ブックオフ『レコードプレーヤー』を本音でレビュー 見た目は良いが実用性には課題も残る
リユースショップ「BOOKOFF」等を運営するブックオフコーポレーション株式会社(以下、ブックオフ)が、11月3日の「レコードの日」にちなみ、オリジナルデザインの『ポータブルレコードプレーヤーブックオフエディション』を数量限定販売した。価格は9,878円(税込)。ブックオフでは近年のレコードブームに応え、現在423店舗でレコードの販売・買取を行っており、今回のオリジナルプレーヤーの販売に至ったという。今回はその使い勝手をレポートする。
メディアとしてのビニール・レコード(バイナル)は40年代から80年代にかけて世界中で普及した。のちにCD・ストリーミングなどにその座を明け渡したが、2013年以降リバイバルが起き、現在は再び世界中で流通が活発になっている。リユースの売買はもちろん、たくさんの新譜がレコードでリリースされているという状況だ。
レコードは非常に古いメディアではあるものの、音質において現代のメディアに引けを取らないという点で特殊だ。たとえば映像におけるVHS(いわゆるビデオ)とBlu-rayのように「古い=画質が悪い」ということにはならず、特にレコードとCDの過渡期だった80年代の音源においてはレコードのほうが音が良い、と語られる作品も多数ある。
過去から現在までレコードはその高い音質や再生のスタイルでリスナーを魅了してきた。リユース品の販売を行うブックオフがその再生プレーヤーを販売するというのはうれしい展開である。
早速外見を見ていこう。プラスチック製の外見はチープだが、配色も相まってポップな質感だ。ブックオフのキャラクター、「よむよむ君」のデザインもかわいい。
背面には各種スイッチやポートがあり、左から回転数切り替えスイッチ、電源切り替えスイッチ、外部出力端子(ステレオミニ)、USBメモリ挿入口、マイクロSDカード挿入口、電源用USB-C差し込み口。ポートを見るとわかるように、本機には再生したレコードをUSBフラッシュメモリ・マイクロSDカードにMP3(128kbps)で録音できる機能がある。電源がUSB Type-Cなのもありがたい。
7インチ盤再生用のアダプターも付属している。また、トップの写真にも掲載した「よむよむ君 EPアダプター」の出来が良い。「よむよむ君 EPアダプター」は本機の予約購入特典として同梱されたもので、現在は単品での販売も行われている。
本体前面にはモノラルスピーカーも搭載。聴こえればOK程度の音質だが、それなりの音量が鳴るのはありがたい。サイズは292mm x 122mm x 77mmで、重さは約620gと軽量で持ち運びも簡単だ。写真では12インチレコードを置いたが、サイズ感が伝わるだろうか。
アームの下部にあるコントローラーはUSBフラッシュメモリ・マイクロSDカードへの録音時に使用するものだ。録音した音源を本機で再生することもできる。
本機はUSB Type-Cからの給電のほか、単三電池4本でも駆動する。本体の軽さも相まって、非常にポータビリティに優れていると感じた。携帯する際にはUSB Type-Cで給電できる携帯バッテリで給電すると、より軽くて便利かもしれない(メーカーの意図する駆動手段ではないだろうが)。
早速手元のレコードを鳴らしてみる。スピーカーの音質には期待できなさそうだったので、ヘッドフォンで試聴した。
音質はローがあまり出ず、ミドル帯域はこもっており、ハイはキンキンとしたサウンドで、お世辞にも良好とは言えない。1万円を切る低価格プレーヤーにリッチな音質を求めるのも酷な話だが、たとえば何も知らない初心者が初めて手に取るプレーヤーが本製品で「昔のメディアの音質って、こんなもんなのね」と思われてしまわないかが心配だ。初心者が最初に買うプレーヤーとしてはまったくおすすめできない。また、しばしば針飛びも発生した。本体が軽く振動にも弱いので、重く分厚い冊子の上など、安定した場所に置いて再生したい。
再生音質は上記の通り、録音するMP3の音質も128kbpsと、音質の部分で他製品に対する優位性は無く、その上で本製品の用途を考えてみると、音楽的音質を求めないレコード、たとえば落語のレコードなんかを聴いてMP3にコンバートするにはいいかもしれない。また、あえて「悪い音質」をサンプリングするなどの用途が浮かぶ(これは近年の「ローファイ」のブームを考えるとまったくバカにできない用途である)。
いっそ、その高いポータビリティを活かすために携帯用のハードカバーも作って一緒に売ってくれたらよかったのにと思う。この仕様では本体上部のアームやターンテーブルを保護する方法がなく、外に持ち出すには勇気がいる。たとえば友人のミュージシャンは全国ツアーのたびに各地のレコード・ショップでレコードを買うので、それをツアー先で試聴するために携帯用のプレーヤーを持ってツアーに行くという。こういう用途なら音質は二の次なのだから、ハードカバーがあれば便利に使えそうだ。ブックオフさん、今からでもカバーを作ってみませんか?