オープンイヤー型がTWS好きの趨勢となるか? 2024年のオーディオ&ビジュアル事情

専門家が語る2024年オーディオ&ビジュアル事情

 なお、映像機器に関しては、4つの潮流に注目したい。ひとつは液晶テレビの低価格化。もうひとつはOLEDの普及。そしてテレビからモニターへの広がり。最後に、プロジェクターの進化だ。液晶テレビの低価格化は、みなさんもご承知のことと思う。年末商戦では、スタンダードクラスの55インチモデルで、5~6万円のプライズタグが付けられているなど、驚くべき低価格化が進んでいる。いっぽうでミニLED採用モデルなど、映像美重視の新製品もいくつか見られたが、ひと昔前に比べて驚くべき低価格であることには間違いがない。いまや大型液晶テレビは気軽に購入できる製品となりつつある。

 しかしながら「液晶テレビの低価格化=買い」かといわれると、ケースバイケース、といわざるを得ない。というのも、同時にOLED、有機ELテレビの低価格化も進んでいるからだ。こちらも、50インチサイズであれば10万円台で購入できるようになってきており、スタンダードクラス液晶テレビの倍の価格とはいえ、出費はたかがしれている。5年以上、場合によっては10年ほど使い続けるテレビなので、液晶に対し映像表現において確実なアドバンテージを持つ有機ELを選ぶのも賢い選択といえる。このあたりは、利用するシチュエーション次第だろう。

 そして、チューナーレステレビを選択するというのもひとつの方法論になってきている。昨年、Xiaomiがauと組んで販売をスタートさせたGoogle TV「Xiaomi TV A Pro」が話題となったが、Google TVやAndroid TVなどのチューナーレスTVは、これまでもいくつか販売されており、高い注目度を集めている。テレビを見ない人が増えている昨今、チューナーレスTVで充分というニーズも確実にあるし、液晶テレビの低価格化をふまえると、大画面PCモニターよりもお買い得感があるといえる。2024年はこういった状況がさらに進んでいくだろうから、何を見たいか、何に使いたいかなど、シチュエーションに合わせたディスプレイ選びを推奨したい。

 最後にプロジェクターだが、2023年は中国勢の躍進が顕著だった。そのなかでもBenQは、ゲーミングやポータブルなどユーザビリティに配慮された個性的なモデルがいくつも登場。大いに注目を集めることとなった。いっぽうで、ジンバル構造を採用し自動設定と合わせていつでもどこでも手軽に映像が楽しめるJMGO『N1』シリーズや、レーザーとLEDをハイブリッド活用することで明るさと色合いのよさを両立させたDolby Vision対応の4KプロジェクターXGIMI『HORIZON Ultra』、シーリングプロジェクターという新提案により圧倒的な人気となったAladdin Xからは内蔵スピーカーの音質にもこだわったポン置きで使える超短焦点モデル『Aladdin Marca』など、明るさ、映像クオリティ、使い勝手の面で大きく進化。ホームシアター向けのマニアックなイメージが強かった家庭用プロジェクターが、一気にカジュアルな存在となってくれた。

 いっぽう、バッテリー搭載のポータブルプロジェクターも質、使い勝手の両面で着実な進化が推し進められている。たとえば2023年秋に登場したBenQ『GV31』は、ベースとなった『GV30』に対して、天井投写が気軽におこなえる回転構造はそのままにフルHD化。加えて、台座が落ちない、USB-Cからの充電が可能になるなど、使い勝手の面でもグレードアップが施されている。大きな進化と小さな進化が並行して進み、同時に新興メーカーも次々に登場。なかなか、今日も深いジャンルとなってきている。電源コードいらず、Android TV搭載など、テレビよりも手軽に映像が楽しめる機器として今後の動向に注目したい。

 このように、オーディオ&ビジュアル製品も「コンテンツを存分に、かつ複雑にならずに手軽で楽しめる」ことが昨今のキーポイントとなっており、実際の製品も(好評を博しているものは)そういった方向に進化を押し進めつつある。コンテンツとユーザーを大切にしてくれる製品作りは嬉しいかぎり。2024年は、どんな製品が登場してくれるのか、期待したい。

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