SRPGの黄金期は再び訪れるか? 『トライアングルストラテジー』に期待する“マイルストーンとしての成功”
3月4日、『トライアングルストラテジー』がスクウェア・エニックスより発売となった。
往年の名作の雰囲気を感じさせるゲームデザインから、発表以降、大きな期待と注目を集めてきた同タイトル。プレイを通じたインプレッションからは、制作陣の目指した方向性やニーズとのギャップも見えてきている。
その上で触れておきたいのが、『トライアングルストラテジー』がいま発売され、一定の成功を収める意味についてだ。本稿では、作品紹介やプレイレビューなどを通して、シミュレーションRPG史における同タイトルの立ち位置を考えていく。
往年の名作の延長線にあるSRPGジャンル最新作『トライアングルストラテジー』
『トライアングルストラテジー』は、『ブレイブリー』シリーズや『オクトパストラベラー』などの作品を手掛けたことで知られるスクウェア・エニックスの浅野チームとアートディンクが開発を担当したシミュレーションRPGタイトルだ。2021年2月配信の任天堂の新作情報番組「Nintendo Direct(ニンテンドーダイレクト) 2021.2.18」でその存在が明らかとなり、古き良き同ジャンルの名作の息吹を感じさせるオーバービューなどから、フリークたちのあいだで話題を呼んでいた。
公式の銘打ったコピーは、「ドット絵と3DCGの融合''HD-2D''で描かれる完全新作タクティクスRPG」。見下ろし型の視点で表現されたバトルマップ内には、高低差や向きといった地形上の概念があり、プレイヤーはあらゆる情報を収集・活用しながら、有利な戦況を組み立て、クエストごとの目標達成を目指す。シミュレーションRPGではお馴染みの、クラス・属性などによる強弱関係も存在。往年の名作たちが築いてきたジャンルの基本に忠実ながら、現代らしいゲーム体験も提供する注目のタイトル。それが『トライアングルストラテジー』だ。
プレイから見えてきた魅力と、背中合わせにあったニーズとのギャップ
『トライアングルストラテジー』の魅力は、その世界観にある。往年の名作を彷彿とさせる舞台構成やシナリオ、キャラクターたちの佇まいは、シミュレーションRPGファンが新作タイトルにずっと求めてきた、同ジャンルの王道とも言える要素だ。これらの絡み合いによって構築される『トライアングルストラテジー』の世界観は、発表当初からフリークたちに期待されており、実際のプレイを通じたインプレッションにおいても、やはり際立つ個性を放っていた。イベントシーンはフルボイスで進行。同じ瞬間にそれぞれの場所、それぞれの立場から見えていた世界は、ゲーム上の演出により、(主人公の存在しない空間で起こっていた出来事であっても)プレイヤーに可視化される。主要な登場人物たちの思惑が交錯する形で展開していく同タイトルの物語にとって、ある種、“群像劇的”に切り取られるこの表現手法は生命線だ。プレイヤーはこのシステムによって、『トライアングルストラテジー』の世界へと没入していく。
反面、ストーリーの描写を重視するあまり、本来シミュレーションRPGというジャンルに求められるゲームプレイの分量が少なく、どちらかと言えば、(『うたわれるもの』シリーズなどのような)「(ファンタジー)アドベンチャー+シミュレーションRPG」の色が強い点は、公式に「タクティクスRPG」と謳う『トライアングルストラテジー』にとって、欠点とも言える部分だろう。場合によっては、1時間前後のプレイ時間をただシナリオを追うために割かなければならないケースもある。シミュレーションRPGとして同タイトルを手に取ったプレイヤーほど、紙芝居的とも揶揄できるこの体験には抵抗を感じるのかもしれない。