狩猟文化はスマホでどう変わる? クラフトなど新要素を備えた『モンスターハンターアウトランダーズ』試遊レポート

2025年9月25日~9月28日の計4日間にわたって開催された『東京ゲームショウ2025』(TGS2025)。同イベントのLevel Infiniteブースにて、現在開発中のスマートフォン向けタイトル『モンスターハンターアウトランダーズ』(アウトランダーズ)の世界初プレイアブル体験会が行われた。
本稿では、約30分の試遊を通して分かった『アウトランダーズ』のプレイフィールについてお届けする。
また、プレイアブル体験会に際して本作の開発陣にも制作背景を伺った。プレイレポートと合わせてそちらもチェックいただけると幸いだ。
狩猟アクションが手軽に楽しめるスマホ向けモンハン
2004年に誕生した「モンスターハンター」(MH)と言えば、家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機での展開を中心とし、20年以上にわたって歴史を積み重ねてきた人気シリーズだ。
そのスマホ向けタイトル『アウトランダーズ』を実際に触って感じた印象は、「MHの醍醐味を手軽に、かつ本格的に味わえる」というものだった。

本作では、画面左側のバーチャルスティックでキャラクターを操作し、もう一方の右側をタッチしてカメラを動かしていく。攻撃や回避などのコマンドは画面下のアイコンをタップする方式だが、レスポンスが軽快で、コントローラーで遊んでいる感覚にかなり近い。タッチ操作特有のもたつきを感じることはなく、スマホに最適化されたUI設計が好感触だった。

『アウトランダーズ』では、これまでの「ハンター」ではなく、さまざまな「冒険者」が登場する。今回の試遊でも複数人の冒険者を選ぶことができたが、筆者はヘビィボウガンを操るキュートな外見の女性「ぺぺ」を選択した。なお、彼らとは別に登場する主人公(プレイヤー)は、各タイプごとの武器種を切り替えて扱うことができる。
フィールドへ降り立ち、まずは探索と並行しながら「プケプケ」を狩猟することに。画面上に並んだボタンをタップすると、冒険者が装備している武器で攻撃が行える。ヘビィボウガンの場合は弾丸を撃ち出し、ステップ回避やガードもワンボタンで発動できた。また、冒険者ごとに「奥義」とよばれる固有スキルも用意されている。

冒険者ごとの狩猟スタイルに加え、『アウトランダーズ』では従来の「オトモアイルー」だけでなく、新たに「オトモルタコン」と「オトモメドリ―」を同行させ、共に狩猟などができる。アイルーはモンスターへ攻撃特化、ルタコンは罠や狩猟設備のクラフト、メドリ―は回復ならびにサポート……等々、得意なシチュエーションがしっかり差別化されているのがポイントだ。
ありそうでなかった狩猟設備のクラフト要素
『アウトランダーズ』を最も特徴づけるのが、新要素の「クラフト」。フィールド上に狩猟設備や建築物を設置でき、戦闘の補助や拠点づくりに活用できる。

試遊では、罠や大砲のような設備をボタンひとつで設置することができた。仲間と役割を分担すれば、従来以上に戦略的な立ち回りが可能になるだろう。こうした建築要素は「MH」シリーズではこれまで正面から取り入れられてこなかったため、“狩猟と冒険”を橋渡しする一種の挑戦と言える。
そして印象的だったのは、このクラフト要素がゲーム世界に違和感なく溶け込んでいた点だ。派手さよりも実用性に重点を置いたデザインで、MH特有の“自然の中で生きる”感覚を壊さず、新しい遊び方を提供していた。
総じて『アウトランダーズ』は、スマホというプラットフォームに適応しつつ、操作性・手応え・世界観といった「モンハンらしさ」をしっかり継承しているように思う。単なる移植や簡略版ではなく、クラフトや冒険者というアレンジを効かせた意欲作として仕上がりつつあった。

ここからは、『アウトランダーズ』の開発に携わる黄 冬氏(TiMi Studio Group)と砂野元気氏(カプコン)のインタビュー模様をお届けする。本作の製作背景をはじめ、新要素の詳細を伺った。
TiMi Studio Groupが目指す新たなスマホ向けモンスターハンター
ーーまずはお二人の自己紹介からお願いいたします。
黄 冬氏(以下、黄氏):私はホァン・ドンと申します。TiMi Studio Groupでプロデューサーを務めております。本日はインタビューの機会をいただき、大変光栄に思っております。
砂野元気氏(以下、砂野氏):カプコンの砂野と申します。『アウトランダーズ』の監修を担当しております。
ーー「MHを題材にした別のスマートフォン向けタイトルがございますが、それらと比較して、本作はどのようなゲームなのか教えていただけますか?
砂野氏:『アウトランダーズ』は、従来の「MH」シリーズに登場するハンターとは違い、「冒険者」と呼ばれる特殊な能力を持つ人々を主役とした作品です。そこに加えて、クラフト要素を活用してフィールド探索やサバイバルを行っていく点にあります。

その一方で、シリーズならではの特徴である、モンスターを狩猟し、得られた素材で装備を作成し、再びモンスターと戦うという循環はしっかりと継承しています。そうした従来の狩猟体験を大切にしながら、新たな形の遊びを提供できるよう、開発を進めております。
ーーカプコン側は監修という立場で本作に携わっていると伺いました。
砂野氏:そうですね。TiMi Studio Groupとのパートナーシップについては、2022年ごろに発表いたしました。
しかし、その少し前にTiMi Studio Groupから「モンスターハンターを題材にモバイル向けの新しいゲームを作ってみたい」という提案をいただきまして。クラフトやサバイバル、探索といった、これまでの「MH」シリーズにはなかった要素を取り入れる企画が立ち上がりました。
ーー新要素として発表されたクラフトは、「モンハンと相性が良いのでは?」という想いから始まったのですね。
黄氏:まさにその通りです。「MH」は、生態系を軸に、環境や天候、地形など多様な要因の中で狩猟が行われる点が大きな特徴です。そうした特性に基づいて、私たちは本作の方向性を検討しました。
その過程で、クラフトをはじめとする新しい要素をアイデアとして提示し、分業や新しいオトモのあり方などを盛り込みながら、企画を具体化していきました。
ーークラフト要素はゲームのどのような部分に影響を及ぼすのでしょうか?
黄氏:今回の試遊で体験していただいたように、クラフトによって高速かつ自由に移動できる点は非常に重要な要素です。また、さまざまな素材の採取や収集においても、クラフトは大きな役割を担っています。
冒険者×オトモの掛け算が生む幅広いプレイスタイル
ーー本作にはさまざまな冒険者をサポートする「オトモ」の情報が公開されています。彼らはどのようにプレイヤーを助けてくれるのでしょうか?
黄氏:例えば「ルタコン」というオトモは、クラフト能力に優れています。試遊でもご覧いただいたように、さまざまなものを作ることができます。正式リリース後にはボウガンなどを生み出せるようになるほか、クラフトされた設備やアイテムはプレイヤーだけでなく、他の冒険者も使用することができます。

ーー冒険者の固有スキルについて詳しく教えていただけますか?
砂野氏:具体的にお伝えすると、冒険者とオトモの組み合わせが重要になります。
例えば、アイルーを連れている冒険者はアタッカーとして最前線に立ち、ルタコンを連れている冒険者はクラフトを駆使して戦況をコントロールする。そしてメドリーを連れている冒険者は、回復などのサポートを担います。役割分担がベースにあると考えてもらえれば分かりやすいかもしれません。
さらに、各冒険者には通常攻撃に加えて3種類ほどのスキルがあります。基本的には武器種に基づく汎用的なアクションですが、2つ目や3つ目のスキルでは、そのキャラクター特有の効果やアクションが発動します。
加えて、キャラクター固有の奥義や、従えているオトモの奥義も発動できます。特にキャラクターの奥義は、カットシーン風の演出が入り、キャラクターの個性が際立つように意識したポイントです。
ーー試遊の際に複数名の冒険者を選ぶことができましたが、いずれも容姿から能力まで個性が際立っていた印象でした。

砂野氏:最終的には男女比を含め、全体のバランスを取ったラインアップになると思われます。
『アウトランダーズ』特有の新モンスター「融光種」の秘密
ーー本作では、新たに「融光種」と呼ばれるモンスターが登場します。通常の個体と比べてどんな部分が違うのでしょうか?
黄氏:融光種は、本作の舞台である「アイソレシア島」特有のモンスターです。この種は、特有の鉱物である「融石」の影響を受けて変異を起こし、形態が変化した存在として設定しています。
融石とモンスターのエネルギー源には非常に密接な関係があり、その関連性にはまだ多くの謎が残されています。その謎を解き明かしていくことも、本作の大きな楽しみの一つです。
ーー融光種の実装は、今までの「MH」シリーズで見られなかった”新しい生態系を描く”という挑戦の表れなのでしょうか?
黄氏:『アウトランダーズ』はMHシリーズの一端となる作品になりますが、ストーリーなどに直接的な関連性はありません。ですが、エネルギー源が生態系に影響を与え、その環境に適応したモンスターが存在するといった、MHならではの世界観や空気感は非常に大切にしています。

ーー差支えのない範囲で構いませんので、登場予定のモンスターについて教えていただけないでしょうか?
黄氏:現時点でお話することは難しいのですが、11月から開催するクローズドβテスト(CBT)にご参加いただければ、東京ゲームショウとはまた違った、新たなモンスターにも出会えるかと思います。加えて正式リリース時には、プレイヤーの皆様にご満足いただける数のモンスターを実装いたします。
ーーすでに実装されているプケプケや「リオレウス」をはじめ、登場モンスターはどのような基準で選ばれるのでしょうか?
黄氏:新たなモンスターを投入する際に最も重視したのは、”生態系との相性”です。我々は、プレイヤーがモンスターに挑戦していく過程を通じて、少しずつ世界を学び取っていく流れを大切にしたいと考えています。そのため、最初から巨大なモンスターを唐突に登場させるような構成にはせず、段階的に体験が積み重なるように選択しました。
「より多くの人にモンハンを」開発陣の理念と挑戦
ーー目新しい要素がありつつも、本作はシリーズ伝来の”モンハンらしさ”が詰まっていると感じました。改めて、作り手側が「MH」にかける情熱について教えていただけますか?
黄氏:私自身、何年も前から「MH」の大ファンでして。というのも当時、ゲームショップの店員さんに『モンスターハンターポータブル』を強く勧められて以降、シリーズ作品は欠かさずプレイしています。
「MH」で私が特に惹かれているのは”狩猟の体系”です。素材を採集し、足跡を追跡し、モンスターを狩猟する。こうした一連の流れを体系的に体験できる点に強い魅力を感じています。
今回の作品においても、その独特な狩猟体験を新しい形で表現できたと思いますし、私のチームにも同じように「MH」を愛するメンバーが揃っています。
ーースマホで楽しめる「MH」作品を開発するにあたり、試行錯誤した点があればお伺いしたいです。
黄氏:非常に良いご質問をありがとうございます。そもそも「MH」は、奥深さと面白さを兼ね備えた作品です。その魅力をスマートフォンで表現するにあたり、デバイスの性能と、実際に体験できるゲーム性の間で、数多くの取捨選択を迫られました。
しかし一貫して守ってきたのは、「より多くの人にMHを遊んでもらいたい」「スマートフォンという環境にMHをもたらしたい」という思いです。その理念が、開発全体を通じた指針となっていました。
ーーそれでは最後に、リリースを待ち望んでいるファンの方々に向けてメッセージをお願いいたします。
黄氏:本作はモバイル向けの基本プレイ無料タイトルです。クラフトなどの新要素はもちろん、協力プレイが行える機能も盛り込まれています。多くのプレイヤーに気軽に遊んでいただき、その中で「MH」ならではの魅力を存分に感じてもらえれば幸いです。
砂野氏:『モンスターハンターアウトランダーズ』は、「MH」であるために必要な要素をしっかりと守りつつ、新しい挑戦を数多く盛り込んだ作品です。今回の試遊やCBTは、多くの要素を詰め込んだ上で皆さんに触れていただける初めての機会になります。
いただいたフィードバックを真摯に受け止め、必要に応じて改善を行い、最終的なリリースに向けてより良い作品に仕上げていきたいと考えています。ぜひ今後の情報にご期待いただき、皆さまから多くのご意見をいただければと思います。
























