>  > unBORDE鈴木竜馬氏のレーベル運営術

キーパーソンが語る「音楽ビジネスのこれから」第4回

unBORDEヘッド鈴木竜馬氏インタビュー(前編)「まずはクラスの端っこの子たちに届けたい」

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 音楽文化を取り巻く環境についてフォーカスし、キーパーソンに今後のあり方を聞くインタビューシリーズ。第4回目に登場するのは、2010年に神聖かまってちゃんを第1弾アーティストとして“unBORDE”を立ち上げた、同レーベルヘッドの鈴木竜馬氏。RIP SLYMEをはじめ、きゃりーぱみゅぱみゅやゲスの極み乙女。など革新的なアーティストを世に送り出している同氏は、2014年11月1日付でワーナーミュージック・ジャパンの執行役員にも就任した。音楽市場が大きく変化する時代にあって、クリエイティブとビジネスの両面で新しい領域を切り開く鈴木氏に、レーベル運営の理念と方法論を詳しく訊いた。

「100万よりも20万の方が、どういう人たちなのか見える」

――unBORDEは、神聖かまってちゃんやゲスの極み乙女。など、高度な作家性を持ったアーティストたちをメジャーフィールドで活躍させていく、ということに目覚ましい成果を上げています。そこでは通常とは違う方法論が機能していると思いますが、2010年12月の立ち上げ時から掲げている「エッジ」というコンセプトについて、改めてお話を聞かせていただけますか。

鈴木竜馬(以下 鈴木):「時代感とエッジ」ということを立ち上げ当初から言っています。その表現が抽象的でわかりづらいかもしれないと思ったので、今は「ワンアンドオンリー」的なことも掲げています。背景には、ミリオンセラーの時代が過ぎ去った現在の、音楽を聴く環境や聴く人の姿がある程度見えてきたことがあります。レーベル立ち上げ時の会社のミッションとして、そういう認識を踏まえて、「100万枚×1」を作るのは難しいけれど、「20万×5」や「10万×10」など、どのような方程式でもロジックでも良いからグロスの数字を作っていこう、と。

――そのミッションにおいて、鈴木さんのA&Rとしての経験が生きたわけですね。

鈴木:僕が現場のA&Rとして携わってきたRIP SLYMEとはもう15年間一緒にやっています。彼らは当時時代感があってエッジが効いていました。BONNIE PINKもそうです。常に、300万、500万というようなマスを狙うのではなくて、オンターゲットで届けられるものにフォーカスをしてやってきています。やはりそれを活かしてレーベルをやるならば、学校のクラス全員が聴いてくれる音楽ではなくて、こちらが投げた球を拾ってくれる人達に向かって投げること、です。それをエッジと呼んでいいのかわからないですけど、おしなべた丸い球体ではなく、教室の隅に固まっているようなデコボコした人たちに対して事を起こすこと、つまり送り手側だけでなく受け手もエッジが効いていて欲しくて、それが僕の言う時代感です。そのように、少し冒険することに「エッジ」という言葉に込めた思いがあります。平たいものを見渡してもよくわかりませんけれど、デコボコしたところ、届ける顔が見える範疇にものを投げたいと思っています。

――受け手の顔を想像しながら届けていく、と?

鈴木:そうです。それは先ほどの数の論理で言ってもそうです。100万よりも20万の方が、どういう人たちなのか見えると思います。

――例えば契約の段階では、そのアーティストのお客さんは20万ではなく、1~2万ですね?  そこから20万まで成長していくかどうかをどのように見極めますか。

鈴木:そもそもはオンターゲットで、おおよそのフォーカスを当てて、そこに向けて動いていきます。想定を超えた範疇で受け入れられると、きゃりーぱみゅぱみゅのようになります。実はきゃりーも元々は20~30万の範疇で狙って動いていましたが、それが一気に大きくなりました。今回のゲスの場合もそうかもしれません。むやみに新たなアーティストとサインをする事はしません。「20万が見えるかもしれない」という人と深く関わりたいと思っています。僕らの業界は「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の水商売だとずっと言われてきました。しかしそれは、数を打った中でたまに100万枚が出れば良い、という時代だったからです。難しいことだけれど、僕は十戦十勝でいきたいとずっと思っています。「20~30の球を投げてその中で5個当たればいいな」でやって会社の売上としてはカバーできるかもしれませんけれど、そこに20の死に体が出てしまうことはアーティストにとってやっぱり良くない。それよりも僕は、シェイクハンドする5アーティストのポテンシャルを最大に引き出して、全員20万売れて100万に届く、という方が良いと思っています。だから無理難題だとは思っても、気持ちの目標としては十戦十勝を掲げています。

――実際に集まったアーティストの顔ぶれですが、かつてのレーベルというのは音楽性の統一感を重視する面があったように思います。unBORDEの場合は、音楽性でいえばバラバラと言えるかもしれませんが、それぞれのアーティストに強い個性があり、そこに何か共通性があってひとつのブランドが生まれているように見えます。

鈴木:6クラスあったとして、どのクラスにもたいてい少数派がいます。そういう端っこに固まって何かを生み出しそうな子たちというのは、クラスによっては、不良かもしれませんし、ギークなオタクっぽい子たちかもしれません。それぞれ違うタイプのマイノリティではあるんだけれど、トータルとして同じ学年の同じ学校ということが時代感なのかな、と思っていて、そういうレーベルになれればいいと思っています。

――クラスのアウトサイダー的な人たちがバズを起こしやすい状況がここ10年ほどで生まれやすくなっているとお考えですか。

鈴木:それはあると思います。僕らの業界は歯ブラシを売っているわけではないので、1億3千万人の人口に対して1億本を狙うわけではなくて、100万枚売れれば大ヒットという世界です。ということは、人口を考えれば元々とてもニッチな業界です。その市場が100万から10万に更に縮小した、ということですが、逆に言えばターゲットの顔は、だいたい見えています。たとえば雑誌媒体や衛星系の放送メディアに対して、慣れた我々は「意味はあるのか?」「今どきユーザーなんているのか?」と思ってしまう面もあります。でも、やっぱり見ている子たちはちゃんといるし、放課後タワレコに行く子もまだいるんです。だからそこはオンターゲットで、闇雲にばら撒くのではなく、そういう好きな人たちがいるところに丁寧に届ける、ということはきちんとベースとしてやっていきたいと思っています。

 けれど、それだけで化けることはないので、そこにどういう風に届けるか。届ける顔は昔より見やすいのではないかと思います。本当は長万部から石垣島まで全国に届けることができればいいですし、きゃりーぱみゅぱみゅはそうなったと思いますが、ことロック寄りのものをやっているときにはまずオンターゲットに丁寧に届けることです。クラスの端っこの子たちに届けると、実はその子たちに憧れていて真似をする別の層が出てきます。それがヒットということで、そうやってクラスの2〜3人しか聴いていなかったものが広がってきたのがゲスの極み乙女。です。そのためにはまず、最初の子たちに丁寧に届けることだと思っています。

――届ける手段としてはネットも含めて、ですね?

鈴木:ネットを使うと時にはその流れが双方向になります。ツイートしたことに対してDMを返してくれる子がいたりする、というのはユーザーが近いですよね。

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