パナソニックの冷蔵庫、久しぶりの“フルモデルチェンジ”でどこが変わった? を実際に確かめてみた

Panasonic時代のニーズに応えた新型冷蔵庫

 2025年春から販売を開始しているパナソニックの冷蔵庫「コンパクトBIGシリーズ HYタイプ」。久しぶりのフルモデルチェンジと言うけど、正直、見た目からはどこが変わったのか全然分からない。だがしかし。中身を見ると、時代のニーズに応えて大きな進化をしていることが分かる。どこが変わったのか、パナソニックに行って確かめてきた。

 新発売の「コンパクトBIG」シリーズ。HYタイプが上位モデルで、価格(公式オンラインストア)は551Lモデルが30万6900円、501Lモデルが28万7100円、450Lモデルが26万7300円。EYタイプは下位モデルとなり、省エネ性能が劣ったり、霜つき抑制冷凍やナノイーXなど一部の機能を搭載しない。RYタイプは片開きドアモデル。

幅が小さくなったのに容量50Lもアップ

 結論から言うと、進化のポイントはネーミングに記されている。コンパクトなのに庫内が広くなった、ということ。

 2016年製501Lモデルの『NR-F502V』の設置サイズが幅68.5×奥行き69.2cmだったのに対し、新製品の『NR-F55HY2』は幅65.0×奥行き69.9cmと幅が小さくなったにもかかわらず、容量は551Lと約50Lアップした。『NR-F502V』と同じ501Lサイズである『NR-F50HY2』ならば、幅65.0×奥行き65.0cmと奥行きも短くなり、一般的なシステムキッチンと同じ奥行きでキッチンがスッキリする。

551Lモデルでは幅3.5cm縮小しながら容量は50Lアップ。
501Lモデルは容量が変わらないが幅と奥行きが縮小。

 近年、日本の住宅は地価高騰・材料費高騰の影響により、1戸あたりの床面積が減少している。その一方で、お取り寄せやふるさと納税、まとめ買い、冷凍食品のクオリティアップなどにより、冷凍食品の消費量は増大中。そのため冷蔵庫の容量不足、特に冷凍庫の容量不足に対する不満が高まっている。

 今回、パナソニックではそうしたユーザーの不満を解消するため、同じスペースでよりたくさんの食材を入れられる冷蔵庫を開発した。

 地味な変化と言うなかれ。このコンパクトBIGを実現するために、さまざまな新技術が投入されている。

 ひとつは、冷蔵庫の壁面の薄型化。単に薄くするだけでは断熱性が下がり、強度も下がる。そのため、まず、断熱用ウレタンの素材を新たに開発した。従来のウレタンは充填するとすぐに発泡・硬化が始まってしまい、狭い場所では根詰まりを起こしてしまうため、充填できる隙間には限りがあった。新素材は発泡・硬化する時間を若干遅らせることが可能となり、流動性が向上したことで狭い隙間にも充填できるようになった。新開発のウレタンは断熱性も13%ほど上がっているため、充填する幅が狭くなっても総合的な断熱性は変わらない。

右が新製品、左が旧製品。新製品には真空断熱材が多く使われ、特に冷凍室のウレタンが薄くなっている。

 2つ目が、真空断熱材の搭載箇所を増やしたこと。真空断熱材は空気を抜いているため、かなり固い。折り曲げができないため、これまではカーブしている箇所には搭載できなかった。今回、新工法を導入することで、断熱性能を損なうことなく、真空断熱材を折り曲げることが可能になり、コーナー部分にも搭載できるようになったという。

こうした真空断熱材の折り曲げ加工も従来はできなかった。

 このほか、冷媒循環パイプのレイアウトを変更したり、放熱システムも変更して放熱パネルを廃止するなど、外板と内箱の間の部品を減らすことで、少しずつ庫内スペースを広げていったのだ。

冷媒循環パイプのレイアウト変更によりスペースを確保。
様々な工夫によりドアの厚みは40%減少、背面と冷却器の間は44%減少と、大幅に厚みを縮小することで庫内スペースの拡大が実現。

ユーザー目線に立って日常の使い勝手を大きく改善

 次に、料理研究家の島本美由紀さんが実際に新製品を使ってみて、ユーザー目線で今回の改良ポイントを解説。「まず、冷蔵室の一番下の棚板の半分が外せるようになったんです。これまでは折りたたんで背の高いスペースを作るだけだったのですが、新製品では半分取り外し、下にさらにもう1段を作ることができるようになりました。これによって、小物のスペースを確保しながら、鍋などの大物を手前に置けるようになったんです。これはすごくいい」。

冷蔵室の下から2番目の棚の前半分を外して、その下に棚をもう1段作ることができる。

 更に電気代節約のための嬉しい機能も搭載されていると、島本さんは説明する。「これまで、冷蔵室一番下のチルドルームの食材を取り出す時には、冷蔵室の扉の両方を全開する必要がありました。片方の扉を開けただけでは引き出しが引っかかりますよね。それが、新製品ではドアの下段2つのポケットを入れ替えれば、片側の扉を開けるだけでチルドルームが引き出せるようになったんです」。肉や魚を取り出す時に、片扉を開けるだけでよいので、冷気の流失を最小限に抑えられ、電気代を節約できる。

一般人より多く冷蔵庫を使う料理研究家ならでは目線で注目ポイントを解説する島本美由紀さん。
一般的に、冷蔵室最下段の引き出しは左右のドアを全開にしないと中の食材を取り出せないが、ドア側のポケットの上下を入れ替えることで、片側のドアを開けただけで引き出しが開けられる。

 冷凍室には食品ロスを防ぐ機能を搭載している。上段深型ケースに左右分割スライド式のケースカバーを搭載したものだ。右・左の片側だけ開けられるので温度変化から食材を守ることできる。このケースカバーには小さな穴が無数に空いており、引き出しを閉めた際に無駄な湿気を逃すことで、冷凍している食材に霜がつくのを防ぐ効果もある。

冷凍室最上段のケースにスライド式のカバーを搭載。開けしめの際に冷気が逃げることを防ぎ、温度変化による霜つきを抑える。小さな穴が湿気を逃がす効果もある。

 冷凍庫は開け閉めするたびに温度の上下を繰り返す。その時、食材の一部が解凍して水分を放出、そして再凍結することで霜がつく。その時、食材自体は乾燥してしまい、食べられなくなってしまう。冷蔵庫本体の霜取り運転も冷凍食品の霜つきに大きな影響を与えるが、それを防ぐため開発したのがケースカバーだ。このケースカバーは外気を遮断しつつ中の冷気を逃さないことで温度変化を抑え、さらに湿気だけを外に出す構造となっているため、霜つきが抑えられるのだ。なお、ケースカバーは1枚ずつ取り外すこともできる。

霜つき抑制機能で冷凍したミックスベジタブルは一粒一粒がバラけているが、抑制機能なしで冷凍したものは表面に白い霜が多くつく、霜によって固まってしまっている。

 今回のフルモデルチェンジした冷蔵庫は、見た目のインパクトはほとんどないが、中身の進化は大きい。容量アップや冷凍の霜つき防止と、ユーザーが冷蔵庫に対して日頃抱えている不満を解消したもので、一見して地味だが、これぞ待っていた改良と呼べるだろう。

<NR-F55HY2>
定格内容積:551L
 冷蔵室:定格内容積275L<食品収納スペースの目安212L
 (うちパーシャル/チルド切替室17L)>
製氷室:19L<4L>
クーリングアシストルーム:31L<14L>
冷凍室:112L<71L>
野菜室:114L<83L>
 年間消費電力量:266kWh/年(50Hz)・266kWh/年(60Hz)
外形寸法(幅×奥行×高さ):650×699×1850mm
据付必要奥行寸法:699mm
質量:106kg
https://panasonic.jp/reizo/products/NR-F55HY2.html

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