「これからは“体験”するインターネットに」 森ビルとKDDI共同開発の「TOKYO NODE HALL」デジタルツイン発表会レポート

TOKYO NODE HALLデジタルツイン発表会レポ

 森ビル株式会社とKDDI株式会社は3月28日、虎ノ門ヒルズ ステーションタワーの情報発信拠点「TOKYO NODE」のメインホール「TOKYO NODE HALL」と同期するデジタルツイン「TOKYO NODE DIGITAL TWIN HALL - RESPECT YOU, au」を発表した。

 「TOKYO NODE DIGITAL TWIN HALL - RESPECT YOU, au」は、リアルとデジタルツインのホールを1つの空間として接続することで、音楽ライブ、ファンミーティングの熱狂をXRで拡張し、リアルとデジタルが融合した新たな共有体験を創出することを目指したもので、開発はKDDIを含めて複数の企業が参加する「TOKYO NODE LAB」の共創プロジェクトとして取り組まれている。

 当日は森ビル株式会社 新領域事業部 TOKYONODE運営室 課長/TOKYO NODE LAB Executive Producerの杉山 央氏とKDDI株式会社 事業創造本部 副本部長の中馬 和彦氏が登壇。

 まずは杉山氏がRhizomatiksとELEVENPLAYが手がけた『Syn:身体感覚の新たな地平』や蜷川実花による『蜷川実花展』など、TOKYO NODEがこれまで行ってきた施策を振り返る。そのうえで街全体のデジタルデータを活用したプロジェクトなど、「新たな都市体験」を生み出すために「都市は人間の本質を促進するコミュニケーションプラットフォーム」であり、「同じ場所で一緒に体験する喜びをデジタルの力で拡張する」ことに意義を見出していると明かした。

 そのうえで、今回は「ホール空間での体験をデジタルの力で拡張する」ためにKDDIと手を組み、共同でデジタルツインプロジェクトを運営していくことを発表。続けて中馬氏が登壇し、「TOKYO NODE DIGITAL TWIN HALL - RESPECT YOU, au」は「リアルの300人と世界の1万人が同じ時間と空間を共有する」ためのプロジェクトであると説明した。

 KDDIは2018年より渋谷を舞台にリアル・デジタルの施策を行っており、過去の渋谷駅を見ることができるXRコンテンツなどを手がけてきた。2020年以降はコロナ禍でリアルな街がロックダウンされたことにより、世界初の都市連動型メタバース『バーチャル渋谷』を作り上げ、渋谷区とも連携しながら「バーチャルハロウィン」のようなイベントなどを行ってきた。それ以外にも、2023年にはNFTマーケットプレイスやオープンメタバース、ウォレットなども含んだWeb3プラットフォーム「αU(アルファユー)」を始動するなど、Web3領域とデジタルツインに強みを持った取り組みを進めている。

 中馬氏は「インターネットは検索して“見る”ものだが、コロナ禍以降でわかったのは3Dは“体験できる”こと。これからは体験するインターネットにアップデートされていきますし、これがWeb3の世界だと思っている」と、WEBサイトを見るだけの「視聴」のインターネットではなく、空間の中に入ってそこにいるかのごとく味わえる「体験」のフェーズに入っていると熱弁。

 「リアルはやっぱり素晴らしくて、五感で体験できるものである。一方、デジタルも体験できるフェーズに入っていくうえ、物理的な制約がない。だからこそ『リアルな空間・デジタルな空間が一つになった時に生み出される新しい体験』にトライしたかった」とプロジェクトに込めた想いを明かした。

 その後、デモンストレーションパートへ。ボリュメトリック技術を活かして、事前に撮影した杉山氏がデジタルツインのホール上に登場した。この日は事前に撮ったものを融合していたが、今後はミュージシャンがライブをしている姿をその場でキャプチャし、デジタルステージ上に出すことができるようになるという。

 また、デジタル空間上では時間軸の調整も可能で、昼・夜の切り替えができるほか、物理的な制約がないことを活かしてステージの下に水を張ってみたり、ステージ照明はリアルとデジタルのワールドが連動したりと、ユニークな取り組みも明かされた。

 ほかにも、「体験を手のひらで持ち帰る」として、ARマーカーを使った取り組みも発表。ボリュメトリックで撮影したパフォーマンス映像を切り取ってARコンテンツとして配信することで、リアルで見たライブを追体験できるという未来も明かされた。

 ARマーカーによる取り組み自体はこれまでも多数の事例があり、珍しいものではない。しかし、ライブパフォーマンスを切り取って持ち帰る、なおかつそれを継続的にコンテンツとして配信するという取り組みは珍しい。

 TOKYO NODEにはボリュメトリック用のキャプチャスタジオも併設されており、コンテンツを制作することも可能だ。コンテンツを制作できること、スマートフォン1台で手軽に体験できることと合わせて、「デジタルツイン」時代の入り口としての活用に期待が持たれる。

 なお同ホールのこけら落とし公演として、[Alexandros]のライブ&トークイベントも本日18時より開催。こちらの模様は追ってレポートする。

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