映画『PERFECT DAYS』共同脚本・高崎卓馬「心が向かう方向に進んでいたらこうなった」 放送作家・白武ときおに語る“完成までの道のり”

白武ときお×高崎卓馬が語る完成までの道のり

クリエイティブの原動力

白武:今後、依頼や相談からではなく、自発的になにかを作る可能性はありますか?

高崎:見てきたものや感じたことなど、自分の中に溜まってきたものがあって、メモしているんですけど、すごい量になっています。企画の種みたいなものも部屋に溢れていて、作りたいアイデアがみんな順番待ちをしている状態。とはいえ無理に動かすとうまくいかないので、すべてを少しずつ前に出して待っている状態です。

 それらが映画になるのか、小説になるのか、広告になるのかわからない状態であって、たまたま誰かから相談を受けているときに引き出しが開いて、僕のストックを組み合わせて何かしら実現するような形になる。

白武:世の中でウケているもので「自分だったらこっちのほうがいいと思う」みたいなことはありますか?

高崎:人は人だからなぁ。ウケているかどうかというより、自分が気になる表現をみつけて、なんで気になったのか、どうしてそうなったのか、その背景にあるメディアの変化や人の感じ方の変化や、価値観の揺らぎのようなものを感じたり、考えたりすることはよくします。もうそれは自然に。ウケているものを真似したいとはまったく思いません。むしろそこじゃない場所のほうが目立つと思いますし。

白武:では、あくまで依頼や相談があった上で、そこに自分自身の中にあるものをどう打ち返せるか、そういったクリエイティブになると。

高崎:広告ってそもそも、商品が出れば決着する。商品名が出たときにその広告について考えてくれると思うんですけど、映画はその商品がない状態です。だから着地を全部自分でしなきゃいけないというのは、湖と海くらい違う。

 ものを作るのが好きで自発的に作れてしまう人もいるんですけど、僕の場合は呼ばれないと作れないし、呼んでもらうためのことはしていて、呼ばれたら離さないようにはしています。

白武:高崎さんのクリエイティブの原動力はなんですか? 人に喜んでもらうのがうれしいのか、自分が作りたいものを作る喜びなのか。

高崎:人から喜ばれるのは嬉しいですね。辞めない理由にもなる。目の前の人もそうだし、自分と関係のなさそうな人が喜ぶのも嬉しい。おこがましいけど、世の中全体がずっと気になっています。責任は絶対にあると感じるので。

 怖いのが、その人のためにやっていることが1行でもずれると、その人のためじゃなくなってしまうこと。そういう状況が起きやすい世の中にもなっているし、自分が正しいと思っている価値観を積み上げたときに、そのことを不快に思う人たちはやっぱりいますしね。臆病になっているというよりは、考えることがどんどん増えているなと思います。

白武:なるほど……今日お話して作って終わりではなくて、そのあとにも責任を持ち、常に誠実な態度で生きていこうと背筋が伸びました。貴重なお話ありがとうございました。

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