ボカロP・夏山よつぎが語る“海外遠征”の魅力 異なる環境へ飛び込んで見えた「新たな創作の糸口」

中国の音楽レーベル・モダンスカイが主催する、中国最大級の音楽フェス『Strawberry Music Festival』。5月には中国・東莞および北京にて本フェスが開催され、日本のJ-POPシーンからも多数のアーティストが出演した。そのなかで、初VOCALOIDシーンで活躍するクリエイター「The VOCALOID Collection TIME」が開催された。
出演したのはVOCALOIDシーンでも注目を集める、南ノ南、なみぐる、夏山よつぎのボカロP3名に、音楽プロデューサー/DJアーティストとして名高いTeddyLoidの計4名。これは「ニコニコ超会議」の中心企画である「クリエイタークロス」のグローバル版としてスタートした「Asia Creators Cross」の一環で、海外・アジア圏へのボカロ文化の拡大を推進するものだ。
今回は、『Strawberry Music Festival』へ出演した夏山よつぎに、中国遠征を終えての率直な感想を聞いた。熱量の高いファンや、クリエイタ-仲間であるボカロPたち、そして大先輩のDJ……多くの刺激を受けて見えてきた、新たに挑戦したい“創作のスタイル”とは。
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「VOCALOIDには言語の壁を越えるエネルギーがある」
――まずは『Strawberry Music Festival 2025』に参加された率直な感想を教えてください。

夏山:楽しかったという言葉に尽きますね。他のステージや会場内の屋台もちょっと見たんですけど、全体的に遊園地みたいな雰囲気で、お客さんとして来ても楽しそうだなと思いました。現地のリスナーの方々との交流もできたので、本当にいい機会でしたね。
――会場に向かう前はどんなイメージを持っていましたか?
夏山:本当に未知数というか。自分の曲はもちろん、ボカロ自体がどのくらい認知されているのかよく分かっていなくて。特に今回はロックフェスのような会場でしたし、普段日本で出演しているイベントともまた違ったジャンルだったので、セットリストも結構悩んだんです。ボカロだけでなくアニソンも入れてみたり、いろんなジャンルの曲を入れて、ある種「日本代表」みたいな気持ちで臨みました。
――お客さんの反応としては、どのジャンルの楽曲に手ごたえを感じましたか?
夏山:やっぱり初音ミクの楽曲は反応が良かったですね。ミクの法被を着ている人もいたりして、ボカロ曲自体がすごく聴かれているんだな感じました。自分の曲でコールアンドレスポンスをしてくれた人もいて、そういう意味ではもっと自分の曲を入れても良かったなと(笑)。
――中国でのボカロ人気に関しては、肌感としてはどんな風に感じられました?
夏山:中国のファンは特定のボカロPを推しているという感じではなくて、初音ミクやVOCALOIDそのものが好き、みたいな聴き方の人が多いのかなというのは、今回の『Strawberry Music Festival』を通して感じたことでした。
日本と異なる、中国ファンの価値観
――フェス全体を振り返るとJ-POPシーンの出演者もいて、普段出演されるボカロ系のイベントとは言語も価値観も異なる場所だったと思います。特にここが違ったなと感じる部分はありました?
夏山:特に違いを感じた部分は、お客さんのノリ方ですね。日本だとこちらから促すことでその通りに手拍子とかをしてくれることが多いんですけど、中国のリスナーはみんな自由に声を出したり、腕を振ったりしてくれて。各々が各々の楽しみ方をしている感じで、それはそれでよかったですね。
あと日本語でコールアンドレスポンスをしてくれたり、日本語でMCを話しても伝わっている感覚があったり、VOCALOID文化には言語の壁を超えるくらいのエネルギーがあるんだなと、あらためて感じました。正直ステージに上がる前は、中国語もわからないし少し不安ではあったんです。けれど、実際に立ってみると日本でやっているときと同じくらいの安心感があって、のびのびとプレイできました。
――僕たちも現地で取材をしていて、本当に熱量が高いファンが多かったという印象を受けました。夏山さんも終演後にファンに囲まれたり、サインを求められたり、現地のファンとも直接コミュニケーションを取っていましたね。中国ファンの雰囲気や特徴はいかがでしたか?
夏山:自分含め、日本人であれば遠慮しちゃいそうなところでも、「こうしてほしい、ああしてほしい」みたいな主張をはっきり言う感じがあって、そこは見習っていきたいなと思いましたね。
「もっとあなたの曲を流してもよかったのに」みたいに言ってくれる人もいましたし、サインひとつとっても「ここにこういう風に書いてほしい」といったように細かく要望を伝えてくる人が多かったです。写真を一緒に撮ってほしい、とか、サインをして欲しいとか、「駄目かもしれないけど、一回お願いしよう」みたいなマインドがある感じがしました。
あとは「『マジミラ(マジカルミライ)』行くよ」とか、「この間の『超ボカニコ』観たよ」って言ってくれる人もいて、結構日本に来てくれている人もいるんだなと。ちょっと意外でもありましたね。



















