木村カエラが新作で見出した創作スタンスとは? 「沈んだ時の世界もちゃんと温めてあげたい」

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『KAELA presents GO!GO! KAELAND 2014-10years anniversary-』10月25日公演より(写真=ミヨシツカサ)

 

「『TODAY IS A NEW DAY』は木村カエラを表している曲」

――先ほどの「鏡」の話にも通じるかもしれませんが、聴き手など第三者に開かれている感覚は今回の作品の特徴のひとつかと思います。カエラさん自身、今作を作るときに外に向うエネルギーを感じていましたか?

カエラ:それはめちゃめちゃありましたね。第三者を立てることで、自分も聞いている人の感覚になる部分がありましたし、自分が感じてきたことを経て「人の背中を押したい」という気持ちがとても強かったですね。10年間自分がやってきたことも、「夢を忘れないで」「一人で生きてはいけない」「何があっても自分自身で自分の中をどうにかしなきゃいけないんだけど、私はそのお手伝いをしたい」ということ。それがこのアルバムにはすごく入っています。「ぼく」という言葉がよく使われているのは、それが出ているからだと思います。自分が誰かに励まされたいというモードがあったので、第三者を「ぼく」という形で作り出して、自分自身にも言葉を掛けてもらう、ということです。例えば「one more」とかもそう。「あなたしかないものがあるんだ あなたがやり遂げることが僕にとってすごいサプライズになるんだよ」と言われたら、私はできる、みたいな。もし何かをやろうとしている人や、自分の個性を見失っている人がいたら、その人達への応援ソングになるんじゃないかと思いました。

木村カエラ - 「TODAY IS A NEW DAY」Music Video

――『TODAY IS A NEW DAY』はこのアルバムを象徴する曲で、ライブでも大切に歌われていたと感じました。

カエラ:この曲は本当に木村カエラを表している曲だと思っています。10年間ずっと関わってきたASPARAGUSのしのっぴ(渡邊忍)が作ってくれているというのがまずあります。歌詞も彼と共作しているんですけど、Aメロやサビはけっこう彼が書いていて、私を知っている人にしか書けない世界があると思います。私自身は元々、自分の心と向き合いすぎる方で、ちょっと根暗なところがある(笑)。それから「幸せになりたい」「笑っていたい」とかいうことが私の生きていることのテーマでもあります。だから私は毎日どこかで「幸せでいよう」「笑っていよう」と気持ちを切り替えています。その感覚がすごく入っていて、「何かあっても自分の気持で切り替わるから大丈夫」とすごく力強く言っている曲で、この曲を聴くと気持ちが切り替わって「大丈夫!」と思えます。私らしいし私のテーマでもあるし、全部入っている感じがします。

――根暗かどうかはさておき(笑)、確かに内省的な要素は作品の底流に流れていて、リスナーはそれを知っているから、カエラさんの曲にハマれるのかもしれません。自分の中の影の部分とずっと向き合ってきたという感覚ですか。それともキャリアを重ねるに従って悩みも増えてきたと?

カエラ:常に悩んでましたけど(笑)、そのときどきによって悩みは違ったりしますね。デビュー当時は自分をどう出していけばいいか悩んでいた時期もあります。有名になったらなったで、奇抜な部分があるからか、あることないこと書かれて傷ついたりもしました。震災が起きた後は、傷ついたり、それを乗り越えようとしている人たちに届けるためには、自分の奇抜さは必要ないのでは……と考えたこともありました。「Sun Shower」のような優しい曲や自分の内面に向き合った曲を出した方がいいんじゃないか、とか。とにかく誰かに対してできることを探して悩んできた時期もあります。

 でも今はとにかく、「私にしかできないことがあるはずで、それを全力でやる」という感覚です。今は攻めの状態にあって、10周年といっても「私、全然止まってないよ」という気持ちなんですね。とはいえ、ちゃんと影があって光があるというか、そのふたつはくっついて離れないもので、両方ないと真実味がない感じはします。全力で作りすぎて、現時点ではどう説明していいかわからない、という感じがありますけど、10年間の中で一番いいアルバムなんじゃないかと私は思っています。聴いてもらったら、自分の中で何かが変わったり、はっとすることは絶対にあるはずです。そんな変化を求めて作ったところはあるから、それを体験して欲しいと思います。

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