ボカロP・夏山よつぎが語る“海外遠征”の魅力 異なる環境へ飛び込んで見えた「新たな創作の糸口」

グッズを通じて、言語の壁を越えて“好き”を共有できる
――あらためて海外のファンと対面してみて、今後の活動に向けた気づきはありましたか?
夏山:実は今回、あまりグッズを持って行っていなかったので、ちゃんとグッズがあるといいなとは思いました。というのも、グッズって、言語の壁を越えて“好き”を共有できるものじゃないですか。実際現地でも、なみぐるさんや南ノ南さんのグッズを身につけている人がいて、それを見れば言葉を交わさなくても「この人はこのボカロPさんが好きなんだな」って分かるじゃないですか。それを実感したので、今後はグッズも出していきたいなと思いました。それこそ、私物にサインを書いてほしいという申し出も多かったんですけど、ちょっと申し訳なかったですし。
――ちなみに夏山さんは、今回が初の遠征だったかと思いますが、今後についてはいかがでしょう。
夏山:はい。海外遠征は初めてでした。行く前はちょっと怖い気持ちもあったんですけど、実際に行ってみたらみんな温かくて。一歩目としては大成功だったと思うので、今後も普段会えない人がいる場所に行って、直接お会いしたいなと思いました。
――特に気になる国は?
夏山:韓国に行きたいです。YouTubeのコメントとかで、もちろん英語もあるんですけど、韓国語のコメントもちょくちょくあったりして、その人たちに会いに行きたいなと。あとは、本場の韓国料理を食べてみたい(笑)。中国ではごまだんごが一番美味しかったんですよ(笑)。普段口にしないものを食べられるのも、遠征の楽しさなんだなと今回思わされましたね。中国にもまた美味しいものを食べに行きたいですし、いろんな国の方と交流したいですね。
普段と違うクリエイター仲間との遠征で「新たな創作のアプローチ」を得る
――夏山さんの海外遠征の一歩目となった『Strawberry Music Festival』の出演は、クリエイターが世界で活躍できる機会の創出を目的としたクリエイター連携プログラム『Asia Creators Cross』というドワンゴさんとの取り組みから始まっているものです。『Asia Creators Cross』に対して抱いている印象はありますか?
夏山:今回のような大きなフェスへの海外遠征は個人では絶対にできないことなので、クリエイターとしてありがたい機会だったなと思います。日本のクリエイターと交流できるのは、海外のファンの方々にとっても数少ない貴重な機会だと思うので、本当にとてもいい試みだなと感じますね。
――他のボカロPの仲間たちと、海外遠征などが話題にあがることはありますか?
夏山:周りのボカロPも台湾であったり海外の即売会に参加していて、「現地はこんな感じだったよ」という声を聞いたりします。最近は特に海外でのイベント参加が増えていると思いますし、シーン全体としてより海外への興味が高まっている感じがしますね。現地に行った人たちからの声を聞いて、また別の人が海外に行ってみたいという風になっている気がして、良い傾向だなと思います。自分も今回、すごくいい経験をさせてもらったので、行ってみたいけどちょっと怖いなと思っている人がいたら、全然そんなことないよと背中を押してあげたいです。
――今回はTeddyloidさん、なみぐるさん、南ノ南さんとの遠征でしたが、国内遠征も含めて、仲間と一緒に遠征をするというのは今まで経験がありましたか?
夏山:国内だと、旅行がてら仲間内で行ったりすることはありました。普段はネットでコミュニケーションを取ることが多いので、一緒にいると普段しないような話もできて良かったなと思います。しかも今回は全然違う音楽性の人たちとの遠征だったので、話していて音楽面でも試したいことが増えました。普段なかなか他のクリエイターと関わらないので、いい経験でしたね。
――試したいことと言うと、例えばどんなことがありますか?
夏山:南ノ南さんが、ネタ曲を作るにあたってコンセプトをひとつに絞ることを意識している、というお話をされていたんですけど、それってネタ曲以外にも言えるんじゃないかなと思ったんです。いろいろごちゃごちゃ言うよりも、本当に伝えたいことをひとつに絞って楽曲の中で表現する方が、聴く側は受け取りやすいのかなと思って。曲を作るとき、自分は結構いろいろ詰め込むタイプなので、逆にそぎ落とすアプローチは今後試してみたいことだなと思いました。
――ファンとの交流からグッズを作りたいと思ったり、クリエイター同士で話して試したいことができたり、良いこと尽くめですね。
夏山:本当にそうですね。この遠征の中でやりたいことが増えて、モチベーションも高まりました。今後は「今までとは違った夏山よつぎ」を少しずつ出していきたいですね。
第10回目を迎える『ボカコレ』に対して思うこと
――創作の話でいえば、2020年の冬から夏山さんが参加されている『The VOCALOID Collection』は、次回で10回目の開催になります。初回から参加し続けている夏山さんから見て、変化したと思う部分や雰囲気について感じることはありますか?
夏山:『ボカコレ』は初回から毎回何らかの形で参加させてもらっているんですが、最初の方はランキングがあるにしてもトップ30だけでしたし、ランキング祭というよりは同時投稿祭みたいな感覚が強くて。初回はちょうどそのタイミングで出そうと思っていた曲があったので、「『ボカコレ』っていうのがあるんだ」くらいの気持ちで投稿したんですけど、回を重ねるごとにどんどん投稿数も多くなって、副賞とかも増えてきて。ユーザーの意見もしっかり反映されていてどんどん良くなっている感じがするので、毎回「過去一の回だったなあ」と思っています。
あと個人的に『ボカコレ』があることで助かっている部分としては、MVを公開する口実になっているんですよ。クリエイティブって、こだわろうと思えばどこまでもこだわれるので、納得できないままいつまでも世に出せないこともあるじゃないですか。そういう人や、MVを出したいけど腰が重くて動き出せない人に対しても、ある種の締め切りとなってくれている。「この日までに完成させるぞ」と思わせることに大きな意義があると思っています。
どんなにいい曲でも、パソコンの中で眠り続けていたら誰にも聴いてもらえないので、そうやってお尻を叩いてくれるのは助かります(笑)。世の中の楽曲の母数が増えるので、リスナーの視点からも嬉しい祭典だなと思いますね。
――夏山さんとしても、『ボカコレ』に対しての思いは強くなっていますか?
夏山:そうですね。『ボカコレ』自体、回を重ねるごとに、大きな舞台になっているな、という実感はあります。お笑いの賞レースじゃないですけど、そこで注目されることで人生の起点になりやすくなったというか。いろんな企業の方もこっそり見ていたりすると思いますし、将来音楽を続けていきたい人にとってもすごくいい舞台になっていると思いますね。
――夏山さんは一度ボカロPの活動をお休みされているじゃないですか。それから2020年に復帰して『ボカコレ』に出るようになっていく中で、ボカロPとして専業でやっていけるかもと思ったタイミングはどのあたりでしたか?
夏山:それでいうと、正直まだ不安はあります。専業でやっていけそうというよりは、「今しかできないことだな」という気持ちが大きくて。就職しながらやっている人もいると思うんですけど、自分の場合、それでどっちも中途半端になるよりは、一回行けるとこまで行ってみたいという気持ちがあったんです。なので、見切り発車気味ではあったんですけど、もう後には引けないぞ、という気持ちがあるから頑張れている部分もあるんです。
――そういう意味では、ドワンゴの取り組みは「より大きな舞台で羽ばたくチャンス」になりますよね。ボカロPとしてやっていきたい人にとってはこれ以上ない環境が揃っていると思います。今後それが広がっていくであろう中で楽しみなことや、期待することはありますか?
夏山:これまでの日本の音楽シーンって、海外シーンの音楽を取り入れて、それを日本流にアレンジするという流れが主流だったと思うんです。なので、個人の主観としては世界の音楽シーンの最先端から数歩遅れているんじゃないか、という印象があって。
ただ、ボーカロイドによる楽曲制作の個人化であったりインターネットの発展によって、「スピード感のある音楽シーン」になってきていると思っていて。そのおかげもあって、日本シーンから海外シーンに対する影響も増えてきたのかなと思っているんです。そうやって双方向の作用になることによって、これまで以上に世界の音楽がより豊かになっていくことに期待しています。
『The VOCALOID Collection』&『Asia Creators Cross』特集はこちら
『The VOCALOID Collection』公式HPはこちら
■夏山よつぎのパフォーマンス映像をチラ見せ!
■「Asia Creators Cross」について
日本のクリエイターが世界で、世界のクリエイターが日本で、相互に活躍できる機会の創出を目的としたクリエイター連携プログラム。
本イベント・中国最大級の音楽フェス『Strawberry Music Festival』におけるクリエイターの出演もその一環となっています。
今後も、世界中の影響力のあるさまざまなイベントを通じて、クリエイターがより多くのファン、共に制作を行う仲間、クライアントとボーダレスに出会える場を広げ、コミュニティの構築やリソースの共有、ネットワーキングを促進していきます。
■『The VOCALOID Collection ~2025 Summer~』
2025年8月22日(金)〜8月25日(月)開催決定!
■関連リンク
夏山よつぎ公式X

























