」の略なのである。ツアーファイナルの豊洲PITでバンドじゃないもん!が「歌うMUSIC」を歌ったことは、言葉こそなかったものの強いメッセージとして受け止めた。気づくと、私のメガネはどこかに吹き飛んでいた。

 「歌うMUSIC」と同じくバンドじゃないもん!の最初期から歌われてきた「ショコラ・ラブ」は、バンドじゃないもん!のライブの定番曲。前述の「プリズム☆リズム」と同じく大場康司が作曲した楽曲だ。

 「気持ちだけ参加します。」は、沖井礼二(TWEEDEES/ex. Cymbals)が作曲した楽曲。2016年屈指のアイドルポップスだ。作詞は沖井礼二とみさこの共作で、「慢性 五月病」の感覚を描いた歌詞も素晴らしい。「エクストリームはっぴー」にとどまらない心情をバンドじゃないもん!が歌っているのだ。バンドじゃないもん!が喜怒哀楽を飲み込んで、確実にひとつステージを上げた楽曲が「気持ちだけ参加します。」なのだ。

 終盤は「White Youth」「ヒラヒラ」「NaMiDa」と続いた。本編ラストの「NaMiDa」では、メンバーがファンに歌うようにうながし、会場に大合唱が響いた。

 もんスターが素晴らしいのは、メンバーがステージを去ると、間髪を入れずにアンコールを叫びだすところだ。それを受けて、ツアーで行った全国各地での写真がモニターに映し出されていった。

 アンコールは、8月24日に発売されるニュー・シングル「夏のOh!バイブス」で始まった。この楽曲のジャケットやMVで着ている水着姿でメンバーが登場したので、フロアが一気に沸き立った。私の近くにいた若者たちが前に突っ込んで行ったほどだ。そして、「夏のOh!バイブス」では銀テープが一気に噴出された。

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 「夏のOh!バイブス」は、ORANGE RANGEのNAOTOがプロデュースし、やはりORANGE RANGEのHIROKIが作詞した楽曲。言うまでもないが、この「夏のOh!バイブス」のジャケットは、ザ・ビーチ・ボーイズの1963年のアルバム「サーファー・ガール」のオマージュだ。

 「君の笑顔で世界がやばい」が終わると、もんスターはやはり間髪入れずにアンコールを叫び始めた。ダブルアンコールは、メンバーからもんスターへの感謝の言葉で始まった。

 このときの天照大桃子の「2年前は6人で200人キャパの会場を必死に埋めていた」という主旨の発言で思い出したのだが、6人体制になったバンドじゃないもん!が新宿MARZでワンマンライブをしたのは2014年7月14日。まだ2年しか経っていないのだ。鈴姫みさこは、「アイドルになってとりあえず進んでみたら仲間が増えた。この6人になって、どこまででも行けるぞと思った」という主旨の発言をしていたが、それが具現化したのがこの日の光景だった。3000人キャパの豊洲PITを埋めてしまったのだから。

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