『ユニコーンオーバーロード』に感じる“オウガ”の息吹 アトラス×ヴァニラウェア新作に期待すること

『ユニコーンオーバーロード』に感じる“オウガ”の息吹

現代の『伝説のオウガバトル』? ファン待望の小隊構成によるSRPG

 2023年9月に存在が明らかとなった時点では、あらすじやコンセプトなどが映像で示されていただけだった『ユニコーンオーバーロード』。その後は公式サイトもオープンし、少しずつ作品としての輪郭が見えてきている。今回の発表には、仲間になるキャラクターや、ゲームシステム「探索」に関連する新情報が盛り込まれた。これにより、世界観と12人の主要登場人物の概要、根幹となるゲームシステムの一部が明るみに出たことになる。

 『ユニコーンオーバーロード』は、複数のキャラクターでユニットを形成する小隊構成と、リアルタイムシミュレーションをバトルシステムの特徴としている。これはシミュレーションRPGの金字塔『伝説のオウガバトル』にインスパイアされた設計だろう。すでに公開されているスクリーンショットや映像からも、同作からの影響を強く感じられる。公式の謳う「1990年代の名作シミュレーションRPGが持つ重厚な雰囲気や戦術性をフィーチャー・継承」という言葉は、こうした点のことを指しているに違いない。

 昨今のゲーム業界では、“往年の名作”のリメイク/リマスター化がトレンドとなっている。ここ1か月ほどのあいだでも、『スターオーシャン2』や『スーパーマリオRPG』といった1990年代発売の人気作品がリメイクされ、その出来栄えが話題を集めた。シミュレーションRPGの分野では、かつてスーパーファミコンやゲームボーイアドバンスで発売された「ファイアーエムブレム」シリーズの作品が、Nintendo Switch Onlineにて復刻されている。また、2022年10月には、シリーズの続編として『伝説のオウガバトル』から派生した『タクティクスオウガ』もリメイクされた。

 長くシミュレーションRPGを愛好してきたフリークのなかには、おなじく“往年の名作”と名高い『伝説のオウガバトル』を現行機でプレイしたいと願う人も多いはずだ。しかしながら、同作はこれまで、リメイク/リマスター化の対象とはなっていない。つまるところ、『ユニコーンオーバーロード』は、こうしたシミュレーションRPGファンのニーズに応えるタイトルとなるのではないか。

 『伝説のオウガバトル』の復刻でもなければ、おなじメーカーから生まれたタイトルでもない。なかには(というより、紹介したバトルシステム以外の部分のほとんどには)、同作とまったく異なる要素も散りばめられている。たとえば、総勢60名以上にも及ぶ仲間キャラクターたちの存在や、マップ上において攻略順を自由に決められる設計などは、現代的な要素の一例だ。とはいえ、『ユニコーンオーバーロード』に横たわるのは、紛れもなくリメイク/リマスターの文脈。そのゲーム性にあるのは、懐かしさと新しさの融合にほかならない。

 『伝説のオウガバトル』は、小隊構成による完成されたゲームシステムや、壮大なシナリオ、美しい音楽・グラフィックなどによって、プレイヤーの心を掴んできた。これらの魅力をそのまま踏襲したうえで、そこに新しさや、ヴァニラウェアのオリジナリティが盛り込まれるとすれば、今後、シミュレーションRPGというジャンルで指標となっていくようなタイトルが生まれる可能性もある。

 長らくアクションRPGを主戦場としてきたヴァニラウェアにとって、シミュレーションRPGは目立つ実績のないジャンルだ。直近に発売された『十三機兵防衛圏』では、ゲーム性の一部にストラテジーの要素を盛り込み、(アドベンチャー部分を含む)全体として高評価を獲得したが、シミュレーションRPG的な性質のみで勝負する(と見られる)『ユニコーンオーバーロード』にとっては、その実績も十分なものとは言い難い。同タイトルに大きな期待を寄せる一方で、新たな挑戦に不安を感じているファンも少なからずいるだろう。

 しかし、心配はいらないはず。『十三機兵防衛圏』のときにも、「アドベンチャー×ストラテジー」という、ヴァニラウェアの挑戦を懸念する声は上がっていたが、同タイトルは不安以上に大きかった期待を上回る結果を残した。『ユニコーンオーバーロード』でもきっと、同社はファンの想定を軽々と超えてくれるだろう。

 なお、『ユニコーンオーバーロード』という作品名は、伝説の指輪に象られたモチーフとして物語のカギとなっているであろう「一角獣(ユニコーン)」に、英語で「大君主」を意味する「Overlord」がくっついた造語である。その成り立ちから、同タイトルに描かれる物語を想像してみるのも面白いかもしれない。

 『ユニコーンオーバーロード』の発売までは、あと3か月ほど。シミュレーションRPG、さらにはヴァニラウェアのファンとして、その日を心待ちにしたい。

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