DJ JET BARONが案内する、インドネシア音楽の快楽「FUNKOTはアジア流ハウスの進化形」

「“おもしろおじさん”がリスペクトされる世の中のほうが、おじさんも生きやすい」

プレイ中のDJ JET BARON。

――インドネシア以外での広がりは？

JET BARON：まだアジア圏のみです。でも、日本で局地的に話題になったことで、“クールジャパン”的な意味合いもあり、カナダのクリエイターが始めたりと、徐々に世界に伝わっていっているような気はします。FUNKOTは日本だと、ナード／サブカル寄りの文脈で捉えられることも多いんですが、インドネシアでは、あくまでゲットー・ミュージックなんです。日本に留学できるようなインドネシアの富裕層は知らなかったりもする音楽なんですよね。

DJ JET BARON「ラジオ・デイズ feat. 丸省 and メグ from the Millibar3」

――なるほど。そしてアルバム『ENAK DEALER』ですが。

JET BARON：日本にFUNKOTを輸入して5年間の軌跡が1枚に詰め込むことのできた作品です。日本でウケるためには、女の子のボーカルを入れるべき、トピックをもっと掘るべき、FUNKOTのオリジナル性を保ちつつ日本寄りに……そんなあがきと、日本の方々に「FUNKOTを聴いてもらいたい！」という一念に突き動かされたアルバムだなと。

――ラップが入った曲が多いですが、それは現地でも？

JET BARON：現地のFUNKOTは洋楽ヒットからインドネシア国内、アジア圏の人気曲のリミックスが主体なので、インストもの以外のオリジナルというのが、あまりないんですね。今回ラップやレゲエが多いのは、自分のFUNKOT以外の音楽的趣味が割と強く反映されていると言えます。なので、なんでもありなFUNKOTの思想を守りつつ、日本において独自に進化したFUNKOTのアルバムであると言えますね。

――FUNKOTというとビート感は通底していますが、バラエティ豊かな作品になっていますよね。

JET BARON：FUNKOTにはこだわるけど、“とらわれる”のはやめようと思いました。なので部分的にレゲエであったり、ムーンバートンのようなビートも入ってきます。でも、それも含めてFUNKOTなんですよね。CHOP STICKさんをはじめ、客演してくれたアーティストのみなさんは根本の音楽ジャンルは違うけど、それよりも今回は“パーティ感”や“アッパーさ”にフィールしてくれたと感じています。

“おもしろおじさん”の集合写真。

――「おもしろおじさん feat. CHOP STICK, 丸省 and 毒蝮三太夫」では、毒蝮さんの参加に驚きました。

JET BARON：“おもしろおじさん”っていう概念が自分の中であるんです。例えば、マンガだったら『北斗の拳』のケンシロウより『キン肉マン』のキン肉スグル、カンフーでいったらブルース・リーよりジャッキー・チェンというか。今作で5曲に参加してもらっているCHOP（STICK）さんは、そもそも“おもしろおじさん”なわけです。面白さと存在感、その人間力だけで場を支配してしまう力の持ち主。実際、レゲエのイベントでも女の子にセクハラばかりしているんですが（笑）、それでも完全に女子に喜ばれてます。女の子をいじっても嫌がられないし、しかもモテるって……人間として最高じゃないですか。じゃあ、その究極は……って考えたら「このババア！」と悪態をついても愛される毒蝮さんだ！と思いまして。

　僕もCHOPさんや毒蝮さんのような「おもしろおじさん」になりたい。その概念を形にしたら、この曲になったんです（笑）。そこに、おもしろラップおじさん役として丸省さんにも参加してもらって。曲が完成して、改めて“面白いおじさん”、“楽しいおじさん”ってのは素敵だと感じました。

　男は人生でおじさんである時間が一番長いし、“おもしろおじさん”がリスペクトされる世の中のほうが、おじさんも生きやすい。そんな社会にしていきたいし、「キミもいつかは！」っていうメッセージを込めています。

――毒蝮さんと南波志帆さんが同じアルバムに入っている事実も衝撃ですもんね。

JET BARON：それができるのが、FUNKOTの魅力なんです！

（取材・文＝高木“JET”晋一郎）