TikTokの荒れがちなコメント欄を逆手に取った見事さ 「垢抜けたいですアドバイスください」の流行に感じたこと

荒れがちなTikTokコメ欄を逆手にとった Z世代のTikTok活用法

 日々エンタメ×テクノロジーについて発信するリアルサウンドテック編集部。腕利きの執筆陣による読み物も好評ですが、一方で若年層の読者も多い媒体として、参考にしているのは現役大学生たちの声。連載「Z世代のリアルレビュー」では、編集部にインターンスタッフとして勤務する現役大学生ライターの視点から、毎週さまざまなトピックをお届け。第17週は寒暖差にもだえ苦しんでいる星野がお送りします。

 いまよりもっと「綺麗に」「かわいく」「かっこよく」なりたいという気持ちは誰もが持っているもの。しかし、「具体的にどうすればいいのか?」を知るのには労力が必要です。髪の毛を染めてみたり、メイクを変えてみたり、自分なりに考えて試行錯誤を重ねなければならないからです。

 その点、Z世代は非常に上手くTikTokを活用していることに気付きます。自分の顔をノーマルカメラで撮影し、「垢抜けたいですアドバイスください」と文章とともに投稿することで、コメント欄で垢抜けのアドバイスを集めているのです。本稿では、なぜこのようなTikTokの使い方が生まれたのかを考えてみたいと思います。

・「垢抜けたいですアドバイスください」とは?

 先述したようにZ世代の間では、ノーマルカメラで自分の顔を様々な角度から撮影し、投稿することで、コメント欄で垢抜けのアドバイスを求めるというTikTokの使い方が広まりつつあります。コメント欄には「カラコンしてみたら?」「かっこいい系統の方が似合うと思います!」「前髪薄くしてみてください」など、多種多様なアドバイスが並んでいます。

@user4990800068593 メイク有り。iPhone内カメ撮影。 前回の動画で頂いたアドバイスを元に、セザンヌのマスカラ下地とキャンメイクの新作のメタルックマスカラを使いまつ毛をキープさせる+束感にしました。まだまだアドバイスお待ちしています😖🙌🏻 #垢抜けたい #垢抜け方法 #垢抜けたい女子 #アドバイスお願いします #一重女子#一重メイク #歯列矯正中 #05 ♬ オリジナル楽曲 - ︎︎ - ︎︎ ❤︎︎

実際にTikTokに投稿されている動画

なぜこのような使い方が生まれたか

 ここでは、なぜこのようなTikTokの使い方が生まれたのかを考えてみます。筆者が考える理由は以下の2つです。

(1)客観的な目線のアドバイスを得ることができる

 1つ目の理由は、無数のユーザーがいるTikTokというプラットフォームを用いて、自分の容姿に対する客観的な目線のアドバイスを得られるためです。もちろん垢抜けるために、家族や友人にアドバイスを求めるということもできなくはありません。しかし、身の回りにいる人は思っていることを正直に言えず「そのままで素敵だよ」とか「十分可愛いよ」と返してくれるだけなのではないでしょうか。垢抜けたい人が求めているのはそんな綺麗な言葉ではなく、少々辛口であってもタメになるアドバイスです。そのため、全く知らない人からの正直なコメントをTikTokで募集するのでしょう。

(2)コメント欄が荒れにくく、投稿者の心理的安全性が高い

 2つ目の理由は、投稿者がコメント欄を見るという前提があることで心無いコメントが少なくなり、投稿者の心理的な安全性が高まるからです。ユーザー層の若さゆえか、TikTokのコメント欄は荒れることも多くあります。特に投稿者の容姿を公開する動画には、それに対する心無いコメントも見られます。しかし、「垢抜けたいですアドバイスください」という文章とともに投稿された動画は投稿者がコメント欄を見ることが前提であるため、分別のないコメントは自然と少なくなるのです。また、「アドバイスください」と投稿者が下手に出ることで「TikTokで顔出ししているが、うぬぼれているわけではない」という印象を見る人に与えられます。結果として、投稿者が容姿を公開してもコメント欄が荒れづらくなるのです。

今後もこの現象は続くか?

 ここまで、Z世代による垢抜けアドバイスを求めるためのTikTokの使い方を紹介し、その使い方が生まれた理由を考えてみました。筆者はこの使い方に対して、リスクはありますが「垢抜けたいですアドバイスください」という最強の文章により、投稿者の心理的安全性を確保しながら、有益な垢抜けのアドバイスを集めることができる合理的な使い方だという印象を持ちました。

 また、筆者個人としては「自分の顔を公開し、知らない人から垢抜けのアドバイスを求める」という現象は、TikTok以外にも広がっていくのではないかと考えています。具体的には、TikTokで回避できない顔出しや誹謗中傷のリスクを回避しながら垢抜けのアドバイスを求められる会員制プラットフォームなどです。今よりもっと「綺麗に」「かわいく」「かっこよく」なりたいという気持ちには際限がないことを考えれば、垢抜けのアドバイスを求める人は常に存在しているはずです。そのため、垢抜けたい人の需要を満たすプラットフォームが今後生まれるかもしれません。

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