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ギター1本で世界92カ国を回った男ーーシンガーソングライター・迫水秀樹が見た風景

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 「世界で勝負する」それは、クリエイター志向の強い仕事に就くものにとって、誰もが一度は思い描いてみる夢でもあるだろう。特に芸術の分野、こと音楽においてはそういった憧れは一層強いのかもしれない。近年、海外における日本の音楽への評価も高まり、世界へと羽ばたくアーティストも増えた。日本での成功を収め、華々しく「世界デビュー」を果たすアーティストがいる一方で、単身海外へ挑戦していくアーティストも多くいる。1年のほとんどをツアーで世界中を巡るインストゥルメンタルバンドのMonoや、英国ロンドンで本格的活動しているBo Ningenなどのバンド、ソロアーティストでは、ナオト・インティライミが「なおと」名義時代に、2003年8月から2004年末まで28カ国を放浪している。

 今回紹介するのは、迫水秀樹というシンガーソングライターである。ギター1本手にして世界各地を歌い巡り歩いた。ヨーロッパ、アジア、オーストラリア、アメリカ、アフリカ……、旅は3年半に渡り、訪れた国は全92カ国におよんだ。路上ライブで生活費と次の街までの旅費を稼いでいく世界放浪、歌の旅である。

ロンドンで知り合った、インドネシアで活動する映像監督 Eugene Panji によるミュージックビデオ「えびおじさん」

 細身の長身、涼しげで二枚目な風貌から発せられる歌声は、一見クセはあるが猫の鳴き声のようで人懐っこさがあり、妙な心地良さがある。日本人にしか作れないようなメロディーでありながら、どこか洋楽っぽさも漂う。Aメロ、Bメロ、サビといった予定調和もジャンルという既成概念も存在しない楽曲は新鮮味を感じながらもどこか懐かしさがある。聴いていると、なんだか優しい気持ちになれるのだ。そんな魅力、いや、魔力がある、といったほうが正しいのかもしれない。不思議なアーティストなのだ。

 そんな彼が長旅を終え、先日帰国したとのことで、話を聞いた。

「まずは、ロンドンからフランスに行って、ヨーロッパ全土を周り、そして西アジアに入って」おもむろに取り出した手書きの地図で旅路を説明する。訪れた国は黒く塗りつぶされていた。我々がよく見慣れた世界地図を逆さまにしながら説明する彼の姿が、アメリカ大陸を南下し、アフリカへと、旅の後半に南半球を巡ってきた様子を物語っている。

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この地図全体が真っ黒に塗りつぶされるのは何年後だろうか

 かつて彼は、American Short Hairというバンドのボーカリストだった。凛として時雨も所属するムーヴィング・オンからアルバムをリリース。代官山UNIT、渋谷クアトロでのワンマンライブを成功させるも、2010年に活動休止。その後、ソロ活動にマンネリ感を抱くようになり、2012年春、ギター1本抱えて身一つで世界へと飛び出した。

「『歌で世界中を旅する』という夢は以前からうっすらとあったんです。やっぱり音楽をやっている以上、海外への憧れはありましたから。それと、ピアニストの上原ひろみさんの影響もあります。彼女のように音楽を通して世界を見てみたいと。英語をちゃんと学びたい気持ちも強かったので、まずはイギリス、ロンドンへ。語学留学という形でした」

 ロンドンで英語を学びながら、週末に路上ライブを行うという生活を送る。

「生活費を路上ライブで稼げるようになったんです。それが『歌だけでやっていけるんだ』という自信に繋がり、『このままヨーロッパ中を巡ろう、それが出来たら、世界一周してみよう』という気持ちになりました」

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