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椎名林檎の曲はなぜ強烈に個性的なのか? “林檎節”の特徴を譜割り・コードから徹底解説

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黒田隆憲
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 11月25日にリリースされる、柴咲コウのニューシングル「野生の同盟」の表題曲は、椎名林檎が作詞作曲、アレンジそしてプロデュースを担当したことで話題となっている。これまでにも椎名は、様々なアーティストへの楽曲提供やプロデュース、映画や舞台の劇伴などを手掛けてきたが、どの曲も一聴して彼女の曲だと分かる強烈な個性を感じさせるものだ。

 椎名の楽曲といえば、唯一無二ともいえる歌声やヴォーカル・パフォーマンスにまず耳を奪われるが、たとえ彼女が歌ってなくてもそれと分かるのは、そのソングライティングにも特徴があるからに他ならない。そこで今回は、彼女が他アーティストに提供してきた楽曲を聴きながら、「林檎節」ともいえるエッセンスを紹介していきたい。

 彼女のソングライティングで最も特徴的なのは、テンションコードやテンションノートを「ここぞ」という絶妙なポイントで使用している点がまず挙げられる。特によく使われているのが、9thや11th、13thといったテンション。例えば、ともさかりえに提供した「カプチーノ」では、<あたしの成長を待って>と歌う部分で、Cm7というコードに対し、Fの音が使われている。これは11thの響きとなるわけだが、ほんの一瞬出てきただけで、椎名らしいアクの強さにハッとさせられるのだ。このアクの強さは、彼女自身の曲では「茎」(『加爾基 精液 栗ノ花』収録)でも堪能できる。<クレマチス>と歌うところはD7のコードに対して、EとD#という2つのテンションノートが登場し、それぞれ9thと♭9thの響きを担っている。実際に歌ってみると非常に難易度が高いが、この曲を忘れがたいものにしている重要な部分だ。また、栗山千明に提供した「決定的三分間」では、サビの<奪われて>と歌う部分、Amというコードに対してEの音を比較的長めに伸ばしている。これは13thの響きになっており、どこにも着地できない浮遊感が、いつまでも耳に残る中毒的な作用をもたらしている。

 おそらく、こうしたテンションノート、テンションコードはジャズの影響によるものと思われるが、シンプルなコード進行に対してメロディだけがテンションノートになるなど、ロックのフォーマットに落とし込むことで彼女らしさを出している点も指摘しておきたい。ただし、一歩間違えると途端に作為的に聞こえてしまう。あくまでも、必然性を持ったメロディであることが大切なのだ。

     
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