正式タイトル決定の『無限大Ananta』 レッドオーシャンを生き抜くカギは“協力・対戦要素”に?
NetEase Gamesは11月29日、開発中の新作タイトル『Project Mugen(仮)』の正式タイトルを『無限大Ananta』に決定したと発表した。
中国大手が送り出す新作RPGとして、発表直後から話題を集めてきた同タイトル。正式名称の決定には、リリースが近くまで迫っていることを感じさせられる。はたして『無限大Ananta』は前評判に違わないインパクトをマーケットに与えられるだろうか。求められる要素を考えていく。
NetEase Gamesによる新作オープンワールドアクションRPG『無限大Ananta』
『無限大Ananta』は、NetEase Games傘下のThunder Fire Studioが新たに設立したゲームスタジオ・NAKED RAINが開発を手掛ける都市型オープンワールドRPGだ。プレイヤーは、ユーモアと冒険、謎が絶妙に融合したユニークな都市「新啓市」を舞台に、「インフィニットトリガー」と呼ばれる超能力者として、街中にあふれる超常現象(カオス)の解決へと向かっていく。
特徴となっているのは、現実の都市景観をリアルに描写したオープンワールドの世界と、シネマティックでスリリングなアクションバトル。ゲーム内では、パルクールやスウィング、壁登りといった移動能力を駆使し、街中を駆け巡れるほか、存在するさまざまなオブジェクトに超能力を使ってインタラクトすることもできる。
『無限大Ananta』は、2023年8月に『Project Mugen(仮)』として開発の進行が発表されており、当初から、都市を舞台にした世界観や、自由かつダイナミックなアクション性、グラフィックの美しさといった点が注目を集めていた。今回のアナウンスにあわせ、発売元のNetEase Gamesは、ティザートレーラーを公開。さらに12月5日には、最新のゲームプレイトレーラーも配信となっている。
『無限大Ananta』は基本プレイ無料・アイテム課金型で、PlayStation 5/PC/モバイルに対応する。配信時期は現時点で未定。12月5日には事前登録がスタートした。
レッドオーシャン化するマーケット。成功のために求められるもの
ゲーム業界ではここ数年、『無限大Ananta』のようなゲーム性を持つタイトルの発表/リリースが相次いでいる。miHoYoの『原神』(2020年9月サービス開始)や、Hotta Studioの『Tower of Fantasy』(同2021年12月)、KURO GAMESの『鳴潮』(同2024年5月)などはその一例だ。より広義にとらえると、おなじくmiHoYoが開発/発売した『ゼンレスゾーンゼロ』(同2024年7月)もおなじ文脈上にあるタイトルだと言えるだろう。近い将来には、Hypergryphの『アークナイツ:エンドフィールド』もリリースを控えている。
アクションRPGに分類されるプレイ体験、オープンワールドの世界観、アニメタッチのグラフィックといったゲーム性に関わる部分以外で、これらすべてに共通するのは、「中国から生まれた、基本プレイ無料・アイテム課金型のマネタイズモデルを持つモバイル向けタイトルである」という点だ。一様にPCやCS機での同時展開、時間差での移植が行われてきたが、ローンチ時には共通してAndroidとiOSに対応した。
本稿で取り上げている『無限大Ananta』もまた、中国にルーツを持つNetEase Gamesとそのグループ企業が開発/発売を行っている。リリース時点からモバイルプラットフォームに対応する点も、上述の作品たちとの共通点である。同タイトルが発表直後から継続して注目を集めているのは、そうした先達たちの牙城を切り崩すだけのポテンシャルを秘めていると考えられているからにほかならない。「『ゲーム市場におけるキープレイヤーの1人』が満を持して放つ、トレンドの潮流を押さえた1作」。そのような性質から、『無限大Ananta』には大きな期待が寄せられている。
一方で、一連の作品たちがひしめき合うこのマーケットは、レッドオーシャン化の様相を呈しつつある。トレンドの火付け役として、リリースから4年以上が経過してもなお、好調を維持している『原神』を筆頭に、それぞれがパイの奪い合いを続けている現状だ。『無限大Ananta』の成功の行方は、いかにして人気作品たちのフォロワーを奪えるかにかかっていると言っても過言ではない。特にライブサービスゲームのカテゴリにおいては、ユーザーに選ばれた1つのタイトル“だけ”が長くプレイされやすい傾向にある。そのためにことさら競争が激化しているという、この分野ならではの背景もある。
前評判どおりの成功を掴むために、『無限大Ananta』にはどのようなゲーム体験が求められていくだろうか。先駆者にならうのであれば、それは「良質なシナリオ」「プレイヤーのスタイルを追求できる戦略的なバトルシステム」「競合と比べて遜色のない、もしくはそれらを凌駕するアクション性」「全方位的な自由度の高さ」となるだろう。しかしながら、このような要素は、勝負するための最低条件である。すべて満たして初めて、上述の作品たちがひしめくレッドオーシャンに飛び込む権利を獲得できると言っても過言ではない。だからこそ、同タイトルは「オープンワールドの世界」「ユニークな戦闘体験」「現代的かつ幻想的なアートディレクション」「個性あふれるキャラクターたち」「ダイナミックな移動アクションの数々」といった点を、自身のセールスポイントに掲げているのではないだろうか。
そうした観点に立つと、本当に必要なのは、「長くプレイを続けてもマンネリしないゲームデザイン」や「抱えている魅力を増幅してくれるような工夫」なのかもしれない。たとえば、他のプレイヤーとの連携は、双方を満たすアイディアの例となるだろう。オンラインでの協力/対戦要素は、近年のさまざまな作品に盛り込まれているアプローチのひとつである。こうした取り組みによって、上述のハードルをクリアすることができれば、群雄割拠の勢力図に割って入れる存在となれるのではないだろうか。
ジャンルは大きく異なるが、『ファイナルファンタジーXIV』や『あつまれ どうぶつの森』のような、プレイヤーコミュニティの形成と、それぞれのゆるいつながりのようなものが体現できれば、後発として発売される意義は増大し、自ずと競争力、求心力も高まっていくのかもしれない。
『無限大Ananta』は、レッドオーシャン化するマーケットのなかで独自の立ち位置を示し、成功を掴み取ることができるだろうか。先にも述べたとおり、同市場では中国の存在感が増し続けている。個人的には、日本のゲームスタジオからこれらに追随するタイトルが現れることを期待したい。
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