Shin Sakiuraが熱弁する「音楽制作用のパソコン」に必要な要素 ハイスペックと静音性を両立させる“理想の一台”を求めて

Shin Sakiura 理想の音楽制作PCを求めて

 パソコンの性能が高ければ高いほど安定したパフォーマンスが発揮できるーーそんなことは誰に言われなくても周知の事実だろうが、音楽を制作したり、音声を収録したりするユーザーや、音に敏感なユーザーにとって気になるのがマシン自体から出る“音”だ。

 起動時や高負荷の状態で回るファンの音は、気にならない人にとってはそこまで重要ではないかもしれないが、筆者はかなり気になるタイプだ。それが上述したように音楽や音声の制作を生業にする人にとっては、マイクに乗ってくる懸念があったりと制作に直接的な影響を及ぼすことも否定できない。

 そんな悩みを解決できるパソコンが、この度BTOコンピューターメーカーの@Sycom(以下、サイコム)から登場した。それが「Silent-Master PRO」シリーズだ。同シリーズはサイコム、Noctua、長尾製作所の3社がコラボレーションしたオリジナル静音空冷ビデオカード「Silent Master Graphics RTX5070Ti 16GB」を標準搭載。さらに高スペックを望むユーザーは同モデルのさらにハイエンドな製品に変更することも可能だ。

 今回はガジェット好きでもある音楽プロデューサーのShin Sakiuraに同モデルを使用してもらい、究極の静音性やスペックの高さをレビューしてもらったほか、Shin Sakiuraにとっての創作論・ハードウェアやパソコンに対する価値観についても聞いた。(編集部)

音楽制作にWindows PCを使うのは「総合的に正解」

Shin Sakiura

ーーまずはShin Sakiuraさんが普段、どのような制作スタイルで楽曲を作ってきたか、どのような機材やソフトを使っているかを教えてほしいです。

Shin:DAWに関しては大学生の時に使い始めてから、ずっとAbleton Liveのみを使っています。他のDAWを触ったこともあるんですが、Ableton Liveは圧倒的に触りやすいんですよね。直感的に操作ができてスケッチもしやすいし、それでいて細部もすごくエディットしやすい。その直感性と緻密さが見事に両立されているところが自分にとっては一番ちょうどいいんだと思います。

ーーAbleton Liveはトラックメイカー寄りの方やDJなどにユーザーが多いイメージですが、Shinさんはギターをメインの楽器とするプレイヤーでもありますよね。しかもWindowsユーザーでもある。その組み合わせは珍しくて面白いなと思いました。

Shin:たしかに、WindowsだとほかのDAWを使う方は多いかもしれませんね。でも、Ableton LiveはDTM的な処理、たとえばビートを直感的に適当にスライスしまくったり、MIDIをあちこちいじくり回して気軽にエフェクトをかけて音を変えまくったりといった作業が非常にやりやすいんです。他のDAWだと、そういう部分が少し面倒に感じることがあって……。

 あと、ボーカルやギター、ベースといったオーディオデータに対する「ワープ機能」のレベルがめちゃくちゃ高くて、波形のアルゴリズムもいっぱい選べる。リズムのエディットや自然なピッチ変更などがすごく良くできていると思います。ビートやリズムの処理をしやすくお任せできる部分と、プレイヤーとして生楽器のレコーディングをする部分、その両方が直感的にできる唯一のDAWですね。

ーーその他、ハードウェアでご自身の制作スタイルやサウンドのキーになっているものはありますか?

Shin:Sennheiserの『HD 490 Pro』というヘッドホンですね。これを買ってからは、メインのモニター(ADAM AUDIOの『A3X』)以外のスピーカーが必要なくなりました。このヘッドホンを基準にして色々な機材を買い揃えたくらい、本当に良かったです。ちゃんとしたスピーカーの真価って、アコースティック的にしっかりと設計された場所じゃないと得られないと思うんですよ。空間の鳴りや反射によるブレを少しでも減らすという意味では、ヘッドホンを追求するのがすごく大事で。

ーー『HD 490 Pro』は開放型のヘッドホンですよね。

Shin:そうです。『HD 490 Pro』は繊細さもありつつ適度なリッチさがあって、音がすごくフラットなんだけど硬くはない。生のスピーカーで聴いているような、空気を挟んだような響きにすごく似ているんです。これを使い始めてから、機材のセレクトで悩まなくなりましたね。

ーー制作用のパソコンについて、これまではどのような端末を使っていたのでしょうか。

Shin:元々はMac miniを使っていました。Macも良かったんですが、どうしても外付けドライブにサウンドライブラリを保存したり、プラグインを入れたりするのがデフォルトになってしまって。Thunderboltなどを使って頑張って運用していましたが、やはり外付けということもあって転送速度は落ちるし、サクサク動かないので「DTMの環境としてどうなんだろう……」という疑問がずっとありました。それに、クオリティの高いVSTプラグインが出るたびにメモリが必要になり、本体ごと買い換えるのに2年に1回のペースで40万円前後を払うような感じになってしまう。「何かいい方法はないかな」と自作PCのYouTubeなどを見始めて、「Windows PCって使いにくいという偏見があったけど、全然そんなことないやん」と気づいたんです。それが4〜5年前ですね。

ーー実際にWindowsのPCに乗り換えてみて、どうでしたか?

Shin:だいぶスッキリしました。余計な外付けをしなくてよくなったのが大きいです。今はCドライブと、2個目のM.2スロットにサウンドライブラリを入れて、裏のSATAの4TBのSSDに動画や音楽のアーカイブを片っ端から保存していくというスタイルにしているのですが、これがすごく快適で。SSDの速さを活かせる構成にできたのは、環境的には革命でした。

 それに、Windowsにしてから動画編集も自分でサクサクできるようになって、リール動画を作ってみたり、自分たちでYouTubeを始めてみたり、カメラを買ったりと、活動の幅も広がりました。Mac環境のままで、当時のスペックだったら動画編集なんて無理だと思って諦めていたかもしれません。総合的に見て、Windows PCに移行して本当に良かったです。自分の制作環境やアイデアに沿って細かくカスタマイズできるのが、Windowsの楽しいところであり良いところですね。必要・不要の判断を自分でできて、「こんなオーバースペックでも使いきれないな」という構成を省けるのも楽しいです。一番最初にBTOで買ったWindows PCも、1年くらいでいじりたい欲が出てきて、マザーボード以外の中身のパーツはほぼ自分で変えてしまいました。

ーー環境に合わせてご自身でパーツを組み替えたりと、ガジェットへの造詣が深いですが、そういったカスタマイズは昔からお好きだったんですか?

Shin:小さい頃からずっと機械いじりやモノをカスタマイズするのが好きでしたね。初めてお年玉で2万5000円くらいのギターを買ってもらった時も、買ってきた瞬間に「既製品のままだ」というのが嫌すぎて、塗装剥がしで色を塗り直したりしていました(笑)。ギターの練習もせずに、レリック加工をするために冷却スプレーをかけて塗装をひび割れさせようとしたり。

ーー元からそういう性格なんですね。

Shin:何においても自分の「マスターピース」を作る、追い求めるのが好きなんだと思います。家にあるサイドテーブル一つとっても、どれが一番自分にマッチしているかを長い期間かけて比較検討するんです。それはPCの構成などにも繋がっていて、パーツを調べずに買うことは絶対ないですね。ベンチマークをしっかり見て、パーツ同士の相性が本当にいいのかどうかも1個1個突き詰めて選びます。

ーーちなみに1日平均どれくらいの時間、パソコンの前で作業しているのでしょう?

Shin:起きている時間のほとんど、1日10時間から12時間くらいはここにいますね。ランニングをしに外出したり、お風呂に入ったり、ご飯を食べる時間以外はずっとパソコンの前に座って制作をしたり、ゲームをしたりしています。

ーーゲームも同じパソコンでされているんですね。

Shin:はい、1台ですべて完結しています。元々はコンシューマー機でApex Legendsなどをやっていて、周りの友達がPCに乗り換えていくのを見て自分もそうしようと思ったのも、PCパーツを強化し始めたきっかけの一つなんです。最初はグラフィックボードをRTX 3060 Tiにして、144Hz〜160Hzくらいのフレームレートを出せるようにしたり。今はゲームも色々やっていて、対人ゲームだと「ARC Raiders」や「Apex Legends」、ストーリーものだと「DEATH STRANDING」や「メタルギアソリッド」シリーズなどもやっています。そういったゲームやサブカルチャーは自分のアイデンティティにすごく影響を与えていますね。

ーーキーボードやマウスなどの入力デバイスも頻繁に変えていらっしゃるそうですね。

Shin:入力デバイスのラグが本当に嫌いなんです。人のスタジオに行ってPCを触った時、キーボードやマウスがラグいと「ここでこのバーの頭を触りたいのに、全然触れない!」と気になってしまって「よくこれで制作しているな……」と思うことがあります(笑)。

ーーめちゃくちゃよくわかります(笑)。

Shin:体に馴染むように、直感的に触れるようにしたいんですよね。普段の制作ではワイヤレスで使いやすいNuPhyのキーボードを使っていますが、ゲームをする時はラピッドトリガー機能があるDrunkDeerのキーボードを有線で繋いで使っています。マウスも制作時はトラックボールを使い、ゲーム時は遅延の少ないポーリングレートが高い無線ゲーミングマウスを使っています。トラックボールは無限スクロールもしやすくて、DTMでトラック数が200とかになった時にも体の感覚で直感的に操作できるので、もうやめられないですね。Mac時代のUIのアニメーションは綺麗でしたが、その分マウス操作のラグを感じていたので、Windowsにしてからそのストレスが消え、作業スピードが劇的に上がりました。

ーーそんなハイスペックなPCを使っていたShinさんですが、パソコンに関する悩みもあったのだとか。

Shin:一番の悩みだったのは「音」ですね。ダイナミックマイクならあまり気にならないんですが、コンデンサーマイクを使って録音する時は、普通にコンプレッサーをかけただけだとPCのファンノイズが入ってきちゃうんです。プラグインで消すこともできますが、そのぶん音質は劣化してしまうし、だったらそもそも入らない方がいいじゃないですか。

 あと、エレキギターを弾く人間にとっては、電磁ノイズが本当に大敵でした。ファンが多いと周波数が多すぎて、ノイズがハモり出すんですよ。ギターを録音する時は、パソコンの方を向くとノイズが入るから、横を向いて弾いていました。しかも、これまで使っていたPCは水冷クーラーだったんですが、クーラント液が回る時の「キーン」という高い周波数のノイズが鳴っていて、それがすごく目立って鬱陶しかったんです。ハムノイズの音も空冷とは全く違って高くて、本当に厄介でした。

ファンノイズや水冷の高周波ノイズも解決 ギターの録音がスムースになった“超静音PC”のすごさ

ーーそして今回、『Silent-Master PRO mini B860』が新たにShin Sakiuraさんのマシンとなりました。実際に使ってみた率直な感想は?

Shin:衝撃的なほど音がしなくて、まさに「サイレントマスター(Silent-Master)」という名前の通りでした。モノとしてパソコンである以上、音は出るものだと思っていたんです。MacBookですらファンが回ればうるさいですし、ブースの外にパソコンを置いたりしてみんな工夫しているわけですから。「どれだけ静かと言っても、まあちょっとマシになるくらいだろう」とお手並み拝見くらいのつもりだったんですが、電源をつけても全く音がしなくて。ファンが回っているかどうかも、ランプを見ないとわからないレベルでした。耳を近づけないと聴こえないくらいです。

Shin Sakiuraが使用した『Silent Master PRO Mini B860』の構成一覧

モデル:Silent Master PRO Mini B860
CPU:Intel Core Ultra 285T
CPU クーラー:Noctua NH-P1 [ファンレスCPUクーラー]マザーボード:ASRock B860M Pro RS WiFi
メモリ:64GB[32GB*2枚] DDR5-5600 [メジャーチップ・JEDEC準拠品] Dual Channel
グラフィックカード:Silent Master Graphics RTX5070Ti 16GB
SSD:Crucial T500 CT1000T500SSD8 [M.2 PCI-E Gen4 SSD 2TB]
ケース:【黒】Fractal Design Define 7 Mini Black Solid+前面ファン [Noctua NF-A14 FLX]+背面ファン [NF-A12x25 ULN]
電源:ASRock Steel Legend SL-850G [850W/80PLUS Gold]ATX3.1(PCIe5.1)
URL:https://www.sycom.co.jp/custom/model?no=001025&cd=ii3T5Mgkp6OyxKge

ーー『Silent-Master PRO mini B860』はビデオカードにサイコム、Noctua、長尾製作所の3社コラボによる究極のオリジナル静音空冷ビデオカード「Silent Master Graphics RTX5070Ti 16GB」を標準搭載していますが、その性能は実感できましたか?

Shin:すごく実感しました。今のハイスペックな環境でゲームや動画編集をする時、GPUが進化すればするほど、そのファンノイズが他のスペックの足を引っ張るネックになっていると思うんです。GPUのノイズって本当に大きいですから。でも、この3社コラボのグラボは本当に静かで、これだけハイスペックなパーツを使っているのに、この価格で買えるというのは驚きでした。適当なケースで組まれているゲーミングPCでも高額なものがある中で、サイコムさんがメーカーとしてこだわって作っているからこその凄さを感じます。

 性能面でも、Intel Core Ultra 285Tという超省電力モデルのCPUだったので少し心配していましたが、全く問題ありませんでした。最高画質で『Apex Legends』をプレイしてみたんですが、フレームレートも全く落ちずに320fpsに張り付きで、カクつきも一切ありませんでした。ゲームだけでなく、DTMや4Kの動画編集でも十分すぎるほどのスペックだと思います。それに、スタッターノイズのような一瞬途切れる現象も全くなくて、作業中もゲーム中も本当に快適なんですよ。

ーーファンの製造元であるNoctuaのCEOが「静音性は心のステータスにも直結する」と話しているのですが、パソコンの電源が付いていてもリラックスできている状態になれていると感じますか?

Shin:それは間違いなく感じますね。これまでファンノイズや水冷の高周波ノイズにストレスを感じていた分、そのノイズが一切なくなったことで、心理的な負担はかなり減りました。実は僕、一番最初はNoctuaのファンがついた虎徹のCPUクーラーを使っていたんです。その時にラジエーターの板を強めに触ってしまって歪ませてしまった苦い経験があるんです(笑)。今回はケースファンからCPUクーラー、そしてGPUまで全てがNoctua仕様になっているので、その恩恵をフルに受けて「やっぱりレベルが違うな」と感動しました。

ーー色々なハードウェアやソフトウェアと繋いでいると思いますが、互換性などは問題なかったですか?

Shin:全く問題ないです。今までの環境からスムーズに移行できました。

ーー見た目の部分、ケースなどのデザインについてはどうでしょう?

Shin:Micro-ATXサイズなので、すごく小さくて可愛いサイズ感ですよね。予想以上に良い意味でこじんまりしているなと思いました。このサイズ感で今回のようなスペックと静音性を両立しているのはすごいですね。ケースのパネルが簡単に開くのでメンテナンス性も高いですし、裏に防音シートが貼ってあるのを見て「このレベルでこだわっているから静かなんだな」と納得しました。Fractal DesignのケースにNoctuaファンが組み込まれていて、サイコムさんのロゴが入っているのも共同開発感があっていいですよね。

 あと、ファンレスのCPUクーラーの大きさが衝撃的でした。ケースを開けたらほとんどクーラーなんじゃないかと思うくらい大きくて。でも、表面積を大きくしてしっかり冷やしてくれているおかげで、ファンレスでも高負荷時の熱問題は全くなく、安定して動作しています。

ーー他のクリエイターにオススメするとしたら、どういった点を強調したいですか?

Shin:ここまでお話ししたこと以外のポイントだと、ファンが少なくて排熱も少ないので、PCが動いていることによって室温が上がりにくくなったとも感じています。これまではゲームなどをしているとGPUがヒーターみたいになって、冬でも暖房がいらないくらいだったんですが、それも今のところ感じていないので、そのあたりに悩んでいる人にもオススメしたいですね。

 あと、僕の場合はPCをデスク下に置いているんですが、もしデスクの上に置いているタイプの人だったら、この静音性の恩恵はもっとダイレクトに感じると思います。机の横で鳴っていた音がなくなるわけですから。

ーー今回の環境が手に入ったことで、今後やってみたいことはできましたか?

Shin:家での歌録りが圧倒的にしやすくなるので、そこは積極的に増やしていきたいですね。夜中にコンデンサーマイクで録音する時、どうしても空調の音やPCのノイズが入ってしまう問題がありましたが、そのハードルがかなり下がりましたから。

ーー最後に、Shin Sakiuraさんにとってパソコンとは?

Shin:もう「体の一部」ですね。パソコンがないと仕事ができないですし、パソコンが進化すれば僕自身も進化できる。そんな存在です。体の一部だからこそ、自分の体の感覚と同じようにラグがなく、静かに動いてくれないと気になってしまうんです。今回の『Silent-Master PRO mini B860』は、まさにそんな自分のシビアな要求に応えてくれる、最高の相棒になりそうです。

Shin Sakiuraが使用した『Silent Master PRO Mini B860』の構成一覧

モデル:Silent Master PRO Mini B860
CPU:Intel Core Ultra 285T
CPU クーラー:Noctua NH-P1 [ファンレスCPUクーラー]マザーボード:ASRock B860M Pro RS WiFi
メモリ:64GB[32GB*2枚] DDR5-5600 [メジャーチップ・JEDEC準拠品] Dual Channel
グラフィックカード:Silent Master Graphics RTX5070Ti 16GB
SSD:Crucial T500 CT1000T500SSD8 [M.2 PCI-E Gen4 SSD 2TB]
ケース:【黒】Fractal Design Define 7 Mini Black Solid+前面ファン [Noctua NF-A14 FLX]+背面ファン [NF-A12x25 ULN]
電源:ASRock Steel Legend SL-850G [850W/80PLUS Gold]ATX3.1(PCIe5.1)
URL:https://www.sycom.co.jp/custom/model?no=001025&cd=ii3T5Mgkp6OyxKge

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