まもなく開催『WWDC26』の内容を大胆予測 Siriの大刷新と「新CEO時代」の幕開けが意味するものとは

6月9日より『WWDC26』がスタートする。WWDCとは、「Apple Worldwide Developers Conference(アップル・ワールドワイド・デベロッパーズ・カンファレンス)」の略称で、世界開発者会議を意味する。MacやiPhone、iPadなどでお馴染みのAppleが毎年開催している開発者向けのイベントだ。
MacやiPhoneをはじめとする各種Appleデバイス向けのソフトウェアや、各種周辺機器の開発まで、Appleに関係する人たちが集まって交流したり、Appleの技術者によるセッションなどが5日間にわたって行われる、まさに年に一度の一大祭典ともいえるイベントなのだ。
なかでも毎回注目されるのが、オープニングを飾る基調講演(キーノートスピーチ)だ。キーノートスピーチでは、macOSやiOS、iPadOSなどの次期バージョンがお披露目されると同時に、ハードウェアの新製品が発表されることもあるからだ。
どんな発表が行われるかは蓋を開けてみないとわからないが、海外のApple系情報サイトなどで噂される内容を集めながら、今回の『WWDC26』について予想してみよう。
「夜明けは近い。」と飛ぶアマツバメ——キャッチコピーが暗示するもの
予想の本題に入る前に、『WWDC26』のキャッチコピーについて触れておきたい。英語では「Coming bright up.」とあり、Appleから届いた日本国内向けのメールでは「夜明けは近い。」と邦訳されている。夜明けという言葉には「新しい時代の幕開け」というニュアンスが込められており、今年のWWDCが単なる年次アップデートにとどまらない、何か大きな転換点になることを予感させる。

過去のWWDCでは、ビジュアルが発表内容を巧みに暗示してきた例がある。記憶に新しいところでは、昨年の『WWDC25』がそうだった。この年の招待状のビジュアルには、半透明のガラスを重ねたようなリング状のオブジェクトが描かれていた。当時は「何を意味するのか」と様々な憶測を呼んだが、発表されたのはガラスの屈折や透過感を表現した全く新しいデザイン言語「Liquid Glass」を中心とした大規模なUIリニューアルだった。招待状の「ガラスのリング」が、まさに「Liquid Glass」という発表内容を直接示唆していたわけで、後から振り返れば「あのビジュアルはそういうことか」と納得できる見事な例だ。

こうした前例を踏まえると、ビジュアルに描かれたモチーフを読み解くことは、発表内容を先読みするうえで欠かせない作業だ。
今年のビジュアルに描かれているのは、プログラミング学習アプリ「Swift Playgrounds」でおなじみの「アマツバメ(英語名:Swift)」だ。Swiftといえば、Appleが2014年に発表したプログラミング言語「Swift」と同名であり、Swift Playgroundsのマスコットキャラクターでもある。アマツバメは空を素早く飛び回る鳥で、「速さ」「軽快さ」「自由」を象徴する存在だ。
このモチーフが今年のWWDCに選ばれた意味を考えると、いくつかの解釈が浮かぶ。まず最も直接的な読み方は、プログラミング言語「Swift」そのものへの言及だ。Swiftは近年、Apple Silicon上での高速実行やサーバーサイドSwiftの普及など、開発者向けの進化が著しい。今年のWWDCでSwift 7.0や新しいSwift Concurrency(非同期処理・並行処理をサポートする機能)の大幅な強化が発表される可能性は十分にある。
また、アマツバメが「夜明けに飛び立つ鳥」というイメージと重なることも見逃せない。「夜明けは近い。」というコピーと合わせると、長い夜(停滞や課題)を越えて、新たな時代へ飛び立つAppleの姿を重ねているとも読める。AIの遅れを取り戻し、Siriを刷新し、新CEOのもとで新しい章を開く——そんな決意表明が、このシンプルなビジュアルに凝縮されているのかもしれない。
さらに穿った見方をすれば、アマツバメは「ほぼ一生を空中で過ごし、地上に降りない鳥」としても知られる。これをAppleのエコシステムに重ねると、「クラウドとデバイスの間を自在に飛び回るAI」、すなわちApple Intelligenceのさらなる進化を示唆しているとも解釈できる。いずれにせよ、このキャッチコピーとビジュアルは、今年のWWDCが「開発者とAIの新しい関係」を打ち出す場になることを示しているように思えてならない。
iOS 27の主役は「Siri」の大刷新と「安定性」の向上
具体的な発表内容をめぐっては、まず順当に発表されるはずなのが、各デバイス向けOSの新バージョンだ。特に注目を集めているのが、iPhone向けの「iOS 27」である。今年のiOS 27は、大きく3つのテーマに絞られると予想されている。
1つ目は「Siriの大幅な刷新」だ。昨年のiOS 26では見送られた、より高度なApple IntelligenceベースのSiriがついに登場すると噂されている。GoogleのGeminiチームとの提携により開発された新しいAIモデルを採用し、ClaudeやChatGPTと競合する独立したチャットボット型Siriが追加される見込みだ。

iOS 27からは、これまでの音声アシスタントの枠を超え、Siri専用のアプリが用意され、過去の会話履歴の保存や検索が可能になるという予想もある。また、ユーザーのメールやメッセージ、写真などの個人的なコンテキストを理解し、画面上の内容を認識(On-Screen Awareness)して、アプリを横断した操作が可能になると言われている。インターフェイスも一新され、Siriを起動するとDynamic Islandが拡張して画面の縁が光る「光のUI」が採用される見通しだ。
2つ目は、昨年導入された「Liquid Glass」デザインの改善である。一部のユーザーから指摘されていた透明度に関する課題などが修正され、Appleのデザインチームが最初から意図していた洗練されたUIへと進化するようだ。光の屈折や透過具合をユーザー自身が調整できるスライダーが追加されるという噂もある。
そして3つ目が、「パフォーマンスと安定性の向上」だ。海外メディアの報道によれば、今回の「iOS 27」は「iOS 18」から「iOS 26」へのような大改訂ではなく、古いコードの整理やバグの除去、バッテリー消費の改善に重点が置かれる安定版になるという。新機能の追加だけでなく、基盤部分のブラッシュアップが行われることは、多くのユーザーにとって歓迎すべきポイントだろう。
また、今年9月に登場が噂されている初の折りたたみ型iPhone「iPhone Fold」(またはiPhone Ultra)に向けた布石も敷かれるはずだ。展開時には7.8インチとなるiPad風の画面に合わせ、2つのアプリを同時に表示するマルチタスキング機能やサイドバーの追加など、新しいインターフェイスがiOS 27に組み込まれると予想されている。
Intel Macのサポート終了とタッチスクリーンへの布石
一方でMac用の「macOS 27」は、大きな転換点を迎えることになりそうだ。最もインパクトが大きいのは、Intelプロセッサを搭載したMacのサポートが終了し、M1チップ以降のApple Silicon搭載モデルのみが対象になるという噂だ。
機能面では、iOS 27と同様にSiriの刷新やAI機能の強化が行われるほか、一部では「タッチスクリーン」への対応準備が進むという噂も出ている。将来的に登場すると噂されているタッチスクリーン搭載の『MacBook Pro』に向けて、タッチ操作とポイント&クリックの両方に最適化された動的なUIが導入されるという見立てだ。さらに、MacBook ProにもiPhoneのような「Dynamic Island」が搭載されるという情報も飛び交っている。
ただし、Macへのタッチスクリーン搭載については、筆者は正直なところ懐疑的だ。iOSやiPadOSとmacOSではUIの設計思想がそもそも異なり、macOSは指やスタイラスペンで操作することを前提に作られていない。タッチスクリーンを搭載したとしても、現状のmacOSのUIのままでは使い勝手が悪いのは目に見えている。
この点については、Appleのソフトウェアエンジニアリング担当SVPであるクレイグ・フェデリギ氏も、かつて明確に否定するコメントを残している。2018年のWWDCに合わせて行われた『Wired』誌のインタビューで、フェデリギ氏はこう語っている。
「Macのエルゴノミクスは、手をサーフェスに置いて操作するように設計されています。腕を持ち上げてスクリーンをつつくのは、かなり疲れることです。他社のタッチスクリーンノートPCを見て、どうすれば早く追いつけるかと考えたことは一度もありません」
「Apple's Software Chief Details How iOS Apps Will Run on Macs」著者:Lauren Goode
URL:https://www.wired.com/story/wwdc-2018-federighi-ios-apps-on-macos/
これはiOSアプリをmacOSに移植するプロジェクト(後のMac Catalyst)の発表時に出た発言だが、Appleの哲学として「タッチはiPadやiPhoneのもの、Macはマウスやトラックパッドで操作するもの」という考え方が根底にあることを示している。

もちろん、当時から時代は変わった。Apple SiliconによってiPadとMacの距離は縮まり、ハードウェアの共通化も進んでいる。しかし、UIの設計思想という根本的な問題が解決されない限り、タッチスクリーン搭載Macが「使いやすいMac」になるとは思えない。macOS 27でタッチスクリーン対応の準備が進むとしても、実際にどんな形で実現されるのか、あるいは本当に実現されるのか——噂が先行しているだけで、現時点では慎重に見守るべきだろう。
ちなみに毎回話題になるmacOSの名称だが、カリフォルニア州の地名を冠する伝統に従い、「Condor」「Diablo」「Grizzly」「Pacific」「Redwood」などが候補に挙がっている。一部では「もう名前がつかないのでは」という意見もあるが、果たしてどうなるか楽しみな部分である。




















