東出昌大「死ねない理由を集めた」 ウルフアロン、フワちゃんと苦悩や本音語った『野営デトックス』1・2話

いろいろあった東出昌大が山奥で暮らすようになって、もう5年もたつのだという。映画『桐島、部活やめるってよ』(2012年)でノーブルな男子高校生を演じ、日本アカデミー賞新人賞を獲得して華々しくデビューした俳優はその後、大きなスキャンダルによってキャリアの転換を強いられた。そうして至った山奥への移住が報じられると、その生活は羨望と、少しの奇異の目を持って世間に受け止められている。
小屋でタラの芽を刻み、煙草をふかす東出。この山にゲストを招き入れ、1泊2日の野営を行うのだという。5月5日、12日にABCテレビで放送、ABEMAで配信されたドキュメンタリー『東出昌大の野営デトックス』#1、2のゲストは、ウルフアロンとフワちゃん。ともにプロレスデビューを飾ったばかりの“同期”の新人レスラーだった。
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「そういえば重かった」活動休止から女子プロ入団のフワちゃんが背負っていた“荷物”
フワちゃんはもちろん、ウルフもアスリート出身者の中では屈指のバラエティスキルを持ったタレントである。2人の登場で、山小屋はひととき、明るく楽しいロケ番組の舞台となった。東出にうながされてワラビ採集に出れば写真を撮りまくり、タラの芽のおにぎりを作り始めると、フワちゃんが「『ヒルナンデス!』出てたし」などと言いながら、にわかに食レポを始めたりする。そんな2人を東出は「やっぱすげぇな、テレビに出てる人たちって」とあっけに取られながら眺めていた。

そんな緩い空気が一変したのが、背丈ほどもありそうなリュックサックを背負って野営地に向けて出発した瞬間である。東出が選んだルートは既存の山道ではなく、ウルフをして「切り立った壁」と言わしめるほどの荒れ果てた急勾配。体幹と体力のオバケであるはずのレスラー2人はすぐに息切れを起こし、その場で立ち上がることさえできない。そんな2人を尻目に、東出は腕を組んだ直立姿勢でスイスイと登っていく。狩猟歴8年、山に移住して5年という東出の説得力のある背中が、2人から遠ざかっていく。
尾根にたどり着き、ようやく口を開く余裕の出てきたフワちゃんに、東出がプロレス転向のきっかけを尋ねる。タレントとして絶頂期にあったフワちゃんはSNSでの不用意な暴言により、1年半のブランクを作っている。
「女子プロは、ほんのり夢としてあったので」
まるで予期していなかった活動休止期間が、その“ほんのりとした夢”の輪郭を育てていた。フワちゃんは週刊誌の目を逃れるために海外でプロレス修行を積み、帰国後、自ら女子プロレス団体「スターダム」に連絡を取って入団を打診している。

一行は小休止を経て、今度は野営地へ向けて急斜面を降りていく。再びリュックを背負ったフワちゃんの「そういえば重かったわ」という一言が印象的だ。人は一度荷物を下ろすと、その背負っていた重さを容易く忘れてしまう。それは重い荷物を背負っていた人にとって、幸せでもあり不幸でもあるはずだ。
下りの斜面では、今度はウルフ1人が取り残されることになる。東出とフワちゃんがスルスルと降りていくはるか上で、ウルフは必要以上に用心深くなっているように見える。フワちゃんと東出の人生には、転がり落ちた経験がある。ウルフには、少なくとも表向きには、その経験がない。この用心深さがウルフに東京五輪での金メダルをもたらしたのだといえばこじつけすぎだろうが、山の風景はモニター越しにも、物事を深読みしたくなる欲求を刺激する。
ウルフアロン、世界王者になり“人生における軸”を失ったワケ
5時間かけて到着した野営地で、東出はタープを張り、ウルフは薪を集め、フワちゃんは川で水を汲む。都会ではまったく必要なく、山で一夜を明かすためには絶対に必要な作業だ。石を並べて焚火の火処を作るフワちゃんが東出に「正しい火処の形」を指導しろと迫るが、東出は苦笑いを浮かべて「それでいい、なんでもいい」と繰り返す。この手の正しさもまた、山では必要ないということだろう。

日が暮れて、火が起こり、晩酌が始まる。朝方、2人のテレビタレントがハシャぎながら採取したワラビはあく抜きされ、お浸しになった。地元のおばあちゃんのお手製味噌による味噌汁、東出が先日釣りあげたというヤマメの炭焼き、振る舞われる野営メシに食らいつくゲストは、その美味さに口数を失っていく。そして日本酒が注がれると、本音を漏らし始めることになる。
「どうしても“禊”って思われちゃうんじゃないか」と感じていたフワちゃんのプロレス入りの背中を押したのは、「夢だ」と言ってプロレス界に飛び込んだウルフの姿だったという。
「世界一強くなったって、どういう感じなの?」
まるで少年のように率直な疑問を、東出がウルフにぶつける。
対して、2017年世界柔道選手権大会100kg級、東京2020オリンピックの柔道男子100kg級でそれぞれ金メダルを獲ったウルフは、世界一強くなりたくて柔道をやっていたわけではないと答える。

「オリンピックが目標だったから、ただそこに向けてやっていただけ」
その目標を達成したウルフは、“人生における軸”を失ったと告白する。ウルフがプロレスを始めたのは、まさしく生きるためだった。
生きるとは。
「“生きたい”って思えない人はきついだろうな」
東出がひとりごとのようにこぼす。大半の仕事を失った時期、東出は「死ねない理由を集めた」と明かす。人のためにがんばろうと思って続けてきたことで、結果として自分の人生が楽しくなった。
決して会話が噛み合うわけではない。グルーブ感が生まれるわけでもない。ただそこに、それぞれが本当に言いたい言葉だけが漂い、その言葉たちに、それぞれが手を伸ばしている。そんな光景を、焚火の炎が映し出している。

寝袋を3つ並べて眠った夜が明けると、フワちゃんが姿を消していた。ウルフのいびきに耐え兼ね、寝床を変えていたのだ。
ロケを終え、東出は次回以降の番組の展望を語った。
「雨が降るかもしれんし、“獣を獲る”って言っても獲れんかもしれんし、何があるかわからないから、正直わかんない。でも、それでいいのかなって思う。そのときどきに無理しないことが、誰かの本音を聞ける機会になるのかなって」
次回のゲストは、プロボクサー那須川天心と、競泳選手の瀬戸大也。またまた、知られざる本音を秘めていそうな2人である。

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