バーチャル美少女ねむ × 崎村夏彦が語る、メタバース上での「分人とアイデンティティ」が実現する未来

バーチャル美少女ねむ×崎村夏彦対談

評価システムが確立されると、分人の経済活動はより広がる

ねむ:課題はたくさんありますが、こうした未来を語ることがムーブメントになるかもしれません。分人経済が本格化すれば、オンラインでの信用スコアや評価システムが確立できるようになります。今までは中の人の身元を隠したままだと信用を積むのが難しかったですが、履歴として取引がデータに残り、信用が積み重なれば、実際に生計を立てることができそうですよね。分人としての幅もぐっと広がります。

崎村:作家さんもそうですね。ペンネームやバーチャルキャラクターで信用を積むことができる社会が来ると、本名で活動していない方たちもメリットを享受できるようになるはずです。

ねむ:私の活動は、分人としてどこまでいけるか試す実験の意味もあるので、敢えて現実では絶対に使えない「バーチャル美少女ねむ」というおかしな名前で活動してきました。意外とできることも多かった一方で、公的団体や役所では認められづらい側面もありました。

崎村:それは名前、もしくはアバターをかぶっていることが影響しているのでしょうか?

ねむ:どちらもあると思います。リアルの顔を見せていない人は信用できないという意識があるかもしれません。公的機関では、やはり現実の人物として顔を出していることが求められることもまだまだ多いです。でも、本を出したことがきっかけで、出版業界で動きやすくなった面はあります。出版業界では、もともとペンネームで顔出しナシでの活動に対して比較的フレンドリーなので、信用が積みやすい環境が整っています。

崎村:ちゃんとした出版社から本が出ていると、権威付けとなって、名前の信用度が増しますからね。

ねむ:それに加えて、私の場合一時期テレビにたくさん出させて頂いたのも、仕事の依頼をもらいやすくなったきっかけの一つのかもしれません。ただ私はすごく運が良かっただけなので、それを一般化し再現性をもたせる方法を考えていきたいんです。

崎村:運は重要ですよ。運を掴んで律していくことができる人のことを、“先駆者”というんです。先駆者が歩いた轍が道になるんです。

「分人経済」の確立により、“真のインターネット時代”が始まる

ねむ:10〜20年後くらいの少し先の未来を見据えて、早く分人経済のしくみを確立する必要があると思います。せっかくインターネットを通じていろいろな自分で生きていくことが当たり前になりつつあるのに、経済と接続されていないことで、“インターネットの中で生きていくこと”がまだできていないと感じているんです。分人経済が確立すると、本当の意味で「生きていくことのできる」真のインターネットの時代が始まると思います。お話を聞いていても、技術的な仕組みは整っているとわかったので、法律や運用が変わるために、社会全体の理解が必要ですね。そのために、バーチャルに生きる人たちが、もっとその存在感を示していくことが大切だと思います。日本はソーシャルVRの住人のプレゼンスが高い国ですし、日本が次世代のインターネットをリードできる可能性があると思っています。少しずつでも、この動きを広めていきたいです。

 先生、今日はありがとうございました。インターネットでのアイデンティティを作ってこられた方に、「バーチャル美少女ねむ」というおかしな名前で真面目な話をする機会を頂き、感動しています。

崎村:私もファンとしてお話しできて光栄です。難しいところも多いですが、解決しがいがある問題も多いと感じています。少しでもお手伝いができればと思っています。

(出典:「メタバースでのアイデンティティ」

安野貴博×バーチャル美少女ねむが考える、メタバースとAIが変える世界のカタチ

今回はバーチャル美少女ねむと安野貴博が対談を実施。メタバースと人間社会のあり方について語っていく。

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