『クロノ・トリガー』の名曲×東京フィルの好相性に、オイルでアイセンサーがかすんだ一夜 『CHRONO TRIGGER Orchestra Concert 時を超える旋律』レポート

『クロノ・トリガー』オケコンレポ

 1月17日と18日の2日間、東京国際フォーラム・ホールAにて開催された『CHRONO TRIGGER Orchestra Concert 時を超える旋律』は、30年の時を超えてもなお色褪せない『クロノ・トリガー』の音楽のすごさを改めて体感できたコンサートだった。今回は最終公演となった1月18日夜公演の模様をレポートしていく。

※本記事はゲーム『クロノ・トリガー』の一部ネタバレを含みます。

 『クロノ・トリガー』は1995年3月に発売されたスーパーファミコン向けのゲームソフトで、「ドラゴンクエスト」の堀井雄二氏、「ドラゴンボール」の鳥山明氏、「ファイナルファンタジー」の生みの親 坂口博信氏が手を組み、のちに一緒の会社になるスクウェアとエニックスの合同制作というまさに“ドリームプロジェクト”の一作だった。

 発売当時の筆者は5歳だったため、実際にゲームをプレイしたのは小学生になってから。ただ、発売当時から様々な場面で聴いていた光田康典氏の手掛ける音楽はプレイ前から耳に残っており、そんなゲームは後にも先にも『クロノ・トリガー』だけだった。今回はそんな同作の音楽が東京フィルハーモニー交響楽団の演奏とニコラス・バック氏の指揮のもとで届けられるとあり、会場へと足を運んだ。

鳥の音や花火のSEまでオーケストラで再現する徹底ぶりに感動

 開始時刻になり、見覚えのある振り子が揺れる音が鳴り響き、ステージ上のスクリーンにはタイトル画面が表示される。そこに寄り添う音楽はもちろん「予感」だ。細やかなアルペジオと打楽器の音色が物語の始まりを、そしてプレイヤーたちの様々な記憶を思い起こさせる。

 このあと訪れる至福の時を、先んじてダイジェストで紹介するような映像とともに演奏されたのは「クロノ・トリガー」。当時のゲームショップの店頭で流れるデモから聴こえていた印象的なフレーズはこの日、ホルンの重厚な音色と共に届けられた。

 その後、オーケストラは嵐の前の静けさ、もとい物語の穏やかな始まりに添えられた「朝の日ざし」と「やすらぎの日々」を立て続けに披露。「朝の日ざし」ではゲーム本編のSEで鳴っているカモメの声や波の音、花火の音がステージ上から聴こえており、筆者は「同期か?」と思ったが、司会を務めた声優の川庄美雪が合間のMCでステージ上の楽器(カモメの音はクラリネット、波と花火の音は打楽器)で再現していたことを明かすなど、細かな再現性の高さに驚いた。

 賑やかな「ガルディア王国千年祭」が終わると、物語が時空を超え始め、不穏な様相を見せるタイミングでの「不思議な出来事」や、初めて入ったガルディアの森を思い出させる「樹海の神秘」へ。オーケストラによる演奏、とくにチェロやコントラバスの重い音が空気を震わせることにより、奥深さや妖しさが増幅した形で聴こえてくる。

「風の憧憬」の演奏にみた『クロノ・トリガー』音楽最大の特徴

 そして代表曲のひとつといえる「風の憧憬」もここで演奏された。全体として『クロノ・トリガー』の楽曲は繰り返しが多いゲームBGMのなかでも、同一フレーズを鳴らす際に違った楽器や奏法を用いることで展開を想起させるものが多いのだが、「風の憧憬」はわかりやすくそれを体現している1曲。あのメインフレーズは楽曲の冒頭でピチカート奏法を使って静かながら跳ねるように鳴らされ、次の展開ではレガート奏法で滑らかに、そして最後はスタッカートとレガートが交差するように奏でられた。東フィルの持つ細やかさ・丁寧さが如何なく発揮される原曲とそのアレンジを聴いて、改めて両者の相性の良さを感じた次第だ。

 ユーザーがベースライン単体を聴くだけでもタイトルを言い当てられるであろうバトル曲「戦い」は、まさにファーストとセカンドのバイオリンたちがその象徴的な2フレーズを同居させてくれていたし、「ファンファーレ1」は金管の派手さが原曲のおめでたさをさらに増幅させていた。

 MCを挟み、「ガルディア城 ~勇気と誇り~」「カエルのテーマ」「王国裁判」「隠された事実」「危機一髪」と再び中世の楽曲が続く。「カエルのテーマ」は原曲にあった軽やかさと凛々しさのうち、後者が際立つアレンジだった。

 ストーリーが未来へと転換するタイミングでは「16号廃墟」と「ロボのテーマ」が演奏された。前者は原曲のジャズっぽいハネ感が大編成でも見事に表現されていたし、後者は重厚な導入や背景と明るいメロディが同居するロボのキャラクター性の表裏を描けていたように思う。

 その後、多種多様の全滅シーンがスクリーンに映されるなかで「世界最期の日」が、そして荒々しく重い演奏で絶望感を表現した「ラヴォスのテーマ」がそれぞれ演奏され、前半が終了した。

終盤にはまさかのウィンドマシーンも登場

 後半は物語の中核部分へと踏み入れるタイミングで訪れた「時の最果て」に始まり、同スポットにいるスペッキオとの戦闘BGMであり、ピッコロの音色も印象的な「愉快なスペッキオ」、そしてスペッキオに勝つことで流れる魔法習得時のBGM「ファンファーレ3」が続けて演奏された。

 そして場面は原始時代へ。ここまで繊細な音色を奏でていたオーケストラが、ある種の荒々しさ・力強さをもって演奏した「原始の山」や「エイラのテーマ」に興奮したのも束の間、当時のプレイヤーが手に汗を握って挑んだ「魔王城」「錯乱の旋律」「魔王決戦」へ。「魔王城」では時折“黒い”風の音が鳴っていたが、このためだけに「ウィンドマシーン」を使っていたのだとか。

 目まぐるしく様々な時代を行き来するストーリー終盤にあわせて演奏されたのは「時の回廊」と「ジール宮殿」。その後の「サラのテーマ」「夜の底にて」まで、悲しく切ないテーマが続いたのち、力強い繰り返しのフレーズが用いられた「決意」、そして空を飛ぶシルバードの軽やかさを表現していた原曲に金管や打楽器の重厚さ・メカメカしさが加わった「シルバード ~時を渡る翼~」が披露された。

 最終決戦前〜決戦中の昂りと緊張感を表した「世界変革の時」「ラストバトル」では、性急な演奏によって生じる逼迫感が聴いているこちらにも伝わってきており、思わず握る拳に力が入った。

 最終決戦後のエンディングを描いた「エピローグ~親しき仲間へ~」は、様々な分岐エンディングのなかから、仲間との別れにフォーカスした映像とともに届けられた。当時の筆者も子どもながらに感動したルッカとロボの別れは、時を経てもなお涙腺を、いや、アイセンサーを刺激する。

 そして本編最後の楽曲である「遙かなる時の彼方へ」。スクリーンに流れたのは、大団円の様子ではなく、クロノを生き返らせなかった場合のエンディングルート。仲間たちが再びクロノを助けるために集結する様子や、マールが一人寂しく佇む場面の映像とともに、切ないハーモニーが会場を包み込んだ。

 その後訪れたアンコールでは、「クロノ・トリガー メドレー」として本編で演奏された楽曲のメドレーが披露された。死の山の頂上でマールがクロノを迎える場面もしっかりとスクリーンに映し出され、無事に大団円となった世界線も描かれたのち、コンサートは終了した。

 客席からは万雷の拍手が鳴り響き、何度も求められたアンコールや、会場を後にするファンの赤くなった目元や笑顔からも、この日の公演が大成功に終わったことを改めて感じることができた。

■セットリスト
『CHRONO TRIGGER Orchestra Concert 時を超える旋律』
1月18日(日)17:00 公演プログラム

01.予感 / クロノ・トリガー
02.朝の日ざし / やすらぎの日々
03.ガルディア王国千年祭 / 不思議な出来事
04.樹海の神秘 / 風の憧憬
05.戦い / ファンファーレ1
06.ガルディア城 ~勇気と誇り~ / カエルのテーマ
07.王国裁判 / 隠された事実 / 危機一髪
08.16号廃虚 / ロボのテーマ
09.世界最期の日 / ラヴォスのテーマ
10.時の最果て / 愉快なスペッキオ / ファンファーレ3
11.原始の山 / エイラのテーマ
12.魔王城 / 錯乱の旋律 / 魔王決戦
13.時の回廊 / ジール宮殿
14.サラのテーマ
15.夜の底にて
16.決意 / シルバード ~時を渡る翼~
17.世界変革の時 / ラストバトル
18.エピローグ~親しき仲間へ~
19.遥かなる時の彼方へ

- アンコール -

20. クロノ・トリガー メドレー

 © SQUARE ENIX
Illustration: © BIRD STUDIO/SHUEISHA
Story and Screenplay: © ARMOR PROJECT/SQUARE ENIX

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