なぜVisaは音楽に注目するのか ユニバーサル ミュージックと描く新たな音楽体験

ビザ・ワールドワイド・ジャパンは9月17日、音楽を通じたファンとアーティストのつながりを深め、新たな体験創出を目指したユニバーサル ミュージックとの協業に向けた基本合意書の締結を発表した。ビザ(Visa)はグローバルな決済ネットワークを展開し、クレジットカードの国際ブランドとして知られる一方、近年ではカード発行会社などと連携して、スポーツや音楽を中心に、ファンカルチャーや“推し活”を支えるさまざまな取り組みを展開している。
なぜVisaは音楽に注目するのか。そして今回、ユニバーサル ミュージックとの協業を通じて、ファンにどのような新しい音楽体験を提供しようとしているのか。ビザ・ワールドワイド・ジャパン マーケティング本部長の里村明洋氏に聞いた。
——Visaは近年、ファンカルチャーへの取り組みを強化していますが、なぜ音楽に注目しているのでしょう?
里村氏「まず、音楽市場が成長し続けており、市場規模も大きいことです。加えて、音楽にはアーティストとファンをつなぐさまざまな接点があります。ライブやグッズ購入だけでなく、会場までの移動や宿泊など多くの場面で決済が関わります。Visaはそうした一連の体験を支えることができます。つまり、市場の成長性に加え、アーティストとファンの方々をつなぐさまざまな体験をVisaの安心・安全な決済ネットワークで支えられること。この2つが音楽に注目している大きな理由です」
——つまり音楽を中心にファンとかかわる接点の広さに注目していると。
里村氏「その通りです。音楽は聴くだけではなく、SNSやライブ、イベントなどを通じてファン同士やアーティストとのつながりが広がり、新たな楽しみ方が生まれています。そうした新しい音楽体験が広がる中で、私たちが提供する決済ネットワークも、その体験を支える重要な役割を果たせると考えています」
——すでに(ユニバーサル ミュージックのレーベルに所属する)Adoのクレジットカードをセゾンカードと組んで出していますが、こうしたコラボカードはどのような価値があると考えていますか。
里村氏「オリジナルデザインのカード券面やカード会員限定グッズなど、さまざまな取り組みがあります。特にカードは、ファンが好きなアーティストを日常の中で身近に感じられる存在になり得ます。カードを使うたびに、自分の好きなアーティストが近くにいることを感じ、またアーティストを応援しているという気持ちにつながることも大きな魅力です。
また、キャッシュレス決済が広がる中でスマホやオンラインでの決済が増え、利用者がカードそのものを目にする機会は少なくなっています。だからこそ、Visaのような決済ネットワークを展開する国際ブランドは、音楽やスポーツなど、人々が情熱を注ぐ分野でファン体験を支えることで、Visaを“自分の好きなものを支えてくれるブランド”として認識し、身近に感じていただくことが重要だと考えています」

——決済というと日常インフラの一部であり、どちらかといえば裏方の存在になりがちですが、Visaはファンの音楽体験との接点を通じて、“Visa”というブランド認知向上を図りたいというわけですね。では、“Visa”だからこそ提供できる価値や体験とはどのようなものなのでしょうか。
里村氏「ファンにとっては、日常の行動が自分が好きなものや応援しているアーティストにつながっていると実感できることは大きいと思います。ファン活動には決済が関わる場面も多く、好きなもののためにお金を使うこと自体が喜びや満足感につながったり、応援している実感につながります。
もう1つ大切なのが、特別な体験です。限定イベントや特典など、ファンだからこそ参加したくなるものです。Visaとしては単に『カードを使ってください』と訴求するのではなく、限定イベントやグッズ購入の特別な体験をVisaが支えることで、『Visaだから参加できた』『Visaだから楽しめた』と感じてもらえる機会を増やすことを目指しています」
特別な体験という意味では、9月11日から23日までUNIVERSAL MUSIC STORE HARAJUKUで開催されていた「ザ・ウィークエンド(The Weeknd)」の来日記念ポップアップストアでは、Visaの特別協賛により通常営業時間前にVisaカード会員向けの専用入場時間が設けられたほか、決済時の優先レーンや特典が提供されていた。こうした特別体験を一度限りで終わらせるのではなく、継続的に提供していくことで音楽ファンとのつながりを深めていきたい考えだ。
音楽を通じて拡大する世界と決済ネットワーク
——今回、ユニバーサル ミュージックとの基本合意書の締結に至った理由を教えてください。複数の選択肢がある中で、どのような点に魅力を感じたのでしょうか。
里村氏「日本の『J-MUSIC』を含め、世界で活躍する多くのアーティストや音楽コンテンツを持っている音楽レーベルということが大きな理由です。玉木氏もお話しされていましたが、日本の音楽は今、国内だけでなくアジアや世界へと広がろうとしています。その方向性は、グローバルな決済ネットワークを持つVisaとすごく親和性が高いと感じました。音楽と決済、それぞれの強みを生かしながら新しい体験を生み出していけると考えたことが、今回の協業につながっています」
なお、同日行われたメディアブリーフィングにおいて、ユニバーサル ミュージック上席執行役員の玉木一郎氏は日本の音楽シーンの変化と海外への広がりについて次のように説明していた。これまで「日本の音楽は日本で」という形で比較的閉じていたものが、世界で活躍する日本出身アーティストも増え、ジャンルを越えて広がりを見せている。同氏はこの音楽シーンを「J-POP」ではなく「J-MUSIC」と表現し、「J-MUSIC」のさらなる発展を後押しするパートナーとしてVisaとの連携に期待する理由を説明した。

「日本の音楽業界は今、間違いなく時代の変節点を迎えています。これまで『J-POP』というと、日本国内を中心とした音楽というイメージがありましたが、藤井 風さんやAdoさん、YOASOBIさん、Creepy Nutsさんといった世界で活躍するアーティストが増えています。
シンガーソングライターや、ロックバンド、ダンス、ボカロ、VTuberなど多種多様な音楽を含む日本の音楽シーンは、もはや『J-POP』だけでは表現しきれません。日本の音楽、つまり『J-MUSIC』が世界の中でも光り輝く存在になる、その入り口にまさに立っていると思っています」(玉木氏)
玉木氏は、アーティストがフェスやコンサート、あるいは先ほどのポップアップストアのような体験型コンテンツのいずれの形で世界に出ていくのであれ、Visaのようなグローバルブランドだからこそ、日本を出ても同じ決済体験を提供できる点が、「J-MUSIC」の取り組みを広げるうえでメリットになると説明した。
では今後、ユニバーサル ミュージックと組んだことでVisaはどのような体験や楽しさをファンに届けてくれるのだろうか。
里村氏「ポップアップストアに加え、ユニバーサル ミュージックが運営する『Re:Re:Re:TUNE(リリリチューン)』という音楽コンテンツ専門のYouTubeチャンネルでは(※)、新たな楽曲やコラボレーションが生まれています。そのコンテンツを、より多くの人に届けるための体験も一緒に考えていきたいと思っています。ライブやフェスかもしれませんし、アーティストが世代やジャンルを越えて他の人の曲を歌うようなコンテンツが実現できれば、新たな楽しみ方が生まれるのではないでしょうか。さらに、ポップアップストアでしか手に入らないグッズや限定体験などが提供できると、私たちが目指している特別感や新しい体験が実現できるのではないかと考えています。幅広いジャンルと世代のファンを持つユニバーサル ミュージックと組むことで、さまざまな可能性が広がると思っています。SNSを通じてコミュニティが拡大する中で、Visaならではの体験もお届けしていきたいです。今後ともぜひ期待していただければと思います」
Visaによれば、2025年の世界の音楽市場は317億ドル規模に達し、日本は世界第2位の売上規模を誇る。音楽が文化として根付いている日本において、Visaとユニバーサル ミュージックの協業がどのような体験を生み出していくのか。ファンとアーティストをつなぐ取り組みはもちろん、日本発のアーティストやコンテンツを世界へ広げる後押しとなるのか。ファンにとっての新たな体験と、アーティストのさらなる成長の両面で今後の取り組みが注目される。
※ Re:Re:Re:TUNE:ユニバーサル ミュージックが2024年11月にスタートしたチャンネルで、昭和、平成、令和と時代を超えた数々の名曲と、アーティストやクリエイターがコラボレーションし、オリジナルコンテンツを配信






























