ディズニーがOpenAIと10億ドル契約、Soraに200超キャラクター提供 “戦略的提携”への方向転換で業界の潮目は変わるか

生成AIをめぐる著作権論争が激化する中、米エンターテインメント/メディア業界最大手ウォルト・ディズニー・カンパニー(以下ディズニー)とAI企業OpenAIが手を組んだ。この合意は両業界の関係を変える歴史的な転換点となる可能性がある。
12月12日(現地時間11日)、ディズニーとOpenAIはディズニーが動画生成AI「Sora」の初の主要コンテンツライセンスパートナーになると発表した。契約期間は3年で、DisneyはOpenAIに10億ドル(約1555億円)を出資し、追加株式を購入できる新株予約権(ワラント)も取得する。
ミッキーマウスやアイアンマンなど200超キャラを提供、ただし俳優の素顔・声は除外
今回の契約により、SoraとChatGPT Imagesは、ディズニー、マーベル、ピクサー、スタ・ーウォーズの200以上のキャラクターを使った短い動画や画像を生成できるようになる。これによりユーザーはミッキーマウスやダース・ベイダー、アイアンマンなどのキャラクターを使い、自分だけの動画を作成できる。
ただし、実写映画に出演した俳優の素顔や声は使用できない。使用可能なのはアニメーション版やマスクやアーマーを着用したキャラクターのみだ(例:アイアンマンのアーマー姿は使えるが、俳優が演じるキャラクターの素顔の状態は対象外)。
両社の発表によると契約に基づく動画や画像の生成は、2026年初頭の開始が見込まれるが、契約は最終的な合意文書の締結、必要な社内承認などを経て発効する。
DisneyのCEO・ロバート・A・アイガー氏は「クリエイターとその作品を尊重し保護しながら、生成AIによってストーリーテリングのリーチを思慮深く、そして責任を持って拡大していく」と述べた。OpenAIのCEO・サム・アルトマン氏も「AI企業とクリエイティブ業界のリーダーが責任を持って協力できることを示している」と強調した。
契約に基づき、DisneyはDisney+向けを含む新製品開発にOpenAIのAPI(プログラム間でデータをやり取りする仕組み)を活用するほか、従業員向けにChatGPTを導入する。ファンが制作したSora動画の一部はDisney+でも配信される。
「著作権のタダ乗り」と批判から一転合意へ、AIは「脅威」ではなく「成長機会」?
Disneyは今年6月、AI画像生成企業Midjourneyを「著作権のタダ乗り」「底なしの盗作」と厳しく批判し、著作権侵害で提訴したばかりだった。しかし、わずか半年で、DisneyはAIを「脅威」ではなく「成長機会」として捉える方向へ舵を切った形だ。
一方、クリエイター側の反発は根強い。米NBC Newsによると、ハリウッドの脚本家組合は両社の発表を受け、声明で「我々の作品の盗用を容認し、我々を犠牲にしてビジネスを構築したテック企業に価値を譲り渡すもの」と契約を強く批判した。俳優組合も同日の声明で、契約の締結状況を注視すると表明している。
OpenAIのSoraは2025年9月末の一般公開後、著作権侵害や偽動画の拡散で大きな批判を浴びた。スポンジ・ボブやピカチュウなど有名キャラクターの無断使用、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師やジョン・F・ケネディ元米大統領の偽動画が問題となり、OpenAIは公開からわずか数日で方針変更を余儀なくされた。その炎上からわずか2カ月での大型契約発表は、OpenAIにとって信頼回復の重要な一手となる。
直近のAI企業とコンテンツ業界の合意により生まれた「権利を尊重しながら協力する」新たなモデルの例としては、音楽業界でのUdioとユニバーサルミュージック、Sunoとワーナーミュージックの合意が挙げられる。今回の契約はそれに続くものだ。しかし、この方向性が本当にクリエイターの仕事を守るのか、それとも脅かすのか。今後の動向に業界の注目が集まっている。
参考:
https://thewaltdisneycompany.com/disney-openai-sora-agreement/
https://www.nbcnews.com/tech/tech-news/openai-disney-sora-ai-videos-rcna248617
























