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乃木坂46が東北アンダーライブで見せた新機軸 パフォーマンスの幅を広げた“ドラマ的演出”を紐解く

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 昨年12月の『アンダーライブ at 日本武道館』でひとつの集大成を迎えた、乃木坂46のアンダーライブ。そのアンダーライブに今年託されたのは、これまで東京を中心にした大都市圏に偏りがちだった乃木坂46のライブを、全国に向けて発信する役割だった。永島聖羅の卒業コンサートとしてのアンダーライブ名古屋公演を経て、4月19~24日に連日催された『乃木坂46 アンダーライブ全国ツアー2016~東北シリーズ~』は、大きな使命を引き受けたそのアンダーライブの、新たな章の幕開けといっていい。

 これまで、パフォーマンスの力強さで乃木坂46のライブを牽引してきたアンダーメンバーだが、今回の東北シリーズは単にその勢いを新たな地域に届けるだけのものではなかった。今シリーズのアンダーライブで行なわれていたのは、乃木坂46のライブの捉え方自体を大きく変える可能性を持つ試みだった。それは、ライブ全体をひとつの連なりを持ったドラマで彩りつつ、その中で各楽曲にも一歩深めた解釈を与えられるかという、表現の幅を広げるための模索である。

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 開演すると同時に、物語の「主人公」となる中元日芽香が、静かにステージ中央に歩いてくる。続いて他のメンバーたちもまた、それぞれの歩幅、それぞれの速度でランダムにステージ上を歩き出す。街の雑踏をばらばらに行き交う、切り離された個々のようなイメージの彼女たち。踏切の音や電車の走行音といった街の喧騒が響くうち、ばらばらに歩く群衆だったメンバーたちは、少しずつまとまりを持った集団になってゆき、やがてぴたりと止まると、そのまま一曲目「不等号」を披露するフォーメーションへとつながっていく。このプロローグによって、今回のアンダーライブがトータルでひとつの物語を伝える、演劇的なライブを描こうとしていることがうかがえる。続いて、「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」「ここにいる理由」といったアンダーメンバーの歩みを代表する曲が盤石のパフォーマンスで披露され、「ここにいる理由」のラストでは中元が再び主人公として現れ、プロローグから連なる静かな世界観を単独の振りで体現する。このように楽曲とライブ全体のストーリーとを随所に切れ目なく接続することで、ある統一した流れをライブ全体に浸透させていく。

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 「ここにいる理由」後の中元によるパフォーマンスの途中、上空からは羽根が降ってくる。こうした瞬間にスポットライトの中で印象的な表情を見せる中元の姿は、ライブ全体の世界観をリードするものだが、序盤の展開ではこの「羽根」がステージの進行の鍵になっていく。続く「何度目の青空か?」では大きく変更された振付の中、曲の終盤では中元の背後、左右にメンバーが広がり、彼女たちの腕をウェーブさせる動きで同曲の最高潮を迎える。それはまた、中元の背に生えた「羽根」のようにも映るものだ。そして、その絵面の記憶がまだ新しい状態で続けて披露されるのは、このシリーズのセットリスト初めてのユニット曲「羽根の記憶」である。つまりここに、「羽根」を介した一連のパートが生まれている。

 ライブ全体が一つの世界観でまとめられるのと同時に、この「羽根」パートのようにキーワードを用いて部分的に連携させたブロックを用意することで、ストーリーの描き方も大から小まで豊かなものになる。その面白さが最大限に現れたのが、「あらかじめ語られるロマンス」と「他の星から」とをミックスしたパートだった。「あらかじめ語られるロマンス」からメドレー的に「他の星から」へ移行してみせると思いきや、再び「あらかじめ語られるロマンス」に戻り、また「他の星から」へ……と、「星」というキーワードで結ばれたこの二曲を8小節ごと、さらには2小節ごとに行き交う構成は、双方の曲の参加メンバーが左右半々に分かれるフォーメーションも手伝って、パフォーマンスで対抗するような瞬間になる。このような共通項を持った楽曲同士のコンビネーションは、後半の「海流の島よ」からつなぎのダンスを経ての「魚たちのLOVE SONG」への流れでも登場する。「水」ないしは「海」というキーワードで結ばれるこの二曲のブロックは、水中に沈み、あるいはたゆたうようなシーンが新たな振付で表現され、個別の楽曲単位ではない物語の広がりを見せた。これらの振付に特徴的なのは、単純に新バージョンの振りの発案なのではなく、ライブ総体の流れに対して各楽曲がいかに貢献できるかという視点で構成されている点である。だからこそ、それぞれの新振付はオリジナルの振りとは違った水準で捉えられるべきだろう。

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