Live2Dモデラー・乾物ひものに聞く、VTuberの“パパ”としての幸せとクリエイター論

Live2Dモデラー・乾物ひものインタビュー

 バーチャルYouTuber(VTuber)をはじめとする、“バーチャルタレント”シーンを様々な視点から見ているクリエイター・文化人に話を聞く連載『Talk About Virtual Talent』。

 VTuberが自身の身体を動かすのに利用されるシステム『Live2D』。これはカメラによるトラッキングを用いて、顔や身体の動きをアバターに反映させるというもの。そして、Live2Dモデルを利用するVTuberの間では、イラストレーターを「ママ」と、動作の制御を設計するモデラーのことを「パパ」と呼ぶ文化がある。

 どちらもVTuberたちにとって欠かせない存在で、イラストレーターがVTuberの「身体」をかたどる存在だとすれば、Live2DモデラーはVTuberに「生命」を吹き込む役割だといえる。しかし、彼らがどのようにLive2Dモデルを制作していて、どういった技法が使われているのか。なかなか知る機会は少ない。そこで今回は、Live2Dモデラー・乾物ひもの氏へインタビューを実施。

 VTuberがLive2Dを活用し始めたころから独学でモデリングを学び、自らもVTuberとして表舞台に立つ同氏。業界における先駆者のひとりとして知られ、いまなお研鑽を続ける彼女に、クリエイターとしての悩みや葛藤、心を掴んで離さないLive2Dの魅力や「生命」を吹き込む創作論について、存分に語ってもらった。

乾物ひもの

乾物ひもの

2018年から活動を開始。
フリーランスのLive2Dモデラーとして、バーチャルYoutuber(Vtuber)のLive2Dモデルを制作し、本人もバーチャルYoutuberとして、Youtube上で、イラストやLive2Dモデルの作り方を解説した講座動画を投稿している。
最近は、出身地である福井県の魅力を発信するPR動画の投稿や宣伝活動なども行っている。

『Live2D』を使うVTuberと出会い、衝撃を受けたことで自身のデビューにつながる

ーーまずは乾物ひものさん(以下ひもの)が『Live2D』のモデラーを目指したきっかけについて教えてください。

ひもの:私はもともとフリーのイラストレーターとして活動しながら「ニコニコ動画(ニコニコ生放送)」で実況活動もしていたんです。2017年ごろのことですね。そのときに、今でも大好きな富士葵ちゃんのことを知って、VTuberの方を応援する楽しさに目覚めたんです。

 それでいろんな方を見ていたら、さはなさんというVTuberに出会ったんです。当時はまだ『Live2D』を使ったVTuberが少ない、まさに黎明期のころで、活動されている方はほとんどが3Dモデルを使用していました。そんななか、さはなさんはイラストも動きもすべて自分で制作していて、しかも当時、さはなさんは生首だったんですよ。首から上しかないモデルで活動されていて、けれど喋りがすごく面白くて。モデルを自分で作っていらっしゃるのを見て「自分でも作れるものなんだ! なんておもしろい世界だろう」と衝撃を受けましたね。

ーーそこから自分もつくってみようと?

ひもの:そうです。私自身がイラストレーターでしたし、当時は音声だけで実況活動をしていたので、自分のイラストで動くことができたら、私の表情やリアクションをより視聴者さんに伝えることができるのではないかと思ったんです。

ーー当時は、どのようにモデリング技術を学ばれていたのでしょうか?

ひもの:制作は2018年ごろから始めていて、まず最初は公式サイトを見あさりました。それで一応動かせるようにはなったんですが、問題は「トラッキングアプリ」に取り込むところで。使っていたのが『FaceRig(フェイスリグ)』というアプリだったんですが、当時はそれでしかLive2Dを動かせなかったんです。

 しかも、今のアプリはLive2Dモデルのファイルを読み込めばキレイに動いてくれるんですけど、当時は3Dモデルを動かすのが主流だったんです。なので設定ファイルを書き換えたり、特別な記述を追加する必要があったり、プログラミングまではいかずとも少し専門的な知識が必要だったんです。

 英語のアプリだったこともあって本当に情報がなくて。使いこなすのにかなり格闘していました(笑)。わからないところがあれば、公式に直接メールで問い合わせたりもしていましたね。

ーーまだ「バーチャルYouTuber」という言葉が生まれる前から存在するアプリですもんね。そのあたりの転換点となった出来事として、記憶に残っていることはありますか?

ひもの:2021年に『VTube Studio』というアプリが発売されたのですが、それはかなり衝撃的でした……。横を向くような左右の動き、縦の動きにくわえて、カメラに近づくみたいなことができるようになったんです。初めて『Live2D』で“奥行き”が表現できるようになったのは、すごく大きな変化だったように感じます。

 それから、私も開発にたずさわらせていただいた『nizima LIVE』も誕生しましたし、その時期を境にどんどん手軽にLive2Dモデルを扱えるようになっていったなと思います。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる