事務所の解散で名前と姿を一新した人気VTuberが、再び企業と手を組むまで ChumuNoteが語る「VTuberの就活」
個人VTuberとして活動するChumuNote(チュムノート)。釣りをこよなく愛し、歌やアイドル、DJなどのパフォーマンスにくわえて、企業の広報、ミキシングエンジニアとしても活躍するマルチタレントだ。
そんな彼女には、少々変わった過去がある。“以前の名義”で人気のタレントとして活動していたものの、所属していた事務所が解散。アバターや名前を失い、同名義での活動断念を余儀なくされた。唯一手元に残っていたXアカウントでその旨を発信すると、これが大きな話題に。その後はふたたびVTuberとしての姿を手に入れ、あらためて「ChumuNote」として活動することとなる。
そんな彼女は近年、所属事務所を探す「就職活動」をしていた。そして彼女が出会ったのは、VTuberマネジメントをメインに据えた企業ではなく、ヘルスケアを中心に国内外に事業を展開するレメディ・アンド・カンパニー株式会社。
意外な業界への“就職”に、驚いたファンも多いだろう。なぜ医療系企業に所属することになったのか? ChumuNoteへの取材を通して、その理由と「VTuberの新たな可能性」が見えてきた。(たまごまご)
〈プロフィール〉
「こんまんぼぅ!」
2023年2月17日“再”デビュー
音楽系釣り好きVTuber・ChumuNote
後ろのマンボウリュックには無限の可能性を秘めている。
“爆速”で決まった企業所属
――ChumuNoteさんはなぜ、VTuberとして就職活動をはじめたのですか?
ChumuNote(以下・ChumuNote):ひとつは、活動するにあたってのリソースの問題です。僕は個人VTuberとépeler(エプレ)というアイドルユニットの二足のわらじで活動していたんですが、どちらかにサポート体制を設けないと限界がくるなと感じていて。それがきっかけで、VTuberとしてお世話になれる企業を探すための就職活動を開始しました。
――なるほど。生々しい話で恐縮ですが、活動費用の面というよりはマネジメント面の問題だったんですね。
ChumuNote:そうですね。1年7ヶ月のあいだ個人VTuberとして活動をしていて、昨年の収益はおかげさまで自分なりに「頑張って稼げたな」と言えるレベルまでは行けたんです。
その先を考えたときに「もっと稼ぎたいのか」「活動体制を整えてChumuNoteという存在を大きくしたいのか」という二択で考えて、後者を選んだんです。僕はもともと自分の利益より「ChumuNoteが伸びることで会社にとってもプラスになる」というほうがやる気につながるタイプなので、そういった環境に身を置きたいとも思っていましたから。
――レメディ・アンド・カンパニー社がご自身のスタイルに向いていると判断した決め手はなんだったんでしょう?
ChumuNote:事務所の先輩の存在は大きかったですね。レメディにはすでに活動しているメンバーが2人いるんですけど、どちらも元々尊敬しているVTuberさんだったんです。
天曰ひよちゃんは元々コラボ配信もさせてもらっていて、活動の話とかもしていた間柄ですし、子招き猫たたまるちゃんもベテランですし、真面目で活動熱心なので、そういう方々がすでにいるというのはいい環境だと思いました。
あと、レメディさんは僕が今までの活動で作ってきた縁を切ろうとせず、尊重してくれたんです。
――縁といえば、マネージャーさんも一緒にレメディ社へ就職することになったそうですね。マネージャーも一緒に、というのはかなり珍しいことのように思えるのですが、どのような経緯で可能になったのですか?
ChumuNote:面接をさせてもらったときに「ChumuNoteがここまでやってこれたのは、周囲の助けあってのものだ」ということを伝えさせてもらったんです。
たとえば最近だと「Fatal(ファタール)」という曲の歌ってみた動画が伸びているんですけど、あの動画もマネージャーが「ちゅむさんにはアニメソングが合いそう」と教えてくれたのがキッカケだったり、アンテナを張って調べてくれたりして生まれたものなんですよ。僕はデザイン周りやイラストの監修が苦手なんですが、マネージャーが得意な分野なので、いいタッグなんです。それで話し合いをさせてもらって、今回一緒にお世話になることが決まりました。
――タッグを組んで活動していく企業として、レメディ社のどんなところに惹かれましたか?
ChumuNote:レメディさんって、医療業界でもかなりデジタル分野に力を入れている企業なんです。そんなすごい企業の人たちが「入ってほしい」という形で声をかけてくれたことがまずありがたくて。
お話をいただいてからの連絡もすごく返信が早くて、「ChumuNoteをレメディに入れたい」という熱量をすごく感じたんですよ。それから、疑問に思ったことをいろいろと聞いたときも、ひとつひとつ丁寧にお返事を返してくださったので「ここなら安心して所属できる」と感じられました。就職活動を始めたのが7月ぐらいからで、10月にはもう就職成功の発表をしているので、スピード感もすごいなと思いました。
――ChumuNoteさんは以前から、「新しくどこかに所属するのであればずっと続けたい」という話を配信でされていましたが、このスピードで決めたということは相当な信頼をされたということですよね。
ChumuNote:そうですね。僕は事務所が解散してしまった経験がありますから、事務所に所属することに対してはかなり慎重だったんです。けれど、そういう話にも誠実に回答してくださったので、即決できました。
「次の電柱まで走るマラソン」のような感覚 自由なスタイルで活動するワケ
――ChumuNoteさんは歌、トーク、釣り、MIXなど特技が多く、かなりマルチに活動をされていますよね。ひとつに特化せず、それぞれ全部を極めていこうというスタイルになったのはなぜですか?
ChumuNote:良く言うと「新しいことが大好きだから」で、悪く言っちゃうと飽きやすいからですね(笑)。VTuberって、活動内容に縛りがないじゃないですか。何に挑戦してもコンテンツになるので、資格を取ろうとしてもそれを配信で話せばコンテンツになるし、歌ってもいいし、ゲームをしてもいいという自由さが、僕にとっては天職だなと思ったんです。
――「自由な活動」の筆頭でいうと「釣りオフ会(※釣り堀でファンミーティングを実施するという、釣り好きVTuberならではのイベント)」が挙げられると思います。どういった経緯で企画を立てられたのですか?
ChumuNote:じつはあの釣り堀は普段から遊びに行っているお店で、たまたま釣りに行ったときに、貸し切りプランのポスターが貼ってあるのを見たんです。
「これだ!」ってひらめいて、マネちゃんを誘って「ここでイベントをやれたら楽しいと思うんですよ」と話しながら一緒に釣りをしていたんです。釣り堀のスタッフさんに「VTuberやってるんですが、こういうイベントをしてもいいですか?」って話したら、その場で「いいですよ、やっちゃってください」と言ってくれて、その日のうちに日程が決まりました。もう、全てが爆速で進みました(笑)。
――「ちゅむ主総会(※ChumuNoteが活動してきた成果を視聴者に解説する配信)」にも衝撃をうけました。普通のVTuberであれば絶対に出さないような具体的な数字まで出して、収益報告をしていらっしゃいますよね。赤裸々に自分の活動を話すスタイルにしたのはなぜですか?
ChumuNote:前名義時代、SHOWROOMのガチイベ(※視聴者からの投げ銭で順位が決まるショーレース)に参加していて、夢や目標をちゃんと公言している人のほうがファンの熱量が高いことに気が付いたのが理由ですね。
そうした状況を見ていたので、僕も「ちゃんとやりたいことや、自分の活動のことを話さないと応援してもらえないじゃん」という考え方があって。それで、目標とか活動の方針をしっかり話していこうって思ったんですよ。
具体的な数字を出したのは「出したら面白いかな」というくらいの気持ちだったんです。やっぱりVTuberのお財布事情ってみんな気になると思うんですよ。でも、具体的にオープンにして話している人は見たことないなって。
出してみておどろいたのは、収益の数字を画面に出して話したときに「めっちゃ経費かかってるじゃん!」という反応が多かったことですね。僕自身は「いやいやいや、オリジナル曲まで出してるのにこの金額で済んでいるのはめっちゃ安いんだよ!」って(笑)。普段見えないものなので仕方ないと思うんですが、かなり感覚にギャップがあるんだな、と思ったのは覚えていますね。
――過去の経験から公表に至ったというわけですね。先々の活動プランを計画するタイプなのでしょうか?
ChumuNote:僕は目の前のことをまず頑張る、というタイプですね。企業付きになるまで、端からから見ると長い計画を立てて走るマラソンのようなことをしているように見えたかもしれないですけど、僕自身は「面白いし、楽しそうだからひとつ先の電柱まで行ってみようかな」という気持ちで活動していて。それを達成したら「あそこにも楽しそうな場所があるから走ってみよう」というのが続いている感じなんですよ。
ただ、活動の軸になる要素は決めていました。それが、「音楽」と「配信」と「モチーフ」です。「モチーフ」はマンボウとか猫とか釣り好きとかのような、自分自身の個性のことです。その3つを中心に活動していきたいというのは常々思っていました。