なぜ最新作ではない『モンハンワールド』が再ブレイク? プレイ人口急増の背景とは

なぜ最新作ではない『モンハンワールド』が再ブレイク?

 『モンスターハンター:ワールド』(以下、『MHW』)のSteamにおける同時接続数が急増し、話題を集めている。

 なぜ5年前に発売された、現行の最新作でもないシリーズのナンバリングが広くプレイされているのか。『MHW』再ブレイクの背景と、“『モンスターハンターライズ』(以下、『MHR』)でない理由”に迫る。

2018年発売の「モンハン」シリーズのナンバリング『MHW』

『モンスターハンター:ワールド』プロモーション映像①

 『MHW』は、カプコンが開発・発売を手掛けるハンティングアクションRPGだ。プレイヤーはひとりのハンターとなり、手つかずの自然が残された世界で、モンスターの討伐や捕獲、素材の採取などを行っていく。ゲーム内にはさまざまな武器・防具・アイテムが用意されており、集めた素材はその作成や強化に使用できる。自分好みの装備を選びながら少しずつレベルアップし、より手強いモンスターへと挑んでいくことが同タイトルのゲーム性だ。

 『MHW』は2018年1月、PlayStation 4、Xbox One向けにリリースされた。『モンスターハンタークロス』(2015年11月/ニンテンドー3DS)に続く約2年ぶりの新作で、シリーズがPlayStationプラットフォームに戻ってきたのは、2006年2月発売の『モンスターハンター2』以来、12年ぶりのこと。そのような背景から、同タイトルは発表時から大きく話題を集めた。

 リリースから約半年後の2018年8月にはPCへと移植。さらに約1年後の2019年9月(PC版は2020年1月)には、大型拡張コンテンツとなる『モンスターハンターワールド:アイスボーン』(以下、『MHWI』)もリリースされた。全世界における総出荷本数は、2023年6月末時点で1,900万本。これはカプコンが発売するタイトルのなかで最大の数字である。

 誕生当初から広く人気を博してきた「モンスターハンター」は、『MHW』の成功により確固たる地位を築き上げた。アクションRPGのさきがけとも言えるシリーズから生まれた、同ジャンルを代表するタイトルが『MHW』である。

新作発表と期間限定セールが再ブレイクの起爆剤に

『モンスターハンターワールド:アイスボーン』プロモーション映像①

 なぜリリースから5年が経過しようとしているいま、『MHW』が再ブレイクしつつあるのか。きっかけとなったのは、シリーズ最新作『モンスターハンターワイルズ』(以下、『MHWs』)の発表と、それにあわせて実施された『MHW』の期間限定セールだ。開発・発売元のカプコンは2023年12月8日、同タイトルを50%以上値下げし、PS4版を995円、Steam版を986円で販売するセールをスタートさせた。また、これにともない、本編と大型拡張コンテンツがひとつのパッケージとなった『モンスターハンターワールド:アイスボーン マスターエディション』もプライスオフに。それぞれ1,995円、1,976円で提供されている(※1)。こうした施策が紹介した新作『MHWs』の発表によってシリーズへの熱が高まっていたプレイヤーに刺さり、大きく飛躍を遂げた形だ。そこには「『MHWs』が(まだ少し先の)2025年の発売を予定していること」「年末年始の長期連休を見据える時機だったため、余暇にプレイするタイトルを探しているフリークが多かったこと」なども影響したのだろう。シリーズの人気、セールの内容から受けるインパクト、タイミングなど、さまざまな要素が絡み合い、再ブレイクへの起爆剤となった。

 Steamプラットフォームにまつわる数値を閲覧できるデータベース『SteamDB』によると、セールがスタートしたタイミングから同時接続数がじわじわと増加。約1週間後の2023年12月16日には、通常4~5万人ほどで推移していた数値が倍増し、10万人へと迫った。その後も順調にスコアを伸ばし、2024年1月6日にはピークとなる16万3千人を記録。これは『MHWI』に第4弾、第5弾の無料大型アップデートがくわえられ同時接続数が跳ね上がった2020年7月、2020年10月の数字を凌駕するものだ。このことからは、今回の再ブレイクがいかに稀な出来事であるかをわかってもらえるだろう。ホリデーシーズンが過ぎた現在もその勢いにほとんど陰りは見えず、引き続き14万人前後で推移している(※2)。

 ここ数年、好調さをうかがわせるカプコン。その糸口となったと言っても過言ではない『MHW』のリリースだが、ここにきての再ブレイクは同社の現在の求心力をあらためて示す象徴的な出来事となったのではないだろうか。

※1…2024年1月現在、紹介した内容のセールは終了している。
※2…画像のなかでグラフの最後が大きく下がっているのは、執筆日である1月17日の途中経過であったため。最終的には、同日も13万4千人ほどまで伸長している。

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