27年ぶりの復刻がTwitterトレンド入り 『スーパーマリオRPG』が“いま”リメイクされる理由
6月21日、任天堂の新作情報番組「Nintendo Direct 2023.6.21」が配信となった。
数々の注目タイトルの情報が解禁となるなかで、もっとも話題を集めたのが『スーパーマリオRPG』の話題。任天堂によると、2023年11月17日にリメイク版が発売予定だという。
なぜ『スーパーマリオRPG』は人気作にもかかわらず、長い間復刻されないうえ、発売から四半世紀以上経ったこのタイミングでリメイクするに至ったのか。同タイトルを取り巻く事情から、その理由を考える。
任天堂とスクウェアが共同開発。“往年の名作”と名高いジャンルの金字塔『スーパーマリオRPG』
『スーパーマリオRPG』は、人気アクション「スーパーマリオ」から派生した、シリーズ初のRPG作品だ。任天堂とスクウェア(現スクウェア・エニックス)が共同で開発し、1996年3月9日、スーパーファミコン向けに発売された。
物語は、いつものようにクッパがピーチ姫をさらうところから展開する。マリオがクッパ城に向かい彼女を救出すると、突如、空から巨大な剣が現れ、クッパ城に突き刺さった衝撃でマリオたちは吹き飛ばされてしまう。
“「スーパーマリオ」のRPG化”と聞くと、クッパからピーチ姫を救出するストーリーを想像するが、同作では、オリジナルのボスを打倒するため、クッパやピーチ姫も仲間に加わる。シリーズらしいアクションでマップ上に用意されたギミックを解き明かしていく「アドベンチャーパート」と、スクウェアのお家芸ともいえるコマンド型・ターン制の「バトルパート」から成り立っている点が特徴。骨太なシナリオや美しいグラフィック、世界観を壊さない音楽なども高く評価され、日本国内を中心に200万本以上を売り上げる大ヒットとなった。
同作の成功がきっかけで、「スーパーマリオ×RPG」というコンセプトはシリーズ化を果たしている。2000年に登場した「ペーパーマリオ」シリーズ、2003年に登場した「マリオ&ルイージRPG」シリーズもまた、ファンの多い作品群として有名だ。
リメイク版では、原作の雰囲気をそのままに、グラフィック・UIなどをブラッシュアップ。音楽をオリジナル版同様、下村陽子氏が担当することも明らかとなった。リメイク版『スーパーマリオRPG』は2023年11月17日発売予定。価格は6,578円(税込)となっている。往年の名作がまたひとつ、現代に生まれ変わることになる。
本日、Nintendo Directにて発表されましたリメイク版「スーパーマリオRPG」の音楽を担当しております。オリジナルのファンの皆さまにも今回初めてプレイする皆さまにも楽しんで頂けるように願って心を込めて全曲アレンジさせて頂きました!続報をお楽しみに♡ #NintendoDirectJP #スーパーマリオRPG https://t.co/W05S5MMsQR
— Yoko Shimomura|下村陽子 (@midiplex) June 21, 2023
絶望視されていたリメイク化。背景にあった2つの問題
「スーパーマリオ」や「ゼルダの伝説」、「星のカービィ」など、数々の人気シリーズを抱える任天堂と、「ファイナルファンタジー」や「聖剣伝説」、「ロマンシング サ・ガ」といった、いまとなってはジャンルの金字塔として名を挙げられるRPG作品を数々世に送り出していたスクウェア。その両社が手を取りあって発売した『スーパーマリオRPG』は、前評判に違わない結果を生むことになるが、四半世紀以上ものあいだ、リマスターやリメイク、移植がおこなわれてこなかった背景には、「理由」と考えられている出来事がある。それがPlayStationのローンチごろに生まれたとされる、任天堂・スクウェア間の“確執”だ。
2001年より2013年までスクウェア(2003年以降はスクウェア・エニックス)の代表取締役を務めた和田洋一氏は自身のnoteのなかで、彼が入社した2000年当時、両社のあいだに確執が存在していたことを認めている。当時、スクウェアはPlayStation以外のプラットフォームにソフトウェアを供給しておらず、任天堂から取引拒否を突きつけられた唯一の開発会社だったという。同氏はその原因、あるいは確執が続いた要因について、「推測の域を出ない」としながらも、いくつかの事柄を挙げている。それらが事実であるかは当事者にしかわからないが、そこに確執があったことそのものは真実であるようだ。
ファンたちのあいだでは、『スーパーマリオRPG』を復刻できない理由がこの確執にあると、まことしやかに囁かれている。真偽はどうであれ、“往年の名作”とされる作品が四半世紀以上ものあいだ、“歴史的コンテンツ”として化石のように扱われてきたのだから、影響がまったくなかったとは言い難いだろう。
このような背景もあり、リメイク版『スーパーマリオRPG』の発表は、これ以上ないほどに界隈を賑わせた。事のいきさつを知ることで、同タイトルの開発・発売をまた違った感慨で受け止められるのではないだろうか。
こうした経緯から『スーパーマリオRPG』のリリース直後に発売された『トレジャーハンターG』(SFC・1996年5月24日)以降、任天堂のプラットフォームでソフトウェアを発表していなかったスクウェアだが、やがてすれ違いは解決に向かう。約7年の空白を経てリリースされたのが、『ファイナルファンタジータクティクスアドバンス』(GBA・2003年2月14日)や『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』(以下、FFCC/GC・2003年8月8日)といったタイトルたちだ。発売日の前後はあるが、和田氏はこの『FFCC』を「取引再開の記念碑的タイトル」としている。
2000年代前半に両社の関係が良化したことで障害がなくなったかように映る『スーパーマリオRPG』のリメイク化だが、実は問題はこれだけではなかった。“もうひとつの越えるべきハードル”とされていたのが、同タイトルをめぐる権利関係についてだ。
『スーパーマリオRPG』では、ゲーム内に登場するオリジナルキャラクターの権利をスクウェアが所有している。さらに作中には、『FINAL FANTASY IV』からのボス・音楽の転用もある。つまり、任天堂だけがリメイクしたいと考えても、両社の合意がなければ、行動を起こせない事情があったのだ。