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メジャーデビューアルバム『ENAK DEALER』インタビュー

DJ JET BARONが案内する、インドネシア音楽の快楽「FUNKOTはアジア流ハウスの進化形」

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DJ JET BARON a.k.a. 高野政所。

 インドネシア発祥のダンス・ミュージック〈FUNKOT(ファンコット)〉。その独特のリズム感と高速ビート、そしてオリエンタリズムを内包したサウンドは、フロアミュージックでありながら、いわゆるヨーロッパ発祥のクラブ・サウンドとは一線を画したローカル・ビーツでもある。

 そのサウンドに注目し、日本での普及役、FUNKOT親善大使として数々のメディアやクラブ・イベントでアピールしているDJ JET BARON a.k.a. 高野政所が、ついにオリジナルFUNKOTアルバム『ENAK DEALER』をリリースする。FUNKOTのオリジナリティと、このアルバムに込められた思いとはなんなのかを、FUNKOTの宣教師に直撃した。

DJ JET BARON「Let's GO! シャンパンマン feat. CHOP STICK」

「FUNKOTをやっていればどんな音楽も表現できる」

――アルバム「ENAK DEALER」完成おめでとうございます!

DJ JET BARON(以下JET BARON):ありがとうございます!

――日本でFUNKOTのオリジナル・アルバムが出るという異様な状況に戦慄しております。

JET BARON:普通におかしな話ですよね。しかも僕自身、37歳でメジャー・デビューですから。

――30半ば超えてメジャー・デビューというと、泣きバラードみたいなパターンが多いですが。

JET BARON:泣ける曲どころか、全編ハイテンションで進むオリジナル・アルバムです。言わば、真逆です。

――ではその今作のテーマになっている「FUNKOT」という音楽について、ガイダンス願えますか?

JET BARON:インドネシアはジャカルタ、コタ地区というところで生まれた音楽です。元々は90年台後半にハウス・ミュージックがインドネシアに流入した際、現地のDJがそのままプレイするのはつまらないということで、現地の大衆音楽や民族音楽のリズム・パターンやエッセンスを加えて改造し、高速化したのがFUNKOTなんですよね。要は、アジア流ハウスの進化形、といっても過言ではないと思います。

――「改造」ですか。

JET BARON:より気持ち良い、現地民の肌に合うようにブラッシュアップした感じだと思いますね。ただ、そういった改造が同時多発的に起こったんで、正確な起源はわからなくて、何人もFUNKOTの“始祖”がいるんですよ(笑)。そうやって流入文化を改造――僕はそれを“魔改造”って呼んでるんですけど――するのが得意みたいなんですよね。

――日本だと、本流のものを「ありがたくいただく」という感覚だったり、ドメスティック化/J-POP化を嫌がる風潮もありますが、その逆なんですね。

JET BARON:それが純粋にスゴいなと感じるんです。それによって、世界で類を見ないダンスミュージックが生まれたわけでして。

――政所さんがFUNKOTに出会われたのは?

JET BARON:最初はYouTubeで発見したんですよ。でも、ビートが速すぎるし、聴いたことのないビート感だし、やけに陽気だし、最初は「オモシロ」程度で捉えてたんですよ。ただ、その面白さを現地で感じたいと思って、最初はバリ島に行ったんですが、観光客向けのクラブでは全然プレイされていなくって。それでリサーチしたらローカル向けのディスコでかかってることが判明し、行ってみたら外国人は僕1人だったんです。

 そこでFUNKOTを爆音で聴いたら、翌日の昼ぐらいまで脳内に響いているくらい衝撃を受けていたんです。これをインドネシアだけで地産地消されてしまうのはもったいないと思って、RHYMESTERの宇多丸さんのラジオ番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ)などで紹介させてもらったりしたんです。

――とにかくビートが早いですよね。ハウスというよりも、ハッピーハードコアとか、ドラムンベースに近いというか。

JET BARON:聴いた当初はドラムンベースの派生かと思っていて、現地の人に尋ねてみたんですが「ドラムンベース……何それ?」って言われて(笑)。BPMも180ぐらいで作って、DJがプレイするときは200ぐらいまでピッチが上がったりするんです。もう、とにかく早い。かといって、BPMに縛られていない、ダウンビートという手法があって曲中にBPMが下がったりする。それもビートを半分で取る、というだけではなく全く関係ない速度になる。ボイス一発で変わったりして。多少強引なのかも知れないけど、とにかく自由なんですよ。

 けど、そのFUNKOTスタイルこそ、すべての音楽ジャンルを吸収できる強みでもある。とにかく“なんでもアリ”だから、FUNKOTをやっていればどんな音楽も表現できるし、ジャンルにこだわるのがバカバカしいな、ってすごく楽にもなりました。その感覚をインドネシア語にすると、今回のアルバムタイトルにも使用した〈ENAK〉になるんです。直訳すると「おいしい」って意味なんですが、良い音楽を聴いても〈ENAK〉、セックスして快感を得ても〈ENAK〉、運動していい汗をかいても〈ENAK〉……あらゆる快楽を〈ENAK〉で済ますんです。でも、そのシンプルさがいいなって。かっこつけるじゃなくて、気持ちいい/楽しいの概念の中心における作品にしたいなと。

――この快楽に身を任せるほうがいいと。

JET BARON:“アガれば勝ち”が基準なんです。そんな快楽主義的な音楽でありながら、現地のDJはそれでメシを食えているし、そのためのDJスクールがあり、FUNKOTを制作するための講座なんかも開かれている。FUNKOTはインドネシアでひとつの経済システムとしても成り立っているんです。

     
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