「キングダム ハーツ」歴代作品がSteamに勢揃い いまも色褪せない傑作アクションRPGの魅力とは
スクウェア・エニックスは6月14日より、『キングダム ハーツ -HD 1.5+2.5 リミックス-』を含む「キングダム ハーツ」(KH)シリーズ計3作品と、それら全作品がセットになった『KINGDOM HEARTS INTEGRUM MASTERPIECE』をSteam向けに配信する。
本稿ではSteam版の配信スタートを記念し、今年で生誕22周年を迎える「KH」シリーズの歴史や魅力を振り返る。
ディズニーキャラが登場する異色のアクションRPG「キングダムハーツ」
「KH」の第一作目『キングダム ハーツ』(KH1)がスクウェア(現スクウェア・エニックス)より発売されたのは、2002年3月28日のこと。同作品は3D空間を動き回ってゲームを進めていくアクションRPGとして産声を上げ、世界的に有名な「ディズニー」シリーズとスクウェアが展開する「ファイナルファンタジー」シリーズの共演で注目を集めた。
「KH」誕生のきっかけは、とあるビルのエレベーター内で繰り広げられた、ウォルト・ディズニー・ジャパン幹部とスクウェア社員の何気ない会話だった。「スクウェアと共に新規タイトルを作りたい」というディズニー側の意向を汲み、スクウェア社内で議論が行われると、「ファイナルファンタジー」シリーズのキャラクターデザインを努めていた野村哲也氏がその場で声を上げる。同氏が以前より抱えていた構想をもとに、紆余曲折を経ながらも「KH」シリーズの活路が開かれていった。
『KH1』の“始まりの地”は、外界から切り離された「デスティニーアイランド」と呼ばれる不思議な島。これといった脅威が存在せず平穏な日々を営んでいた「ソラ」「リク」「カイリ」の3人は、自分たちの可能性を信じて島を抜け出すことを決意する。ところがデスティニーアイランドが暴風雨に巻き込まれ、島にやって来た怪物「ハートレス」を前に少年少女たちは離れ離れになってしまう。
成り行きのまま「キーブレード」を手にハートレスを破ったソラだったが、目を覚ますとデスティニーアイランドではなく、見知らぬ土地「トラヴァースタウン」にたどり着いていた。当初とは望まぬ形で外界に足を踏み入れたものの、ソラは行方知らずとなったリクとカイリを探すべくトラヴァースタウンを後にする。
同作品の主人公を務めるソラと一緒に旅をするのが、ディズニー作品でお馴染みの「ドナルドダック」(ドナルド)と「グーフィー」である。作中ではソラ一行がディズニー作品のワールドを巡り、さまざまなゲストキャラと交流を育みながら事態の解決にあたる。そこではディズニーキャラが原作に基づいた立ち居振る舞いをしながらも、時にはソラたちとの出会いによって思いがけない一面を見せることもある。戦闘シーンのみで力を発揮するお助けキャラや単なるスポット出演ではなく、「KH」本編のシナリオに絡む形でしっかりとキャラクター像が掘り下げられているのだ。
それでいて、ディズニーキャラと並んでも違和感が感じられないのが「KH」オリジナルキャラの面々。ソラの親友であり、敵対関係を経て再び手を取り合うことになった「リク」。ソラやリクとかけがえのない時間を過ごし、窮地にさらされながらも彼らと共に道を歩む「カイリ」……等々、味方サイドから敵サイドにいたるまで、多種多様なキャラが「KH」シリーズのドラマを盛り上げる。
また同作品を象徴するテーマソングを手掛けたのは、シンガーソングライターの宇多田ヒカル。彼女は『KH1』のために書き下ろした「光」とその英語版「Simple and Clean」をはじめ、2005年に「Passion」、2018年に「誓い」……と、ナンバリングタイトルのリリースに合わせて楽曲を提供している。宇多田ヒカルと「KH」シリーズは文字通り、切っても切れない関係にあると言って過言ではない。
20年以上の歴史を紡ぐ「KH」。未経験者でも一作目から順番に遊ぶのがベスト
国内でミリオンセールスを突破しただけでなく、全世界で600万本を超える大ヒットを記録した『KH1』。同作品が多くの人々に愛された要因のうち、感覚的に分かりやすいのが“アクションRPGとしての完成度の高さ”ではないだろうか。
美麗なグラフィックで描かれた3Dフィールドを歩き、行く先々でさまざまな因縁を結び、心の闇を具現化した存在である“ハートレス”をキーブレードで蹴散らしていく。同シリーズの基本的な戦闘システムは『KH1』の時点で出来上がっており、ボタン連打でコンボ攻撃がつながるほか、「まほう」や「しょうかん」などのコマンドも駆使することで爽快感あふれるバトルが楽しめる。そしてドナルドやグーフィーをはじめ、ディズニーキャラがパーティーに加わるシーンも存在し、戦闘時には各々が得意とする戦い方で存分に腕を振るってくれる。映像作品に登場するディズニーキャラと背中合わせで戦う経験は、「KH」唯一無二の魅力と言ってよいだろう。
さらに続編の『キングダム ハーツII』からは、新要素「リアクションコマンド」「ドライヴ」が実装された。前者は状況に合わせたボタン入力で戦況が有利になり、後者はフォームチェンジによってソラの戦闘スタイルが変化するというもの。以降、「KH」シリーズはこの戦闘システムをベースとしつつ、ライトユーザーでも気兼ねなく遊べるアクションRPGとして支持を集めていく。
2002年3月発売の『KH1』を皮切りとし、20年以上にわたって歴史が紡がれてきた「KH」。同シリーズはPlayStation 3やPlayStation 4といった据え置きハードはもちろん、ニンテンドーDS、PlayStation Portable、スマートフォン向けアプリなど、プラットフォームの垣根を越えて作品を展開している。また2022年4月にはナンバリングタイトル『キングダム ハーツIV』に関する新情報が発表されたほか、2024年内に位置情報ゲーム『キングダム ハーツ ミッシングリンク』の配信も予定されている。そうした10作品以上のタイトルがナンバリングやスピンオフに関わらず世界観を共有し、幹となり枝葉となって「KH」を形作ってきたのだ。
ここで問題になるのが、「KH」シリーズ初心者が直面するであろう「どの作品から遊べばいいのか」問題。Steam版のリリースをきっかけに、前から気になっていた「KH」シリーズに手を伸ばそうと考えている人も一定数いるはず。しかし上述の通り、世界観と時系列がつながっている同シリーズだからこそ、どこか敷居が高く感じられるのかもしれない。
では「KH」シリーズ未経験者の場合、どの作品から遊べばいいのだろうか。端的に言うと、まずはソラの旅立ちを描いた『KH1』からプレイするのがオススメだ。続いて『キングダム ハーツ チェイン オブ メモリーズ』(KHCOM)『KH2』と遊べば、登場キャラの関係性やシナリオの本筋をある程度把握できると思われる。Steam版をはじめ、家庭用ゲーム機やEpic Games版も展開されている『KINGDOM HEARTS -HD 1.5+2.5 ReMIX-』なら、『KH1』『KHCOM』『KH2』を含め、最新ナンバリング作品『キングダムハーツIII』(KH3)までカバーすることが可能だ。とりわけ『KHCOM』はもともとゲームボーイアドバンス用ソフトということもあり、3Dリメイクによってプレイフィールもガラッと変わっている。オリジナル版の経験者であれば、『KHCOM』リメイク版もぜひ一度手にとってもらいたい。
また、作品の発売順を追わずとも「好きなディズニーキャラが出演するタイトルを遊びたい」といった動機でも良いだろう。『KH1』の場合は『ふしぎの国のアリス』『リトル・マーメイド』など計9作品、『KH3』なら『アナと雪の女王』『ベイマックス』を含む新規ディズニーワールドが5つ登場する。アニメーション作品はもちろんのこと、『パイレーツ・オブ・カリビアン』『トロン』といった実写映画のキャラも上手くデフォルメ化して描かれており、本編では見られないソラたちとの交流模様は「KH」シリーズの大きな魅力だと言えるだろう。
歴代タイトルを丸ごと収録した『KINGDOM HEARTS INTEGRUM MASTERPIECE』を含む、「KH」シリーズ作品のSteam版リリース日は6月14日。この機会にPCで「KH」をプレイしたいユーザーは忘れずにチェックしておこう。
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