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フラワーカンパニーズ、初の武道館ワンマンが成功した理由ーー兵庫慎司が舞台裏含めて描く

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photo by HayachiN

 2015年12月19日土曜日。結成26年、デビュー20年にして、フラワーカンパニーズが初めて行った日本武道館ワンマンは、開催5日前にしてチケットが売り切れ、1階ステージ真横の席を追加発売したがそれも完売、当日券も若干出したがそれも発売開始直後にソールドアウトした。「メンバーチェンジなし! 活動休止なし! ヒット曲なし!」というのは、最近鈴木圭介(ボーカル)がライブの後半の「ここから盛り上がっていきますよ」というタイミングで言うおなじみのセリフだが、それに付け足すなら「日比谷野音も大阪城野音も渋谷公会堂もSHIBUYA-AXもソールドアウトしたことなし!」なバンドが、日本武道館のチケットを売り切ってステージの真横のスタンド席までオーディエンスで埋め、関係者も含めると約9,000人を集めたことになる。

 メジャーからドロップアウトし、レコード会社もマネージメントもなくなったが、メンバー4人だけで再スタートし、日本全国をワゴン1台で回って年間100本を越えるライブを何年も続けてきた結果、動員も評価もあがり、メジャーに復帰し、それ以降も毎年各地を回るツアー生活を続けた末、遂に日本武道館ワンマンへ辿り着いた──というのが、フラカンの一応のバンドストーリーだが、ただし、メジャーからドロップアウトする前も日比谷野音も渋谷公会堂も埋まらなかったわけで、ましてや武道館はその日比谷野音の3倍くらいのキャパがあるわけで、このような事態は本人たちもレコード会社等のスタッフも、そしておそらくファンの大部分も予想していなかっただろう。

 2015年2月に開催を発表して以降、この「フラカンの日本武道館」を成功させるために、本人たちやレコード会社は頭も身体もフル稼働して宣伝活動を行ってきたし(ベース&リーダーのグレートマエカワは各地のライブ終了後にチケットの手売りまでやっていた)、フラカンに「武道館のバトン」を渡し、「フラカン武道館応援歌」まで作ってエールを送った怒髪天や、毎年行っている夏の主催イベントの各地にフラカンを招いたスピッツなどの仲間のバンドたちやそのスタッフ、各地のライブハウスやイベンターやCDショップなどなどの協力態勢は「なぜそこまでやってくれるの?」と不思議になるほどの熱さだったが、その誰もが「かっこつく程度に武道館が埋まればいいな」という希望は持っていても、「俺たちの応援でソールドアウトまで持って行ったる!」とまでは思っていなかったはずだ。勝手に断言するな、という話だが、でも正直、ソールドアウトの報をきいた時、「やった!」という驚きよりも「マジ?」という驚きの方が大きくはなかったですか? みなさん。と、聞いて回りたいくらいである。

 ゆえに当日は、始まる前から、いや、開場前にオーディエンスが集まり始めた段階で、すでに「大成功」な空気ができあがっていた。この武道館の前アオリ作戦のひとつとして刊行されたフラカン初の単行本「消えぞこない メンバーチェンジなし!活動休止なし!ヒット曲なし!のバンドが結成26年で日本武道館ワンマンライブにたどりつく話」(リットーミュージック)の中でグレートマエカワは、「今年の日比谷野音(4月18日)のMCで、俺、言ったんだよ。『武道館が終わった時、俺らもやった!と思うだろうけど、お客さんもやった!と感じると思うよ』って。お客さんが『フラカンの武道館を、俺たち私たちが作れてよかった』って、他のバンドの時よりも思ってくれる気がするんだよね」と言っているが、まさにそのとおりになったと言っていい。実際に当日、本編後半のMCでグレートは、「みんなが作った武道館なんで、みんな『俺たち、武道館やったよ』って言っていいよ」という言葉で、オーディエンスへの感謝の気持ちを表した。

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photo by HayachiN

 というように、ソールドアウトしたことと、その事態をオーディエンスまで含めてみんなが当事者として受け止めたことが、この「フラカンの日本武道館」が成功した大きな理由ふたつのうちのひとつだと思う。じゃあもうひとつの理由は、というと、あの日あの場にいた人全員が感じたことだと思うが、フラカンが頑ななまでに「普段ライブハウスでやっていることをそのままやる、いつもどおりのライブ」にこだわったことだと思う。

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鈴木圭介(photo by 柴田恵理)

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グレートマエカワ(photo by 柴田恵理)

 普段と違ったのは、ステージ左右に花道が伸びていたことと(でも後半ちょっと使ったくらいだった)、ギターアンプとベースアンプが2台ずつ並んでいたこと(1台はスペア。故障等のトラブルがあっても大丈夫なように最初から2台置いたそうです)、セットリストが全キャリアを総括する集大成的なメニューになっていたこと(アンティノス・レコード時代7曲、トラッシュレコーズ時代10曲、現在所属するソニー・ミュージック アソシエイテッドレコーズ10曲)。それから、グレート=ミラーボールみたいなギンギラ仕様のオーバーオール(さらに二度目のアンコールではクリスマスツリー仕様に着替えた)、圭介=この日のために買ったという23,000円のジャケット(暑くてすぐ脱いでたけど)、竹安=グレート曰く「30年の付き合いで着とるの初めて見た」というベスト着用(本人曰く「ジレっていうんだって。知ってた?」)──と、「普段どおりがいいの!」と主張し、洗濯しすぎてクタクタのツナギ姿でステージに上がったミスター小西(Ds)以外の3人の衣裳が、普段とは違ったこと。あと、二度目のアンコールの「NUDE CORE ROCK’N’ROLL」の時に特効があった(金テープが飛んだ)ことくらい。

 それ以外は、数ヵ所に照明用のタワーが立っていてバックドロップが下がっているだけの、シンプルきわまりないステージセットといい、武道館なのにメンバーを映すビジョン(画面)がなかったことといい(3月16日にリリースされるこの武道館のライブDVD/Blu-Rayのための収録用カメラが何台も入っていたのに映さなかったということは、あえてそうしたということか?)、ゲストアーティストもサポートミュージシャンもなしだったことといい(かつて日比谷野音などで何度かゲストやサポートを入れたことがあるにもかかわらず)、本当にいつもライブハウスでやっているのと同じステージだった。年間100本ペースで何年も全国津々浦々のライブハウスでやり続けてきたことを、そのまんまやったライブだった。

 もっと言うと、当日のライブだけでなく、武道館までの活動そのものも、いつもどおりだった。武道館への集客を狙って夏フェス以降ライブをしぼるようなことはせず、12月の頭までワンマンツアー「STILL ALIVE」で各地のライブハウスを回っていたし、対バンやイベント等にも大小問わず出演していた。東京では武道館の1ヵ月前に、下北沢CLUB251でROCK’N’ROLL GYPSIESと2マンを行っている。前述のとおり、武道館を目指してさまざまなプロモーションを行ってきたが、活動自体はいわば「武道館シフト」を敷かず、日常の中にひょいっと武道館が入ってくるような形で行ったわけだ。

 普段フラカンはギリギリまでセットリストを決めないバンドなのだが、この武道館においてもグレートは同じ方針を貫き、ゆえに武道館の2ヵ月前になっても決まらないまま。その頃僕は、武道館で販売するパンフレットに載せるメンバー個別インタビューを行ったのだが、竹安は「グレートがまだセットリストを決めてくれない」「だから不安でしょうがない」「今の段階では恐怖心しかない」と言っていた。で、グレートのインタビューでそのあたりのことをきいたところ、「いつもどおりやらんと失敗しそうな気がする」という答えが返ってきた。

 つまり。グレートをはじめ本人たちがどこまで自覚的だったかはわからないが、この「フラカンの日本武道館」は、何年も何十年も、何十本も何百本もライブハウスでライブをやって生きてきたバンドが、ライブハウスで生きるバンドのマインドのまま、ライブハウスで生きる日常の中で日本武道館に立って、ライブハウスでやっているライブと同じことをやる、ということにこそ意味があり、意義があり、そして成功の理由があった、ということなのではないだろうか。

 そういえば日本武道館のチケットは「全国のライブハウス先行」という形で販売がスタートしたが、そこにもフラカンの姿勢が表れている。確かにフラカンがまず力を貸してほしいと思う相手はライブハウスだよなあと思うし、そりゃあライブハウスも協力したくなるよなあと思う。で、そんなフラカンだからこそ、彼らとおなじようにしぶとくライブハウスで活動し続ける先輩バンドたちも、おなじようにライブハウスで生き延びている同期のバンドたちも、ライブハウスでがんばっている後輩バンドたちも、ライブハウスが仕事場である各地のイベンターやCDショップなどのスタッフたちも、応援したい気持ちに自然になったのだと思う。

 ライブハウスを卒業し、大きくなっていくバンドの目標、あるいは通過点としての日本武道館ではなく、昔も今もこれから先もライブハウスで生き続けるバンドの、その底力の発露としての、イチかバチかの日本武道館。いや、そのバンドだけでなく、仲間や関係者やファンも含めた上での底力の発露としての日本武道館、というのが、より正しい言い方だろう。

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竹安堅一(photo by 柴田恵理)

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ミスター小西(photo by 柴田恵理)

     
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