『クロノ・クロス』リマスター収録で話題の『ラジカル・ドリーマーズ』とは? 奇跡の復活を遂げた、シリーズを繋ぐ名作ノベルゲーの魅力
4月7日に発売されたマルチプラットフォーム対応ソフト『クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション』(以下、クロノ・クロス RD)。タイトル名の通り、本作は1999年リリースの『クロノ・クロス』(プレイステーション)を題材としたリマスターソフトであり、3DモデルのHD化、作中ミュージックの音質向上、オートバトル機能……等々、ビジュアル周りやシステム面を中心に様々なブラッシュアップが施されている。
しかし、『クロノ・クロス RD』の存在意義は“名作タイトルの現代向けリファイン”だけではない。と言うのも、『クロノ・トリガー』と『クロノ・クロス』を繋ぐ重要な一作が、本作を契機に26年を経て収録されたからである。
その名は『ラジカル・ドリーマーズ -盗めない宝石-』(以下、ラジカル・ドリーマーズ)。『クロノ・トリガー』のその後を描き、『クロノ・クロス』の始まりとなったアドベンチャーゲームだ。本稿では『ラジカル・ドリーマーズ』の概要を踏まえつつ、特徴的なゲームシステムやメインシナリオについて紹介したい。
26年を経て蘇った「クロノ」シリーズの名作ADV
『ラジカル・ドリーマーズ』は1996年2月3日、スーパーファミコンの「サテラビュー」専用ソフトとして誕生した。サテラビューというのは、任天堂が提供していたスーパーファミコン向け衛星データ放送の受信端末。ゆえに衛星データ放送によるソフト配信が終了すると入手手段が途絶えてしまうため、中古市場では本作のデータ入りメモリーパックが数万円まで値上がりするほどの高騰化。2022年現在まで長らく入手困難な状況が続いていたが、『クロノ・クロス RD』の発売によって26年ぶりに奇跡の復活を遂げた……というわけだ。
本作はスクウェア(現スクウェア・エニックス)が手掛けたスーパーファミコンの名作『クロノ・トリガー』の正式な続編であり、加藤正人氏(脚本/演出)や光田康典氏(音楽)といったスタッフも同作から引き続き開発に参加している。
しかし、ゲームジャンルは『クロノ・トリガー』とは全くの別物である。ゲームジャンルはアドベンチャーゲーム(ADV)だが、感触は「かまいたちの夜」シリーズのようなサウンドノベルゲームそのもの。シチュエーションを表すビジュアルイメージの上にテキストが表示され、プレイヤーは文字を読み進めつつ、時には選択肢を選んで物語を紡いでいく。また、選んだ選択肢によって侵攻内容が変わるほか、結末(エンディング)のテイストも往々に変化する。
ちなみに、タイトル名の“ラジカル・ドリーマーズ”は作中に登場する盗賊団の名称。プレイヤーはその主要メンバーの一人「セルジュ」(本作の主人公)を操り、志を共にする仲間「キッド」「ギル」と一緒に旅を進めることになる。
『クロノ・クロス』誕生の礎となったメインシナリオ
本作には計7本のシナリオが収録されており、いずれもバラエティ豊かな仕上がりなのが特徴。そのうち、メインシナリオ「キッド 盗めない宝石編」は『クロノ・トリガー』の正式な続編であり、次作『クロノ・クロス』の原案にもなった存在感の強い物語だ。
同シナリオでは「貴族の屋敷に潜入して秘宝を盗む」というストーリーテリングのもと、ラジカル・ドリーマーズ一行の活躍、そしてキッドと宿敵「ヤマネコ大君」の因縁が色濃く描かれている。加えて、同シナリオでは『クロノ・トリガー』の登場キャラクター「ルッカ」がキッドの成育に深く関わっている点をはじめ、「クロノ」や「マール」といったメインキャラクターの存在も垣間見ることができる。なお、“本作のメインシナリオが『クロノ・クロス』の原案になった”点については、主人公のセルジュがそのまま『クロノ・クロス』でも主役を務めていることから明らかだろう。
ほかには主要キャラクターの駆け落ちに迫る「ギル 愛と勇気の駆け落ち編」、サブカル系のパロディネタが溢れる「激闘撲滅流星刑事編」、終始ホラー色強めで展開する「帰郷・灯のシェア編」……等々、シリアスなものからコメディタッチなものまで種々様だ。筆者の意見にはなるが、一方で『クロノ・トリガー』のその後を描きつつ、テイストに合わせてシナリオを分割し、プレイバリューを高めているように見受けられた。