『プロセカ』はボカロシーンに新たな風を送り続けるーー『セカライ5th』に感じたこと

1月23日に幕張メッセ 国際展示場 2-3ホールで開催された『プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE 5th - Frontier -』(以下:セカライ)の夜公演。5周年目となる3DCGライブで確信したのは、“現在のボカロシーンにプロセカが存在する意義”そのものだった。
ちょうど1年前の2025年1月、ボカロシーンのクロニクルに刻まれるトピックがあった。それは、『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』の全国規模での上映だ。そして、その映画で描かれたストーリーが、この日のライブ演出へ見事に結実していたことには、思わず胸が高鳴った。
センターの巨大モニターに映し出された、5つのユニットとバーチャル・シンガーの紹介ムービーに合わせて、観客が一人ひとりの名前を読み上げていく活気のあるオープニングを経て、ガールズバンドらしく爽やかな幕開けを「その音が鳴るなら」(作詞・作曲:石風呂)で飾ったのは、Leo/need(以下:レオニ)と巡音ルカ。バンドサウンドを実際に演奏しているのは、キャラクターたちのバックに控えたドラム、ベース、ツインギター、キーボードの生バンドだ。それにも関わらず、4thライブからさらに精緻さを増したキャラクターたちのリアルな運指やモーション——AR/VR/3DCG技術の高さが彼らの存在感をより滑らかな質感にし、音像がそのまま彼らの演奏として立ち上がってきた。
演奏だけではない。鏡音レンにバトンタッチした「透明エレジー」(作詞・作曲:n-buna)では、ステージ両脇のモニターに、曲調に合わせたキャラクターたちの寂しさ滲む表情が映し出され、心を揺さぶられる瞬間もあった。4thライブから導入されたメンバーを間近に感じられるカメラワークや照明演出も含めて、存在感も表情も、そのすべてをひとまとめにしてキャラクターを体感させてくれるのが『セカライ』だ。
実際に観客のペンライトや声を巻き込みながら、トラブルを切り抜けていくアドベンチャー性のあるコミカルなMCを展開したワンダーランズ×ショウタイム(以下:ワンダショ)。その流れのまま、KAITOを迎えて披露された「混沌ブギ」(作詞・作曲:jon-YAKITORY)は、実に彼らにぴったりな選曲だった。巡音ルカとの「アイリッド」(作詞・作曲:ぬゆり)で、エンターテイナーとしての表現の振り幅がさらに広がっていったのも、素直に心地よかった。
初音ミクとの「リアライズ」(作詞・作曲:柊マグネタイト)で、都会的なクールさをまとったVivid BAD SQUAD(以下:ビビバス)は、MEIKOとの「春嵐」(作詞・作曲:john)でクラップを促し、グルーヴィーで鮮烈なステージを完成させた。鏡音リンとの「オーバーライド」(作詞・作曲:吉田夜世)でポップな世界観を運んできたMORE MORE JUMP!(以下:モモジャン)は、巡音ルカとの「アンチユー」(作詞・作曲:Chinozo)で、観客と振り付けを共有し、ひとつになる。25時、ナイトコードで。(以下:ニーゴ)とMEIKOによる「余花にみとれて」(作詞・作曲:keeno)は、彼らにしか出せない儚さの充満する味わいだったが、なかでも目を見張ったのは、KAITOをセンターに置いた「熱異常」(作詞・作曲:いよわ)。キャラクターたちの虚ろな瞳がすべてを語り、最もユニットの個性が曲に咲く1曲になっていた。
バーチャル・シンガーが歌い、踊る「Be The MUSIC!」(作詞・作曲:キノシタ)は感慨を覚えるブロックで、思わず見入ってしまった。近年、初音ミクや重音テトなどのキャラクターが愛され、その熱量が次の創作へと繋がる好循環がボカロシーンには生まれているが、プロセカがその流れに大きく寄与している面もあると感じたからだ。オリジナルキャラクターたちとバーチャル・シンガーたちの個性。ゲームのなかで双方が絶妙なバランスで配置され上手く調和したことで、平等に愛される存在と化した。プロセカを通して、バーチャル・シンガーに対して芽生える親近感は、ボカロシーンの現在地に繋がっているといえるだろう。
ニーゴと鏡音レンによる「キティ」(作詞・作曲:ツミキ)でカメラに向かってポーズを決めるファンサービスが充実し、ド派手なスパークラーの演出が重なったワンダショと巡音ルカによる「Glory Steady Go!」(作詞・作曲:キノシタ)でコール&レスポンスが巻き起こり、ライブも後半戦。たとえば、続けて披露されたモモジャンと鏡音レンによる「はぐ」(作詞・作曲:MIMI)、レオニと初音ミクによる「てらてら」(作詞・作曲:和田たけあき)、ビビバスとKAITOによる「シネマ」(作詞・作曲:Ayase)といった楽曲の多くは、プロセカのために書き下ろされたものだ。プロセカのストーリーは現在進行形であり、その歩みに寄り添いながら楽曲のかたちも更新されていく。そして生まれた曲は、プロセカの枠を越えてボカロシーンへと送り出される。一方で、ボカロシーンの過去曲がプロセカへと流れ込み、新たな文脈を得ることもある。こうした往復のなかで、プロセカは、いまやボカロシーンの貢献に欠かせない。そのことを、この日のライブでもはっきりと感じ取ることができた。
「それじゃあ、歌おう! みんなの想いをつなぐ歌」と初音ミクが繋げた初音ミク・鏡音リン・鏡音レン・巡音ルカ・MEIKO・KAITOによる「Connecting」(作詞・作曲:halyosy)は、halyosyを中心とする合同企画「ニコニコラボ」への提供曲で、ボカロバージョンとして2014年に投稿された。“創作の連鎖”を彷彿とさせるこのアンセムを起点にして、その後の光景に虹が架かった出来事は、忘れられない。ワンダショと鏡音リンによる「サイバーパンクデッドボーイ」(作詞・作曲:マイキP)、モモジャンと鏡音リンによる「キラー」(作詞・作曲:夏代孝明)、ビビバスと初音ミクによる「ULTRA C」(作詞:Reol・作曲:Giga & TeddyLoid)で盛り上がりが最高潮を描いたかと思えば、アンコールで静かに訪れたのは、バーチャル・シンガーが歌唱する劇場版プロセカの劇中挿入歌「ハローセカイ」(作詞・作曲:DECO*27)。映画に出演した「開かれた窓のセカイの初音ミク」が現れ、曲と連動しながら、ステージからステージ両脇のモニターへ瞬時にワープする演出も夢見心地だった。
〈ハロー、セカイ 僕の声はちゃんと届いてるかい
思ったよりも大丈夫 君はひとりなんかじゃない
ハロー、セカイ 君の声もちゃんと届いてるよ
思ったよりも最高だ 僕もひとりなんかじゃない〉
架かった虹には、過去(「Connecting」)から、現在(「ハローセカイ」)へと確かに歌い継がれた感触があった。ボカロシーンでは、ボカロPがバーチャル・シンガーをフィーチャリングしながら、創作と向き合い、葛藤する。一方でプロセカでは、ユニットがバーチャル・シンガーとともに歩むなかで、同じように壁へとぶち当たる。表現も語られ方も異なるが、そこには圧倒的な時間をかけて育まれてきたボカロカルチャーの本質が通っている。
初音ミク・星乃一歌・花里みのり・小豆沢こはね・天馬司・宵崎奏が〈でも僕ら1人で行こうと独りではないんだ〉と声を合わせた5thアニバーサリーソング「ペンタトニック」(作詞・作曲:syudou × バルーン)が結びの1曲。ミュージックビデオでも目まぐるしく場面が切り替わるこの曲を聴きながら、ふとひとつの気づきが浮かんだ。楽曲のトレンドが移り変わるなかでも、ボカロシーンがいまなお瑞々しい温度を保ち続けている背景には、作り手と聴き手の両軸に活発な世代交代があり、プロセカがその流れに少なからず影響を与えているのではないか、ということだ。シーンを一本の“線”とすると、プロセカはその線に新たな空気を送る“風”だ。だからボカロシーンは、いつの日も新鮮で立ち止まることはない。筆者はそう信じている。誰かの心に風が吹く限り。
■セットリスト
1 その音が鳴るなら
2 透明エレジー
3 混沌ブギ
4 アイリッド
5 リアライズ
6 春嵐
7 オーバーライド
8 アンチユー
9 余花にみとれて
10 熱異常
11 Be The MUSIC!
12 キティ
13 Glory Steady Go!
14 はぐ
15 てらてら
16 シネマ
17 Connecting
18 D/N/A
19 Sympathy
20 サイバーパンクデッドボーイ
21 キラー
22 ULTRA C
23 ハローセカイ
24 ペンタトニック

































