リメイク版『スーパーマリオRPG』発売とともに振り返る、2冊の“オリジナル版”攻略本
「星空からのおくりもの」の情報量は任天堂公式ガイドブックを上回っていた。さらに……
公式ガイドブックこと「FINAL EDITION」と「星空からのおくりもの」。その2冊の印象を決定的に分けたのは情報量だ。
特に本編の舞台となるマップに描き込まれている攻略情報は、「星空からのおくりもの」の方が圧倒的に多い。町の道具屋で販売されているアイテムの一覧とそれぞれの価格、登場する敵モンスターたちの情報、隠し宝箱の位置などが詳しく掲載されている。
「FINAL EDITION」のマップには必要最低限の情報、各フロアのつながりと宝箱に入っているアイテムぐらいしか掲載されていない。敵モンスターの情報はおろか、ボスの攻略法(戦術指南)も掲載されていないのである。
情報量が少ないぶん、マップの全容が確認しやすい強みがあるのだが、どんな敵モンスターが登場し、どう対処すればいいのかが書かれていないため、攻略情報としては素っ気ないものになってしまっている。そのような情報は93ページ以降のデータベースに集約する形でまとめられてしまっているのだ。しかし、そこにも戦術指南は一切なく、ただデータを載せているだけに留まっている。
逆に「星空からのおくりもの」には最小限ながら戦術指南がある。また、敵の情報もキャラクターのCGイラスト付きで見分けが付きやすく、どの攻撃が最も効果的で、逆にまったくダメージを与えられないのかをアイコン付きで紹介した表も掲載されているのだ。
情報量が多いぶん、ゴチャゴチャしているという難点もあるのだが、どちらが攻略本として有用かはプレイヤー視点からすれば明らかだろう。それほど情報量に差があり、「星空からのおくりもの」の方が公式ガイドブックでは、と言えるほどの内容になってしまっている。
ほかにも「星空からのおくりもの」には独自の見どころが多数ある。
◆武器・スペシャル技のモーションおよびアクションコマンドのタイミング情報が掲載されている
それぞれの武器・スペシャル技を使った際、マリオを始めとするキャラクターたちがどう動くのかをコマ単位で紹介した情報が掲載されている。また、どのタイミングでボタンを押せば、攻撃力アップのボーナスこと「アクションコマンド」が発生するかの情報も記載。基本的にキャラクターのグラフィックが色付きのところが押すタイミングとして紹介されている。
◆敵モンスターを含む、ほぼすべての登場キャラクターのCGイラストが掲載されている
公式ガイドブックこと「FINAL EDITION」でも表紙と裏表紙にキャラクターのCGイラストが掲載されている。しかし、「星空からのおくりもの」にはそちらでは省かれているキャラクターのCGイラストが掲載されている。代表的なところでは、ボスのひとり「ブーマー」がいる。また、本編ストーリーの黒幕「カジオー」のCGイラストもこちらには掲載されている。
◆ボス「オノレンジャー」の特撮番組風ロゴが掲載されている
終盤に登場するボス「オノレンジャー」だが、「星空からのおくりもの」には特撮番組を模したロゴが掲載されている。作中では「カジオーせんたいオノレンジャー」との表記だが、ロゴでは「鍛冶王戦隊オノレンジャー」と記されている。
なお、この特撮番組風のロゴは攻略本のスタッフが独自に作ったものなのか、あるいは公式のものなのかは不明。
◆雑魚からボスまで、全ての敵キャラクターの「なにかんがえてるの」のテキストがデータベースに網羅されている
おそらく「星空からのおくりもの」における最大のセールスポイントだろう。149ページ以降に雑魚とボスを含む敵モンスターのデータが掲載されているのだが、なんとマロのスペシャル技のひとつ「なにかんがえてるの」を使った際に表示される心の声のテキストがそのまんま掲載されている。
一部、省かれている敵の情報もあるのだが、ほぼすべての敵に対して使った際の効果を掲載しているのは、まさにこの攻略本の執筆と編集を担当したスタッフの熱意の賜物と言ってもいいだろう。
また「星空からのおくりもの」には続編となる「裏テクニックガイド」が存在する。
こちらでは元から充実していた情報量がさらに増加。キャラクターのCGイラストも増え、なんと裏ボス「クリスタラー」のCGイラストも掲載されている。
ただ、実際はドット絵であるクリスタラーの元グラフィックにアンチエイリアスを施した感じの“のっぺり”としたものになっている。とはいえ「星空からのおくりもの」に限らず、「FINAL EDITION」にもない、詳細な戦術指南が掲載されているのは特筆すべき部分だ(ちなみにラスボスの最終形態を含む、すべてのボスに戦術指南が掲載されている)。
逆に「裏テクニックガイド」では「なにかんがえてるの」のデータが省かれてしまっているのだが、それでも情報量の多さでは「星空からのおくりもの」以上で、最終決定版(FINAL EDITION)というにふさわしい攻略本になっている。
そのような強みの数々から、『スーパーマリオRPG』の攻略本と言えば、公式ガイドブックより「星空からのおくりもの」がおススメと言いたくなるほどの大きな差があった。明らかにこちらの方が公式ガイドブックだと言えるレベルで完成度に差があったのだ。
本稿の執筆にあたって、筆者は久しぶりにこの2冊と公式ガイドブックを引っ張り出して中身を見たのだが、やはり情報量の多さでは圧倒的に「星空からのおくりもの」と「裏テクニックガイド」が上回る。公式ガイドブックの「FINAL EDITION」も情報量が少ないなりの見やすさはある。しかし、戦術指南が未掲載、道具屋で販売されているアイテムの情報がない(※データベースの104~106ページ側に分離されている)など、物足りなさは否めない。
なにより、それまでの公式ガイドブックとは異なり、『スーパーマリオRPG』の公式ガイドブックには書き下ろしのコラムも漫画も、開発スタッフのインタビューも掲載されていない。純粋な攻略本として終わってしまっているのだ。
そうした内容もあってか、『スーパーマリオRPG』の任天堂公式ガイドブックは、2023年現在で見ても史料的な価値は低い。シリーズ全体で見ても珍しく、セールスポイントと見どころに欠ける本になってしまっているのだ。
これほどの大きな差があったことから、当時の筆者は公式ガイドブックを購入して中身を見終えた後、随分ガッカリした記憶がある。同時に、『スーパーマリオRPG』の本当の公式攻略本は、どちらかというと「星空からのおくりもの」の方だとの印象が強烈に植え付けられたのだった。実際、当時攻略本を買っていた直撃世代でも、この「星空からのおくりもの」の方が良かったという感想を持った人は少なくないのではないだろうか。そのように推察してしまうほど、2冊(+1冊)の情報量の差は歴然だったのである。