『グラブル リリンク』に集まる高評価 人気IPのCS機“逆輸入”、成功の条件と今後の展望は?

人気IPのCS機“逆輸入”、成功の条件と今後の展望は?

 『GRANBLUE FANTASY: Relink』(以下、『グラブル リリンク』)が快進撃を見せている。

 発売から10日ほどが経過した2024年2月13日には、全世界におけるパッケージ版の出荷本数、ダウンロード版の販売本数の合計が100万本を突破したことを、開発・発売元であるCygamesが発表。ネット上の評判もおおむね良好であることから、「人気ブラウザゲームのスピンオフタイトル」という枠を超えつつある状況だ。

 本稿では『グラブル リリンク』の発売と成功を起点に、ブラウザ/アプリ発IPのCS機展開について考えていく。

人気ブラウザゲーム『グランブルーファンタジー』から派生した新作アクションRPG

GRANBLUE FANTASY: Relink – ファイナルトレーラー

 『グラブル リリンク』は、2014年にサービスが開始されたPC/モバイル向けタイトル『GRANBLUE FANTASY』(以下、『グランブルーファンタジー』)から派生したアクションRPGだ。プレイヤーは、旅の終着点「星の島イスタルシア」に至るまでの過程にある「ゼーガ・グランデ空域」を舞台に、本編に登場した数々のキャラクターたちを操作し、空の世界の運命をめぐる物語の結末へと歩みを進めていく。

 特徴的なのは、4名のキャラクターでパーティーを編成するバトルシステム。それぞれの個性や育成状況などをもとに、より良いパフォーマンスが出せる組み合わせを探していくことが同タイトルの最大のゲーム性だ。また、メインストーリーのほかに用意されている「クエスト」では、最大4人によるオンラインマルチプレイも可能。公式によると、同コンテンツのバリエーションは100種類以上にも及ぶという。完成されたシナリオ、アニメタッチの美麗なグラフィック、爽快感のあるアクションといった基本要素はもちろんのこと、他のプレイヤーと共闘できるというパーティーゲーム的な側面も、『グラブル リリンク』の魅力のひとつとなっている。

 対応プラットフォームはPlayStation 5/PlayStation 4/Steamで、価格は、パッケージ/ダウンロード通常版が税込8,778円(※)。CS機向けのみ、初回生産版限定で『グランブルーファンタジー』本編で利用できるアイテムセットが付属する。

※このほか、パッケージ版としてDeluxe Edition/Collector's Editionが、ダウンロード版としてSpecial Edition/Digital Deluxe Editionが展開されている。付属する特典や在庫状況などは、公式サイトを参照のこと。前述したアイテムセットについて、パッケージ特別版は購入時期の定めがないが、ダウンロード特別版は、2024年5月31日23:59までの購入に限定されている。

モバイルゲーム市場からのゆるやかな撤退を示唆する、CS機への“逆輸入”

 ゲームカルチャーでは近年、ブラウザ/アプリにルーツを持つIPをCS機で活用する動きが広がっている。直近では、スマートフォン向けタワーディフェンス『アークナイツ』を原作とするアクションRPG『アークナイツ:エンドフィールド』がテクニカルテストを実施したことも話題を集めた。同タイトルはPC/モバイルのほか、PlayStation 5でもリリースされることが開発元のHypergryphから明らかにされている。

 また、昨年、PlayStation 5を含む複数のプラットフォームでリリースされ、界隈を賑わせたRPG『崩壊:スターレイル』も、もとはモバイルなどで支持を広げてきた「崩壊」シリーズの関連タイトルだ。本稿で扱っている『グラブル リリンク』の本編『グランブルーファンタジー』からは、対戦アクションシリーズの『GRANBLUE FANTASY Versus.』(2020年)や『GRANBLUE FANTASY: Versus -RISING-.』(2023年)も、PlayStationプラットフォーム向けに展開されている。

【崩壊:スターレイル】巡星PV |「君」の選択

 長くゲームカルチャーの発展を牽引してきたことから、CS機は同文化のメインストリームとして扱われることが多かった。PCやモバイル端末でのゲームプレイが一般化したのは、長く見積もっても、ここ15年ほどのことだ。もちろんそれ以前にも、PCプラットフォームが文化を醸成してきた過去はあるが、あくまでもそれはサブカルチャーの範疇においてである。影響力や歴史の長さ、文脈などを考えると、CS機がメインストリームであることは認めざるを得ない事実だろう。

 その観点に立つと、ブラウザ/アプリにルーツを持つIPのCS機への進出は、ある意味で“逆輸入”的なトレンドと言える。スマートフォンの普及とともに急速に拡大したモバイル端末のゲーム機化だが、少なくともここ数年は成長が鈍化しつつある。2023年には、注目作の早期撤退や、一時代を築いた大作のサービス終了などが相次いだことも話題を集めた。転換点となるような大きな出来事がないかぎり、今後、市場がシュリンクしていくことも十分に考えられる。

 ブラウザ/アプリにルーツを持つIPのCS機での展開は、モバイルゲーム市場に依存する状態からの脱却、さらなる市場拡大に向けた戦略の一端と見ることができるのではないか。昨今、PCプラットフォームが勢力を強めつつあるのは、ブラウザゲームが引き続き支持されているからではなく、CS機を代替、あるいは拡張する役割に注目が集まっているからだ。

『アークナイツ:エンドフィールド』特別PV「タロⅡ:目覚め」

 とはいえ、PC/モバイル向け人気IPのすべてに、“新天地”での成功が約束されているかと言われれば、そうとは言い切れない。『崩壊:スターレイル』や『グラブル リリンク』が結果を残せているのは、それぞれがシリーズの支持の理由となっている世界観やクオリティを踏襲していたからこそだ。先のテクニカルテストでの評判を振り返るかぎり、『アークナイツ:エンドフィールド』も、両タイトルと同じ道を進むと予想される。

 一方、これら3つのシリーズには、中国で広く支持されているという共通項もある。実際に『グラブル リリンク』のSteamページには、簡体字による高評価レビューが多く寄せられている。同国の市場は、モバイルゲームの存在感が強いことで有名だ。だからこそ、仮に新たな展開に一定の道筋が見えたとしても、今後しばらくのあいだは、PCやモバイルに主軸を置きつつ、副次的にCS機にも対応するというアプローチが続くのではないか。

 次に“逆輸入”されるのは、どの人気IPだろうか。将来的には『勝利の女神:NIKKE』のような、良い意味でモバイルゲームらしくない作り込みを持った作品からの派生タイトルが、CS機向けに展開されていくのかもしれない。

© Cygames, Inc.

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