米防衛テックAnduril創業者はコスプレ好きオタク? パーマー・ラッキーのふたつの顔

『テクノロジカル・リパブリック』との強烈な共鳴
ラッキーは防衛テック産業に携わりながら、現在のアメリカや東アジアをめぐる安全保障について積極的な発言も行なっている。彼の立場をざっくりまとめてしまえば、「中国の拡大主義は危険なので、アメリカは日本や台湾をはじめとする他の東アジアの国と協力して防衛体制を構築しなければならない」というものになる。
そして、その立場は「防衛産業は中国製部品から脱却しなければいけない」という発想につながる。実際にアンドゥリルでは日本製部品のみによる兵器の開発なども手掛けている。その一方で、アンドゥリルの日本法人立ち上げに際したインタビューでは、「日本の製造業は戦時の生産体制にも転用できる」といった、これだけを見るとギョッとするような発言もしている。
そんな彼をどう見るかは、各々の政治的立場によって変わってくるだろう。すくなくとも本人がPRする意見と行動だけを見れば、そこには一定の筋が通っているのかもしれない。あるいは、実際は善意の皮をかぶった“戦争屋”なのかもしれない。(詳細が気になる方は、ジャーナリストの船橋洋一氏や彼が編集顧問を務める実業之日本フォーラムによる取材記事、あるいはテレビ東京の豊島晋作氏による取材動画などを覗いてみてほしい)
本稿が注目したいのは、彼の意見とアレックス・カープ(パランティア・テクノロジーズCEO)らの著書『テクノロジカル・リパブリック』(日経BP)の共鳴だ。
昨年アメリカで刊行されベストセラーとなった『テクノロジカル・リパブリック』は、米国防総省とも密接な関係にあるテック企業パランティアの思想表明とも言える書籍である。日本でも今年3月に翻訳が刊行、4月にはXのパランティア公式アカウントから書籍の要約が投稿され、そこに含まれる「戦後のドイツと日本の去勢は撤回されなければならない」といった内容が危険思想なのではないかと波紋を呼んだ。
Because we get asked a lot.
The Technological Republic, in brief.
1. Silicon Valley owes a moral debt to the country that made its rise possible. The engineering elite of Silicon Valley has an affirmative obligation to participate in the defense of the nation.
2. We must rebel…
— Palantir (@PalantirTech) April 18, 2026
『テクノロジカル・リパブリック』を紐解いてみると、その主張はざっくりと「シリコンバレー批判」と「“多様性尊重のエリート”批判」の二本立てであることがわかる。前者の姿勢は、たとえば「今日のデジタル社会は、オンライン広告とショッピング、ソーシャルメディア、動画共有サイトの類に支配されている。(中略)あってもなくてもいいものや刹那的なものに資本や優秀な人材を集中投下する姿勢に疑問を抱きもしなかったのだ」といった文章に見て取れる。後者は、「あらゆる文化、さらにあらゆる文化的価値観は尊重すべきであるという立場から、いまや文化のいかなる面も批判することができなくなっている」といったところを見れば明らかだ。
そして、そんな二本立ての批判はひとつの結論につながる。カープらはこう述べる。「シリコンバレーには、アメリカと同盟国が敵対国に対してどうにか保ってきた危うい地政学的優位性の維持に寄与する義務もあるのではないか」。つまり、テック企業は防衛産業に力を傾けることで、(中国やロシアなどの)敵国からアメリカを守るべし、ということだ。
ラッキーのインタビューを読んでいると、これらと共鳴する部分が多々出てくる。いわく、「米国では、最優秀のエンジニアたちが軍と働かなくなっていました。(中略)グーグルやアップルなどのビッグテックから人材を引き抜き、軍事・国家安全保障の課題に取り組ませたかったのです」(=シリコンバレー批判)。そして、「米国では、『アイデンティティー政治』が大きな力を持つようになったのです。/米国の左派は、社会的には極端に左に傾斜しましたが、経済的には必ずしも労働者寄りではなくなった」(=“多様性尊重のエリート”批判)。もはや、『テクノロジカル・リパブリック』から引用しましたと言ってもすんなり通る発言の連続である。おそらく、カープらとの交流も盛んでお互いに影響を与えあっているのだろう。アンドゥリルとパランティアはいずれも社名が『指輪物語』に由来する点でも共通している。
ラッキーが2017年にフェイスブックと決別した(本人は「解雇された」と言っている)のも、前年に彼がトランプ陣営への政治献金をしたからだと言われている。そして、彼は決別後すぐにアンドゥリルを立ち上げ、順調に会社を成長させていまに至っているのである。
こうして見てきたとおり、ラッキーは“オタク”と“軍事屋”というふたつの顔を持っている。しかも、そのふたつは決して乖離しているわけではない。たとえば前出のアメリカ大使館動画を見ていても、無邪気な親日家オタクトークと現在の中国を敵視する“愛国者”の語りはシームレスにつながっている。これが意味することはなんなのか。そして、ラッキーはこれからどこに向かっていくのか。今後も彼の動向から目が離せない。
























