箕輪厚介が語彙喪失 渡部陽一とともに対峙した「命」と「日常」の尊さ 『東出昌大の野営デトックス』5話

『東出昌大の野営デトックス』5話

 山で暮らす俳優・東出昌大が有名人を招いて1泊2日の野営を体験させる『東出昌大の野営デトックス』(ABCテレビで放送、ABEMAにて配信)。ABEMAオリジナルエピソードとなる#5では、編集者・箕輪厚介と戦場カメラマン・渡部陽一がゲストとして迎えられた。

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“1年の半分は紛争地”の渡部陽一&“15分に1回エゴサ”の箕輪厚介が山へ

 「都会で暮らす有名人のデトックス」という番組の触れ込みでいえば、箕輪はまさに都会中の都会、夜の西麻布で高級シャンパンの瓶に囲まれる姿をSNSで頻繁に目にする人物。

 一方の渡部は1年の半分を海外の紛争地で過ごし、その様子を伝えることを生業としている。彼が日々接している戦地の状況は我々の想像を絶する。

 2人がデトックスすべき日常はあまりにかけ離れている。それだけに今回の野営には期待も膨らんだが、今回はあいにくの雨。前回の那須川天心と瀬戸大也を迎えた#4は、雨上がりを待って野営に臨んだが、今回は早々に野営の中止が決まる、それほどの雨である。

東出昌大「命がまず大事」「覚悟して」 自然の脅威に直面した『野営デトックス』4話

ABEMAにて配信中のドキュメンタリー番組『東出昌大の野営デトックス』。この記事では、5月25日深夜放送の4話の模様を振り返る。

「山は入れない。意地悪とかじゃなくて、“私も入りたい”って人がいたら一緒に入りたいなって思うけど、入ったら危ないので、入れないっていうのは自然ですよね」

 東出にとっては、想定内。もとより、番組の企画段階から野営のできない日が増えることは、スタッフに進言していたのだという。

「でも雨降るとね、畑は喜ぶからいいですよね。無駄はない」

 そう言ってタバコをくゆらす東出の山小屋に、先に訪れたのはカメラを提げた渡部だった。

『東出昌大の野営デトックス』#5より

 ベレー帽に口ひげ、独特のゆっくりとした口調。一時期、テレビバラエティに引っ張りだこだったそのままの姿だ。この口調がお茶の間に大いにウケたわけだが、彼が赴く戦地には英語も通じない地域が多くあり、現地の方々とコミュニケーションを図るために「一語ずつ、ゆっくり話す」という習慣がついたのだと以前語っていた。バラエティに出ていたころ「渡部は本当に戦場に行っているのか?」という揶揄も少なくなかったが、この口調こそ、彼が長い時間を海外で過ごしてきた証左だ。

「精いっぱい向き合いますので、よろしくお願いいたします」

 東出と顔を合わせた渡部の言葉だ。きっとこの人は、あらゆることに精いっぱい向き合ってきたのだろう。

 箕輪が姿を現す。箕輪は東出のYouTube動画を見て、一度完全プライベートで遊びに来たことがあるのだという。15分に1回エゴサーチをするという箕輪にとって、まさに電波のない山奥はデトックスになるということだろう。この記事もおそらく、そのエゴサーチの網にかかるはずだ。

箕輪厚介、山での体験に語彙喪失 「たぶん一生忘れない」と語ったこと

「昨日、鹿獲ってきたんです」

 こともなげに、東出が切り出す。雨で中止となった野営の代わりに東出が用意したのは、近所のキャンプ場での鹿の解体というなかなかハードコアなミッション。だが、箕輪は「昼間から酒が飲める」というその一点において大喜びしている。渡部も「素敵な時間ですね、今日は」と同調する。2人はまだこの時点で、その鹿を見ていない。

「じゃあ鹿運びますか? 重い鹿を軽トラに運ぶんですけど」

 庭先の大きな冷蔵庫から鹿の脚が覗いている。ゲストの2人は「おお」と思わず声を上げる。当然だが、鹿の脚は動かない。

 引っ張り出されてシートの上に置かれた鹿は、内臓を抜かれ、首を傾げて死んでいる。東出によると、4〜5歳くらいの雄鹿だという。3人がかりで軽トラの荷台に運びながら東出は「この子の子どもも、山を走ってるかもしれないけど」と言う。その父親を、彼らはこれから食うのである。

 「香りもしますねぇ」と渡部がつぶやく。おそらくそれは薄い腐敗臭の類であって、私たちが「香り」と呼ぶものとは違うはずだ。

 「すごいねえ」と、あらゆる言葉を操ることでのし上がってきた編集者・箕輪も思わず語彙を失う。

『東出昌大の野営デトックス』#5より

 2人の目の色が変わったのがわかる。

「命ってこういうものですよ。食べ物の有難みって伝えるのが、けっこうやっぱムズくて」

「感謝しても成仏しないかもしれないけど、思うよりほかないじゃんって」

 東出の言葉である。言葉では伝わらないことがある。だから実際に鹿をさばかせる。理屈は通っている。

 東出がタブレットで披露した狩猟時の映像を見て、渡部は「これが日常だと思いました」と語った。「繰り返されている日常の1コマに触れさせていただいた」。銃弾が生き物の命を終わらせることを知っている人物の言葉である。

 黙々と鹿を洗う。梁に吊るして、部位を切り離していく。

 「東京で刺激的なことやってもすぐ忘れちゃうけど、たぶん一生忘れないですね」と箕輪が語る。もう「昼から酒が飲める」ことにハシャいでいた男はどこにもいない。「俺なんて(食ったら)クソまずいですよ。港区の味がすると思う」。軽口を叩くことで正気を保とうとしているようにさえ見える。

「日本は、夢の国」 「心、壊れました」 渡部陽一が見た、戦地での“日常”

 解体がひと段落すると、3人は近隣の温泉施設へ。湯煙の中で、東出は渡部に「日本の堅苦しさ」について意見を求める。その堅苦しさを嫌って山に来た男の、素朴な質問である。

 渡部は即答する。都会の堅苦しさか、山での暮らしか、選べる“自由”が存在することを、渡部は「奇跡」と評する。

 キャンプ場に戻ると、約束通り昼から飲酒。朝方に冷蔵庫から引きずり出され、3人がかりで解体した雄鹿が背ロースの切り身になって炭火の焼き網に乗る。

『東出昌大の野営デトックス』#5より

 「素敵すぎる……」と、渡部がシャッターを切っている。心が動いているということだろう。ひとしきり肉と酒を囲んで、この番組恒例の“本音タイム”が訪れる。口火を切ったのは箕輪だった。

「どこかで発信を目的としている自分がいるんじゃないか。初期の戦場カメラマンって、今のYouTuberな気がして」

「“ヤバイところに行く”っていうことをやりたいっていう、人間の本能をまとってるやつらじゃないの?」

 酒の勢いもあるだろう、ともすれば失礼にもなりかねない質問だが、それがこの男の持ち味でもある。

「そのエンジンが、やっぱりあります」

 渡部は否定しなかった。それどころか「その一面もある」ではなく「そのエンジンがある」と答えた。エンジンとはつまり、原動力のことである。

 そして、戦場カメラマンとYouTuberの違いを「続けていくこと」と明言した。さらに、「その地域の方々にまた会いに行きたいという思いが強い」と続ける。

 そんな渡部の転換期は、30歳で赴いたイラク戦争だという。23年前、家族の目の前で当たり前のように命が奪われる、命を奪った者たちが笑いながら目の前でコーヒーを飲んでいる。目の前には武器が置かれている。そこで起こったすべてを、渡部は目の当たりにしていた。

『東出昌大の野営デトックス』#5より

 それを聞いて黙り込んでいた東出が静かに問いかける。

「なんで心、壊れなかったんですか?」

 東出の顔をまっすぐに見つめて、渡部が答える。

「壊れました」

 フレームの外で、天を仰ぐ箕輪が見切れている。

 渡部が続ける。

「壊れた中で自分を保ったのは、同じ場所に戻ることでした。戦場という日常で暮らしている方々の思い、声というものを、僕はカメラマンとして、いちばん届けていきたいと思った、取材の柱なんですね」

 東出が鹿を狩った映像を見たときも、渡部は「日常」という言葉を使った。銃弾と日常、戦争と平和。時刻は15時18分、箕輪はすでに半酩酊状態で、そのまま番組は1日目を終えた。

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