TRANSTIC NERVE、シド、NoGoD……独自の音楽的進化を遂げたV系バンド7選

 ヴィジュアル系は文化である。音楽ジャンルではない。発祥に関しては色々な解釈があるので触れないが、そもそもは「人と違うことをやる」という自己表現の手法として、化粧や衣装を始めとする独自のスタイルが発展した経緯もある。それは世界で類を見ない日本の音楽シーンにおける一つの象徴とも言えるものだろう。何かと偏見もあるが、ジャンルの縛りがないこの文化は時代とともに変化し、音楽や演奏スタイルも個性的で実力のあるバンドを多く生みだした。既成概念に捕われることのないオンリー・ワンのスタイル、そんな文化とともに高い演奏スキルと独創的な音楽性を持つバンドに迫ってみたい。

ヴィジュアル系シーンを見てきたTRANSTIC NERVEの復活

TRANSTIC NERVE

defspiral 2nd Anniversary Live -DFS- より「ピンクスパイダー」

 今年デビュー15周年を迎えるTRANSTIC NERVEが12月29日に一夜限りの復活をすることを発表した。X JAPANのhideの見いだされたバンドである。その後、the Underneath、現在はdefspairalとしてバンド名と音楽性を変え、そのキャリアと実力でシーンを賑わしているバンドだ。その15年の活動に見る音楽性の変化は、まさに現在に至るまでのヴィジュアル系シーン史を見ているような気さえ思えてくる。

 エフェクティヴなギターと同期をふんだんに取り入れたサウンドで人気を博し、インディーズに活動拠点を戻してからは、全編英詞アルバムなど本格的な洋楽志向とも云うべきモダンヘヴィネスサウンドに傾倒していく。2008年にはthe Underneathとしてヴィジュアル系ロックバンドとして活動を開始。ラウドロック・シーンを賑わす世界規模のフェス・ツアー、“Taste of Chaos Tour 2008”へ日本からMUCC、D’espairsRayと共に参加。アメリカのヘヴィメタルバンド、Avenged SevenfoldやBullet for My Valentineなどと北米38都市を廻り、日本よりも先に海外においての人気と存在を不動のものする。

 90年代のヴィジュアル系ブーム末期に登場し、ミクスチャーやヘヴィロック要素を取り入れるバンドが増える中での完全洋楽志向。そして“Visual-kei”の先駆けとしての海外進出、その先見性もさることながら、何よりも圧倒的な演奏力の高さに定評がある。『MIX LEMONed JELLY』を始めとするhideイベントにも数多く出演し、披露されるカヴァー曲の完成度の高さはもちろんのこと、何よりもオフィシャルさえ認める「hideの音楽を知り尽くした上でのアレンジ」は、リスペクトを越えたものとして評価されている。

ポップセンスを持ち合わせたV-Rock

シド

シド 『恋におちて』

 ゼロ年代のネオヴィジュアル系と呼ばれる中で、実力と確固たる人気を誇るのが、シドである。8ビートの王道Jロック、昭和歌謡、ジャズやボサノバテイストまであらゆるジャンルを取り入れた多彩な楽曲で、インディーズながら良い意味でのメジャー感を出してきた。コアなジャンルを多く取り入れるバンドは多くとも、ポップス枠での幅広さを提示するバンドは中々居ないだろう。幅広いながらも耳馴染みのよい歌で多くのファンを魅了し続けている。また、アレンジにおいて他バンドが避けるような鍵盤やホーンなどを積極的に取り入れているのも珍しい。そしてそのアレンジに埋もれることなく、ギターを中心としたロックバンドとしての自分たちのサウンドを確立している。演奏はもちろん、何よりも幅広く適応するそのセンスには驚かされるばかりだ。

exist†trace

exist†trace スパイラル大作戦

 全員が女性メンバーで構成される、exist†trace。当初はハードな楽曲と王道ヴィジュアルロック色の強いバンドであったが、ギター・mikoがボーカルとしてフィーチャーされるようになってからポップな楽曲も増えてきた。ジョウ(男役)とmiko(女役)といったような掛け合いツインボーカル、言わば宝塚を思い起こさせる艶やかさは、まさにこのバンドにしか表現できない魅力だろう。最新シングル『スパイラル大作戦』で見せたレトロ且つ不思議な世界観を含め、今後の展開が楽しみで仕方がないバンドである。

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