元『LoL』プロが挑んだ『RAGE STREET FIGHTER』 Cerosが語る“格闘ゲーマーの理想形”とは

Cerosが語る“格闘ゲーマーの理想形”とは

 カプコンの対戦格闘ゲーム『ストリートファイター6』(以下、『スト6』)の公式大会『RAGE STREET FIGHTER』が、3月24日、東京・江東区の有明GYM-EXにて開催された。

 『RAGE』は、株式会社CyberZ、エイベックス・エンタテインメント株式会社、株式会社テレビ朝日の3社で運営する日本最大級のeスポーツイベントであり、大会種目に『スト6』を採用するのは今回が初のこと。

 そんな『RAGE STREET FIGHTER』では、総勢16名のストリーマーがトーナメント形式の個人戦で真剣勝負をくり広げることに。彼らの勇姿をひと目見ようと会場には多数の観客が詰めかけたうえ、公式配信の最高同時接続者数は13万人超を記録する盛況ぶりとなった。

 本稿では、出場選手のひとりであるCerosの活躍を中心とした大会レポートとともに、本人へのショートインタビューの模様をお届けする。

格闘ゲーム大会初参戦!? 『RAGE STREET FIGHTER』・Cerosの軌跡

 『スト6』プレイヤーとしても確かな実力を誇る、著名ストリーマー・VTuberら総勢16名が参戦して実施された『RAGE STREET FIGHTER』。

 このなかでCerosは、MOBA系ゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』(以下、『LoL』)の元プロゲーマーにして、プロゲーミングチームにて同タイトルのコーチを務めていたという異色の経歴の持ち主。2023年7月に選手へのハラスメント行為が発覚し、所属チームから契約解除されて以降は自粛期間を過ごしていたが、2024年2月よりストリーマーとして活動を再開した。

 今大会をもってして格闘ゲーム大会への初参戦を果たしたCerosだが、『スト6』の最高到達ランクは出場選手のなかで最高値の「MR2180」。過去には全世界でレート500位以内のプレイヤーに付与される「LEGEND」ランクに到達したこともあり、優勝候補の一角と目された。

 今大会では、各選手に1名のセコンドの同席が許可され、選手は試合中に任意のタイミングでアドバイスを受けることができるという珍しいルールを採用。Cerosは、公式プロリーグ『ストリートファイターリーグ』で活躍するプロゲーマー・竹内ジョンをセコンドに迎え、二人三脚でトーナメントを勝ち上がっていく。

笑顔で試合に臨むCeros(中央)と、セコンドを務めた竹内ジョン
笑顔で試合に臨むCeros(中央)と、セコンドを務めた竹内ジョン

 「下馬評通り」と言うにはあまりにも熾烈な戦いを幾度も制し、ついにグランドファイナル(優勝決定戦)へと上り詰めたCeros。それを待ち受けていたのは、さまざまなゲームジャンルでマルチな才能を発揮し、『スト6』でも現役プロに匹敵する実力を持つとの呼び声が高い、たいじだった。

 ダブルエリミネーション形式(※1)で実施された本大会。勝者側トーナメントの決勝戦と同じ対戦カードであり、Cerosにとっては格好のリベンジマッチの機会ともなったこの試合。敗者側トーナメントに位置するCerosが優勝するには、たいじ相手に2連勝(※2)する必要があるという厳しい条件下ながら、幸先よく1セットを取得して五分の状況に持ち込む。

※1……いわゆる2ライフ制のトーナメント。勝者側トーナメントで一度敗北した選手は敗者側トーナメントに移動し、敗者側トーナメントでも敗北した時点でトーナメント敗退となる。

※2……勝者側トーナメントの1位と敗者側トーナメント1位が対戦するグランドファイナルでは、勝者側選手は1回の勝利で優勝となるが、敗者側選手は2回(本大会においては3試合先取×2セット)勝利するまで優勝とならない。

 しかし快進撃もここまで。追い詰められてむしろ冷静さを取り戻したかのようなたいじに競り負け、Cerosは惜しくも準優勝でフィニッシュとなった。

グランドファイナルを戦ったたいじ選手(中央左)と、握手を交わすCeros
グランドファイナルを戦ったたいじ(中央左)と、握手を交わすCeros

 格闘ゲーム大会初参戦ながら驚異の好成績を残したものの、試合後のコメントでは悔しさを滲ませていたCeros。閉幕直後のインタビューにて、今大会の感想や、今後の活動に関する意気込みなどを語ってもらった。

世界に挑んだストイックさはいまだ健在、Cerosショートインタビュー

――まずは激闘を終えたいまの、率直な感想をお聞かせください。

Ceros:まずは楽しかったなという気持ちと、それと同じくらい悔しさがあります(笑)。

――これほど大規模な格闘ゲームイベントへの参戦は自身初とのことでしたが、振り返っていかがでしたか。

Ceros:格闘ゲームで、しかも大会ともなると、ひとつひとつの読み合いがすさまじく“重い”と感じました。ふだんのオンライン対戦によるランクマッチなどでは感じたことのないプレッシャーを味わえましたね。

 たとえば起き攻めを仕掛けられる状況になったときに、いつもだったら「ここは投げが有効だろう」、「ここは打撃が当たる気がする」といった感覚で、経験則や勘を頼りにすんなり選択肢を選べていたんですが……。

 それが大会では、ひとつひとつの選択が命がけとは言わないまでも、それで勝負が決まりかねないわけですから、「本当にこの選択は正しいのか?」という迷いが常につきまといました。

――今大会では各選手にセコンドが1名同席することになりましたが、どのようなことを意識して試合に臨まれましたか。

Ceros:現役プロゲーマーさんや、国内屈指の強豪プレイヤーさんが僕ら選手のセコンドを担当してくださるわけなので、「トッププレイヤーの方々が僕のプレイを見たときにどう分析してくるのだろうか?」ということを想像して、僕のセコンドを務めてくださった竹内ジョン選手とも話し合いながら練習に取り組んできました。

 出場選手の発表から本番までに約1ヵ月あったので、当然ながら相手も僕のことを研究してくるだろうし、セコンドの方の目も加わることで僕自身も気付かなかったようなクセを見抜かれるかもしれない。そうやってお互いが用意してきた対策のぶつけ合いを格闘ゲームでやるのは初めてのことだったので、すごく新鮮な感覚でした。

――セコンドの竹内ジョン選手をはじめ、格闘ゲーマーの方々と接してみてどのような印象を持ちましたか。

Ceros:いつも配信や動画で拝見している印象そのままの方々だなって思えて、うれしかったですね(笑)。これまであまり言う機会がなかったのですが、じつは僕、けっこう昔から格闘ゲームシーンをいちファンとして追っていたんです。

 それこそ、『ウルトラストリートファイターIV』時代の最後の『Capcom Cup(2015)』で、かずのこさんとウメハラ(梅原大吾)さんがグランドファイナルで激突した試合とか、いまでも印象深いですし。今日お会いできた方々にも「昔から配信や動画を見てました!」とごあいさつすることができたので、本当にいい機会をいただいたなと思いました。

――MOBA系ゲームのコーチ業を経験しているCerosさんですが、格闘ゲームでプロ選手からのコーチングを受けてみて、「ここはMOBA系のやりかたとは違うな」と感じるような点はありましたか。

Ceros:僕としてはどんなゲームジャンルであっても、試合で勝つために大切なことは本質的にはあまり変わらないというか、ある程度似通った部分があると考えています。だから、コーチングのやりかたそのものにはジャンルが変わっても大きな差は出ないものなのかなと。

 ただ一方で、格闘ゲームという個人戦のゲームであっても、第三者的な目線を取り入れて複数人で攻略していくことはものすごく重要なのだとあらためて感じましたね。竹内ジョン選手から「このキャラにはこの行動が通りやすい」といった目からウロコな攻略情報をたくさん授けてもらいましたし、やはり独学での攻略には限界があるなと思わされました。

――今回の激戦を経て、今後の格闘ゲームへの取り組みかたや、モチベーションにはどのような好影響がありそうですか。

Ceros:今大会を通して、まだまだ自分のプレイには“引き出し”が少ないなと痛感しました。格闘ゲームは相手との読み合いの駆け引きが重要ですが、相手の動きが読めても、それに合わせて自分の動きを柔軟に変えられないうちは、まだまだ自分の理想とするプレイには遠いなと。

 トーナメントを勝ち上がるにつれて、とっさの場面で体に染み付いた“手クセの動き”が出てしまっていたので、いかなる状況でも自由自在に動きの変化をつけられるようなプレイヤーになりたいです。そういう意味では、グランドファイナルでたいじさんに負けてしまったことで、逆にモチベーションが上がりましたね。

 最高到達ランクだけで言えば出場選手のなかで僕がもっともMRが高かったので、今回は少なからずマークされる立場だったと思いますが……。それでも優勝を逃してしまったので、もし次回開催があるなら「自分は挑戦者側なんだ! やってやるぜ!」という気持ちで再チャレンジさせてもらいたいなと思います(笑)。

トーナメント初戦勝利後、キャスター陣からのインタビューに応じるCeros
トーナメント初戦勝利後、キャスター陣からのインタビューに応じるCeros

――現在は配信活動をメインとし「ゲームの楽しさを伝えていくこと」に注力されているCerosさんですが、ゲームへの向き合いかたにはどのような変化や発見がありましたか。

Ceros:ストリーマーにはストリーマーの大変さがあるわけですが、常にピリピリしていた選手時代と比べたら、いまは適度に肩の力を抜いてゲームを楽しめている気がします。ただ、今回のトーナメントでは選手時代ほどの集中力を発揮できていなかったと感じてしまう部分もあるので、ゲームへの取り組みかたはもっと改善していきたいですね。

――最後に、今後の活動についての目標や意気込みをお聞かせください。

Ceros:『スト6』に関しては、いまよりもっともっとうまくなりたいので、より良い取り組みかたを考えていきたいです。これまではとにかくランクマッチで対戦数を重ねることが大切だと思ってやってきたのですが、今後はほかのプレイヤーさんたちに積極的に声を掛けて、カスタムマッチで腰を据えて対戦をしていったほうがいいのかなとも思っています。

 そんなわけで、格闘ゲームについては引き続きモチベーション高くやっていくつもりですし、それと並行して『LoL』の初心者向け解説動画などの発信も積極的にやっていきたいです。こちらはもともと僕がやりたいと言っておきながら、なかなか着手できていなかった部分なので、うまく両立したいと思っています。

新星、師弟対決、悲願の初勝利……さまざまな者の“意地”を見た『第3回CRカップ スト6』

先週2月11日に、招待制のゲーム大会『第3回Crazy Raccoon Cup STREET FIGHTER 6』が開催された。…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる