ファーストアルバム『Awesome City Tracks』インタビュー
Awesome City Clubが明かす、バンドの成り立ちと活動ビジョン「ドカンと売れたら一番おもしろい」
「ある意味、ごっこ遊びの延長で音を作っている感じ」(atagi)
——だけど、デビューまでいわゆる音楽業界の大人たちがまったく関与してなくてあのクオリティーまで持っていったっていうのは驚きですね。
マツザカ:もともと音源で稼ごうって気はまったくなかったんですよ。とにかくネット上に音源をアップしていって、自分たちでTシャツとかの物販も作って、アートワークとかミュージックビデオとかも友達に頼んで。入り口のハードルをできるだけ下げたかった。そうやっていくことで、事務所に入るまでに「争奪戦」になる状況を作りたかったんです。
——「争奪戦」というのは?
マツザカ:よく話題のバンドがデビューする時に事務所やレコード会社が「争奪戦を繰り広げた」って言うじゃないですか? あの状態にしたかったんですよ。
——おもしろいなー! まぁ、「争奪戦」にも出来レースとガチなやつがありますけど(笑)。
PORIN:あはははは。
——ガチな状況にまで自分たちで持っていったわけですね。
atagi:みんなこれまで他のバンドをやってきて、成功してきたわけじゃなかったから。お互いの足りていない部分を補いあって、助け合って、みんなでそこまで持っていったんですよね。
——じゃあ、メジャーのフィールドで活動するという目標は、全部自分たちでやっていろんなことがうまく回っていた段階から掲げていたわけですね。
マツザカ:正直、インディーズでもメジャーでもどっちでもいいという気持ちはあったんですよ。でも、SoundCloudやYouTubeに音源を上げていく過程で、自分たちの中にある基準で、これを商品として人に手渡してもいいと思えるまでには何か足りないものがあって、そのハードルを超えるためにはメジャーでやっていく必要があるかなって思ったんですね。
——確かに、これは音楽性に関わってくる問題だと思うんですけど、パンク系のギターバンドとかとは違って、Awesome City Clubの音楽はいい音であればあるほど波及力を増すタイプの音楽ですよね。
atagi:音質面の問題もそうですけど、もっと全体的に洗練させていきたいという思いもあったんですよね。
マツザカ:結構周りから言われたんですよね。「インディーズのままでやっていく方がカッコいいのに」って。でも、何が一番おもしろいかって考えた時に、ドカンと売れたら一番おもしろいと思ったんですよね。そのためには、今の事務所とレコード会社とチームを組むのがいいと思ったんです。デビューまで音楽以外の情報をまったく出さなかったのも、別にミステリアスにしたいとかじゃなくて、単純にマイナス・プロモーションになるようなことはしたくなかったんでしょうね。アー写を作るなら作り込んだものにしたいし、ホームページを作るならちゃんとしたものにしたい。キレイじゃないものを世に出すくらいなら、何もしない方がいいっていう考えで。
——なるほど。さっき名前もちょっと挙がりましたけど、Awesome City Clubの音源を聴いて自分が感じたのは、それこそフォスター・ザ・ピープルだとか、フェニックスだとか、ああいうアメリカやヨーロッパのバンドのサウンドで。彼らのやってる80’sテイストのポップソングってすごく日本人にも受ける可能性がある音楽だと思うんですよ。でも、これまで何故かそこにドンピシャでハマるバンドが日本にはいなかった。そんな大きな金脈をAwesome City Clubは見事にピンポイントで突いてきたなって思ったんですよ。
atagi:あぁ。よく考えているのは、あまり尖りすぎちゃいけないなってことで。ニッチな場所で尖ったことをやるのもカッコいいと思うんですけど、僕らはそういうバンドじゃないよねって。そういう意味では、感覚にまかせてやりたい音楽をやっているというよりも、メンバーでいろんなものをすり合わせて、ある意味、ごっこ遊びの延長で音を作っている感じなんですよね。
——なるほど。本気のごっこ遊びってことですね。
atagi:そうですね。今の自分たちが上手にできる範囲というのは常に考えてます。自分なんかは、60年代のソウルミュージックだとか、70年代のダンスクラシックスとか、そういう音楽を好んで聴いているんですけど、それをそのままやることはできないし、方法論としても違うと思っていて。
PORIN:私は最近の洋楽全般を普通に聴いている感じです。
マツザカ:でも、今の洋楽って、それこそ60年代、70年代、80年代のサウンドに深くリンクしているじゃないですか。だから、わりと自分たちよりも年上の人からも「なんか懐かしいね」って言われることが多くて。そういうのは嬉しいですね。