「『リーグ・オブ・レジェンド』Worlds 2026アンセムをTrue Damageが担当 約7年ぶりの活動再開、ヤスオがその背景を語る

eスポーツにおける世界最大規模の大会の一つとして知られる、「League of Legends World Championship」(通称、Worlds)。『リーグ・オブ・レジェンド 』の世界大会である同大会は、ゲームの枠を超えた破格のスケールで展開され、ゲーム業界全体を牽引する存在として、ファンの予想をも超えた進化を続けている。
その一つの象徴が、「Worlds Anthem」(以下、Anthem)と呼ばれる大会テーマ曲だ。2014年にImagine Dragonsが手掛けた「Warriors」以来、ZeddやLil Nas X、NewJeans、Linkin Parkといった各分野のトップアーティストが集い、さらなる熱気を生み出してきた。
一方で、『リーグ・オブ・レジェンド』といえば、今ではバーチャルダンスグループの代表例として知られるK/DAやHEARTSTEELといった、ゲームのキャラクター(チャンピオン)たちが集うゲーム内音楽グループを現実の音楽シーンに送り出してきたことでも知られている。彼らは実際のアーティストに引けを取らないほどの人気を集め、特に2019年にリリースされた「GIANTS」でデビューしたTrue Damage(メンバーはアカリ、エコー、セナ、キヤナ、ヤスオ)は、同MVのYouTubeの再生回数が2.3億回(本稿執筆時点)を超えるほどの支持を獲得した。
これまで、Anthemと言えば、前述のような実在のアーティストが起用されるという伝統があったが、ニューヨークが舞台となる今年、ついにゲーム内音楽ユニットがその看板を背負うことになった。そのグループこそが、新曲「Know My Name」で約7年ぶりの復活を果たすTrue Damageである。だが、ゲーム内の存在である彼らが、どのようにして現実のWorldsへエネルギーを持ち込むのだろうか? どのような想いの元にAnthemを作り上げたのだろうか?
そこで今回は、なんとTrue DamageのDJ/プロデューサーを務めるヤスオ本人へのインタビューが実現した。「GIANTS」以来となる再始動の理由や、「Know My Name」制作に際して影響を受けた音楽、メンバーとの関わりや来たるWorldsへの期待までたっぷりと伺うことができたので、本稿を通して、彼らが生み出す楽曲の世界に、より深く飛び込んでほしい。(ノイ村)
「アカリがTrue Damageを復活させたのは、周囲に見返してやるためじゃない」
ーーこれまで多くのオファーがあったかと思いますが、なぜ今、再結成を決断したのでしょうか?
ヤスオ:取り組むプロジェクトを選ぶ時は、いつも俺なりのこだわりを持ってきた。流行を追うことには興味がない。俺が大事にしているのは、他にはない音楽を作ることだ。
アカリはそれを常に理解してくれていた。数年前に「The Baddest」でともに仕事をして以来、彼女はいつも俺にアイデアを持ち込んできた。俺の兄(ヨネ)まで自分のプロジェクトに巻き込もうと誘ってきたほどだ。だが、「Know My Name」の構想を聞くまで、重い腰を上げる気にはなれなかった 。
ーー「GIANTS」の衝撃は今でも鮮烈に覚えています。あれから長い時間が経ちましたが、True Damageの新たなフェーズについて、どのようなビジョンを抱いていますか?
ヤスオ:True Damageの本質は、誰も予想できない形で各々のスタイルを融合させることにある。「GIANTS」では、世界中から集結した素晴らしい才能たちが、ノイズを超えて人々の注目を集める姿を表現した。
今回は、より個人的なものにしたいと思っている。Worldsで繰り広げられる熾烈な戦いを踏まえ、相手の懐へと飛び込むような、そんなサウンドを作りたかった。「お前を倒すだけではない、お前より長く生き残る」ということを示したい。その瞬間が終わった後も、人々の記憶に永く残るものを作る。それが狙いだ。
ーー久しぶりにメンバー全員が揃った時の印象を教えてください。特にアカリさんは、以前の印象とはまた違っていたのではないでしょうか?
ヤスオ:ニューヨークに到着した後、エコーの贔屓のピザ屋で会った。皆が違う味を食べたいと言い、しばらく議論になった。結局はキヤナがすべてのピザを頼むことに決めたが、昔と変わらない空気感だったよ。
アカリについて言えば、彼女は常に限界を突き破ってきた。True Damageが存在するのは、彼女が世界中から新進気鋭の才能を集め、俺の唯一無二のプロダクションスタイルと組み合わせ、誰もが忘れられなくなるようなものを作りたいと考えたからだ。業界にいる何十人もの連中が、これがうまくいかない理由を何十と挙げた。だが、アカリの辞書に「NO」の文字はない。あの頃から、既成概念を壊すことが彼女の創作をどれだけ駆り立てるのか、はっきりと見て取ることができた。
この数年で、彼女はその意志の強さを、また違った形の情熱に変えたんだろう。アカリがTrue Damageを復活させたのは、周囲に見返してやるためじゃない。彼女はトラックに対する明確なビジョンを持っていて、セナ、キヤナ、エコー、そして俺がそれを現実にできると確信していたからだ。妥協なんて選択肢は最初からなかった。
何かに情熱を持つことは簡単だ。その情熱をより大きなものへと昇華させる。それこそが、彼女が他と一線を画す理由だ。
ーー「Know My Name」に込めた想いについて教えてください。
ヤスオ:初期段階から、いつものスタイルから飛び出したいと思っていた。今回のWorldsはニューヨークで開催される。だから、マーチングバンドのような打楽器隊を取り入れて、曲を前に推し進めるパーカッシブなエネルギーを生み出すことにした。ドラム音が加わることで、Worldsのような大会の熱気に相応しい、徐々に高まっていく迫力が生まれる。曲の他の要素と組み込むためには多少の手間がかかったが、思い通りに仕上がった。
ーーサウンドを仕上げる上で、どのようなクリエイティブ面での挑戦があったのでしょうか?
ヤスオ:いくつかの実験を重ね、ブルックリン・ドリル(ヒップホップのサブジャンル。シカゴのドリルやイギリスのUKドリルに強い影響を受け、ニューヨークのブルックリンで発展したハードなサウンド)のシーンに注目した。ドラムコーのサウンドを作り上げる上で、TR-808のパーカッションの音色が気に入った。しかし、音圧の強いパーカッシブなスタイルは、他の要素をかき消してしまうリスクがあった。それにTrue Damageでは、ラップと歌のバランスが自然に感じられるように整えなければならない。
一度にこれだけ多くのレイヤーを扱っていると、時には行き詰まることもある。だが、俺は焦らず耐えることを学んできた。他のメンバーとアイデアを出し合うことも助けになった。あとは、スタジオを離れて瞑想したり、本を読んだりすれば、創作において乗り越えられない壁はない。まあ、煎茶にも助けられたな。こうしたプロジェクトでは、壁にぶつかるのは当たり前だ。だが、振り回され続ける必要はない。
ーー楽曲制作において、大きなインスピレーション源となったものはありますか?
ヤスオ:「Know My Name」は、世界各地のヒップホップシーンから数え切れないほど多くの影響を受けている。アカリは、楽曲に込めようとしているエネルギーを形にするため、何度もさまざまなプレイリストを送ってくれた。もちろん、エコー、セナ、キヤナからもたくさんの楽曲が送られた。皆でともに聴いた曲が何曲あったか、もう思い出せないほどだ。最終的にブルックリン・ドリルに辿り着いてからは、メンバーそれぞれが持つルーツの影響を織り交ぜ、サウンドを仕上げていった。
ーーTrue Damageのような際立った個性を持つメンバー同士の制作は、一体どのようにして行われたのでしょうか?
ヤスオ:これだけの経験を重ねていれば、True Damageのメンバーは自分の得意分野というものをよく分かっている。セナは高音を見事に歌いこなすし、エコーには抜群のリズム感がある。キヤナのパフォーマンスには力強いエネルギーがあって、アカリは自分の見せ場をいつも完璧に決めてみせる。大事なのは、一人ひとりの強みをどう組み合わせ、一つの楽曲に仕上げるかということだ。
いつもメンバーには「過程を信じて、俺に任せろ」と伝えている。自分に何ができるかなんて、わざわざ説明してもらう必要はない。それは俺の方が良く分かっている。一人ひとりの魅力を存分に引き出すようなビートを作るのが俺の仕事で、そのために必要な時間と自由を俺に与えるのが、あいつらの仕事だ。
アカリからは、数え切れないほど深夜にメッセージが届いた。だが、最終的には「Know My Name」で、俺たちが目指していたものはすべて実現できた。
ーー「GIANTS」は素晴らしい楽曲ですし、大ヒットして、今でも多くのファンに愛される楽曲ですよね。そのハードルを超えるのは大変だったのではないでしょうか?
ヤスオ:これまでの楽曲を、乗り越えるべき壁だとは考えていない。どの曲にもそれぞれ異なる感情があり、その瞬間を捉えようとしている。これは歌詞だけの話ではない。俺がプロジェクトを厳選する理由の一つは、同じことを繰り返すことにまったく興味がないからだ。アーティストとして新しい領域を切り拓けないなら、自分の時間を無駄にしているだけだし、聴いてくれるみんなの時間も無駄にしてしまう。
「GIANTS」が世界に向けて俺たちの存在を鮮烈に刻み込む名刺代わりの一曲だったとするなら、 「Know My Name」は、「True Damageは決して風化しない」 と世界に宣言している。俺たちは記憶に刻み込むサウンドを作り出しているのだ。
「このAnthemには、ある意味で挑戦状のような意味合いもある」
ーー言うまでもなく、Worldsは世界でもっとも重要なイベントの一つです。そのテーマソングでもある「Know My Name」にはどのような役割が求められていると思いますか?
ヤスオ:こうした世界的な大会では、何よりも競技者たちの熱に突き動かされる。すべてを勝ち取るか、あるいは、何も手にすることなく帰るのみか。この瞬間を彩るAnthemには、その炎を捉え、何があろうと頂点に辿り着きたいという渇望が余すところなく映し出されていなければならない。
今回のミュージックビデオの中心にFakerがいるのには理由がある。詳しくなかったとしても、彼がトップクラスのプレイヤーであることを知る人は多いだろう。他のすべての選手が、彼を基準に評価されるほどの存在だ。彼はその名を世界中に知らしめた。だからこそ、このAnthemには、ある意味で挑戦状のような意味合いもある。「自分の名を世界に知らしめろ。この最大の舞台で、なぜ自分こそが記憶されるべき存在なのか、証明して見せろ」と。
ーー以前のWorld Championship Finalsのオープニング セレモニーで披露された「GIANTS」のパフォーマンスは最高でしたね。今年のWorldsでも、同様のパフォーマンスに期待しても良さそうでしょうか?
ヤスオ:今のところ、オープニング セレモニーでのパフォーマンスについて多くを話すことはできない。だが、俺たちが用意しているものに、ファンの皆さんは期待を裏切られることはないと約束しよう。
ーー今も世界中のファンがTrue Damageの新章をこの目で目撃する瞬間を心待ちにしていると思います。そんな皆さんにメッセージをいただけませんか?
ヤスオ:人生は、周りの人が望むことばかりに時間を費やすには短すぎる。自分だけの足跡を世界に刻め。そして、決して振り返るな。それと、今年のWorld Championshipの舞台に立つ選手たちへ、健闘を祈っている。
■リリース情報
True Damage「Know My Name」
Featuring: i-dle SOYEON、Coco Jones、Vic Mensa、Sofía Reyes
リリース:10月9日(金)
楽曲のプリセーブはこちらから
MVは10月9日(金)午前10時に『リーグ・オブ・レジェンド』のYouTubeチャンネルにてプレミア公開予定。




















