『FC 26』“攻め”の快適性&納得性が上昇 「今年はどう?」と様子見中の背中を押したくなる一作

『FC 26』“攻め”の快適性&納得性が上昇

 Electronic Artsのサッカーゲームシリーズ最新作『EA Sports FC 26』(以下、『FC26』)が、9月26日に世界同時発売された。本作は1994年に誕生した同社「FIFA」の後継シリーズで、「EA Sports FC」へと改称されてからは3作目にあたる。

 ほぼ毎年、リーグや選手データの更新を含むアップデートをともなって新作が発売され、特に海外のサッカー(ゲーム)ファンを中心に親しまれてきた本シリーズ。なかでも今作は、これまでサッカーゲームにあまり興味がなかった人にもおすすめしたくなるような、快適かつ手堅いプレイフィールとなっていたので、本稿にて紹介していこう。

EA SPORTS FC 26 Official Launch Trailer | The Club is Yours

 まずはなんといっても試合中のレスポンスのよさに触れたい。進化するグラフィックや多彩さを増す選手アニメーション(モーション)を歓迎しつつも、ときおり古きよきサッカーゲームのキビキビした操作感に恋しさを募らせていたファンにとっては朗報だ。

 『FC26』では、パスとドリブルの操作性およびレスポンス向上が図られている。なかでも恩恵を感じるのは、パワーの低いショートパスの最適化。選手が最小限の足の振りでパスを繰り出せるようになったことで、これぞサッカーゲームともいうべきテンポのよいパス回しが可能に。またパス時の角度制限も調整され、近年の作品では選手が体勢を崩してしまっていたような方向へのパスも多少は無理が利くようになった。

 ドリブルに関しては、前作に比べてよりタッチが細かくなり、急激な方向転換もしやすくなった。走る方向を180°切り返すようなシーンで、選手が踏ん張るアニメーションも敏捷性が増し、慣性に逆らう動きをした際の操作ストレスが減った。また選手の身長に応じてドリブルの速度が変化するようになっているので、背の低い快速ドリブラーの価値が増している。

FC 26 Ultimate Team | Official Deep Dive

 そして近年のシリーズ作を遊んでいたプレイヤーは意外に感じるかもしれないが、シュート時の「タイミングフィニッシュ」(インパクトの瞬間にタイミングよくシュートボタンを押すと威力や精度が増すシステム)が削除された。

 これに関しては物足りなさを感じるプレイヤーもいるかもしれないし、そもそも従来も必須テクニックではなかった(設定からオン・オフ可能)わけだが、シュートの威力と方向の調整のみに集中できるゲーム性は個人的に好みだった。

 オフェンスの快適性が向上した一方で、ゴールキーパーの頼りがいが増している点も大きなトピックだ。ゴールキーパーのシュート軌道を読み取る能力の改善に始まり、各種挙動の賢さがアップ。さまざまな種類のシュートに対してより適切な対応を採れるようになり、それにともなってキーパーのアニメーションも追加されている。

『EA Sports FC 26』

 守備を完璧に崩された場合はさておき、「これは止めてほしい!」と思うようなシチュエーションでキーパーがあっけなくゴールを明け渡すことは目に見えて減った印象。とはいえオフェンスがテンポアップしたこと、またスルーパスの軌道選択がより賢くなったことなどもあり、相対的にディフェンスの難度は上昇したと言える。ユーザーのあいだでも本作発売後ほどなくして「守備が難しすぎるのではないか」との意見が上がるようになった。

 これに対して開発はアップデートにてスプリント・ジョッキーの速度をわずかに増加させるなどで段階的に改善を図っているものの、依然として堅守を軸にチームの戦略を組み立てたいプレイヤーにとってはこれまでよりも厳しい環境となっている。

『EA Sports FC 26』

 ちなみに、「キャリア」「Rush」といったモードでゴールキーパーをプレイする際の操作方法も刷新。右スティック入力でダイブし、ハイボールに対してはボタンに応じてパンチ/キャッチの使い分けが可能。さらに先述のゴールキーパーAI向上の副産物だろうか、任意ボタンの長押しにより自動的に最良のポジションへと移動する機能も利用できる。

『EA Sports FC 26』

 全体的にサッカーゲームとしての爽快感と納得性が増し、シリーズファンからのフィードバックを可能な限り反映した手堅い仕上がりとなっている『FC26』。

 言うまでもなく現実のサッカーとサッカーゲームは別物であり、リアルさとゲーム的な爽快感は多くの場合トレードオフの関係性になりがちなものだが、本作をプレイしてみて「こんなの現実だったらあり得ない!」と感じたプレイヤーはゲームタイプ設定にて「オーセンティック」を選んでみてほしい。こちらは主にオフラインプレイで有効となる機能だが、より現実に近いゲームスピードでのプレイが可能となる。

 また毎作プレイしているようなコアなファンにはおなじみのところだが、今回もユーザー好みのドリームチームを構築して対戦できる最人気モードの「Football Ultimate Team」をはじめ、ひとりの選手または監督としてプロ生活を送るシミュレーション要素を内包した「キャリア」、各ユーザーが選手1名を担当し最大11対11のオンライン対戦が可能な「クラブ」、それを5対5に縮小しよりハイスピードかつミクロな駆け引きが楽しめる「Rush」など、非常に多彩なコンテンツが用意されている点も魅力だ。

 今作における快適性の向上と、シリーズの積み重ねが生んだ受け皿の広さから、特に「どうせ今年もそんなに変わらないんでしょう?」との目を向ける最近ご無沙汰の過去作プレイヤーや「長い歴史を持つシリーズをいまから初めて遊んで楽しめるかな?」と不安に思う人にこそ、ぜひとも手にとってみてほしいと感じる一作だった。

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