2024年、しなこが大ブレイクをした理由とは 動画プロデューサーが明かすASMRや音楽活動の“ヒット戦略”

精度を高めていったASMRという武器
ーーここからは、よりASMRをどう作り上げていったかについて教えてください。
吉川:続けていくなかで変えていった部分はたくさんあるのですが、たとえばサムネイルだったら、“伸びる型”というのが決まっています。画面の両端は絶対埋める。顔は大きく、顔と食べるもので画面を構築する、とかですね。あとは全体的に色彩を豊かにするようにしています。タイトルはできるだけシンプルに。また、ASMRはグローバルコンテンツなので、インドなどユーザーの上位の国の言語には対応するようにしています。
動画の内容でいうと、なるべくいろんな音を出すことを意識しています。たとえば板チョコアイスを食べる動画だったら、途中でホイップクリームをつけたり、カラフルスプレーをかけたりして、音に変化を出します。うまく口のなかで音が出ないときは、音だけ別録りするときもありますね。
ーーASMRというジャンルひとつでも、こんなに工夫する点があるんですね。
吉川:あとこれはASMRに限ったことではないのですが、動画を最後まで見てもらうように意識しています。いまの時代って、どのSNSも時間の取り合いだと思うんです。ユーザーにできるだけ長くそのアプリを使ってもらうことが大事なので、YouTubeも長時間動画の方がレコメンドされやすくなったりするんです。そしてそのなかでどれだけ見てもらえたかが、重要になってきます。たとえばサムネとタイトルを大袈裟に表現したいわゆる“釣り動画”にして再生されたとしても、中身が伴っていなければ動画の視聴維持率は保てません。
ーーなるほど。しなこさんのチャンネルでいうと、その点はどのような工夫をしたのでしょうか。
吉川:先ほどお話した、いろんな音を出すというのも、動画を途中で離脱してもらわないようにするための工夫のひとつです。あとは途中でCMを挟んだり、動画の最後にNGシーンを入れたりしています。
ASMRから音楽活動へ
ーー昨年からしなこさんは音楽活動も精力的に行っていますよね。2024年11月に投稿された「しなこワールド」は3140万回再生(2025年2月時点)と、チャンネル史上最高の再生回数を叩き出しました。
吉川:実は音楽活動は、かなり前から構想していたんです。ただ制作にかなりの労力がかかるのと、音楽に対する知見を持った人がいなかったので、まずは知名度を上げることを目標にしてASMRに力を入れていました。
基本的に音楽制作はしなこさんを中心に進んでいるのですが、クリエイターのあぃりDXさんがプロデュースをしてくれていることが大きいですね。いろんな方から「音楽活動をしませんか」と声をかけられてはいたのですが、やはりしなこさんの信頼が置けるあぃりDXさんがサポートをすると決まってから、本格的に動き出しました。
ーー今後、しなこさんの活動で計画していることなどはありますか?
吉川:しなこさんが「原宿を盛り上げたい」という目標を掲げているので、そのためにパーソナリティの強化をすることが今後の課題です。しなこさんの動画を見たことがある、音楽を聴いたことがあるだけではなくて、原宿に来てグッズを買いたい、店舗に行ってみたいと思ってくれるような熱量のあるファンを増やしていきたいです。
あとは、3Dキャラクターが作れないかなと考えています。そもそも本人がいないとコンテンツが作れないのって、すごく非効率だと思っていて。しなこさんの見た目はキャラクターとの相性もいいと思いますし、グッズの幅も広がるので、キャラクターの制作はいいなと思っています。


















