リメイク版『スーパーマリオRPG』発売とともに振り返る、2冊の“オリジナル版”攻略本

『スーパーマリオRPG』2冊の“オリジナル版”攻略本

思い返せば、何かの制約が働いていた感じのある『スーパーマリオRPG』の外側

 なお、『スーパーマリオRPG』の公式ガイドブックが発売された当時は、まだエイプ編集によるシリーズが刊行されていた。『スーパーマリオRPG』の公式ガイドブックも、エイプ編集によるものである。

 ただ、エイプは1995年頃から知的財産権を管理する会社へと変化し始めた影響なのか、徐々に純粋な攻略本としての任天堂公式ガイドブックが出てくるようになっていた。事実、『スーパーマリオRPG』の前にも『スーパードンキーコングGB』、『スーパーマリオ ヨッシーアイランド』、『スーパードンキーコング2 ディクシー&ディディー』といった、コラムや開発スタッフインタビューが掲載されていない、純粋な攻略本としての任天堂公式ガイドブックが刊行されている。

純粋な攻略本となっていた『スーパーマリオ ヨッシーアイランド』と『スーパードンキーコング2 ディクシー&ディディー』の公式ガイドブック(※いずれも2023年現在絶版)
純粋な攻略本となっていた『スーパーマリオ ヨッシーアイランド』と『スーパードンキーコング2 ディクシー&ディディー』の公式ガイドブック(※いずれも2023年現在絶版)

 ただ、それらの公式ガイドブックと比較しても『スーパーマリオRPG』の公式ガイドブック記載の情報量には、明らかな物足りなさがある。また、『スーパーマリオRPG』と同じ、1996年生まれのスーパーファミコン用タイトル『星のカービィ スーパーデラックス』、『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』も、それぞれ公式ガイドブックが発売されている。

エイプ編集ではない『星のカービィ スーパーデラックス』と『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』の公式ガイドブック(※いずれも2023年現在絶版)
エイプ編集ではない『星のカービィ スーパーデラックス』と『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』の公式ガイドブック(※いずれも2023年現在絶版)

 ところが『星のカービィ スーパーデラックス』は特別な漫画の掲載、『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』はディレクターへの直撃インタビューなど、それまでの任天堂公式ガイドブックらしいセールスポイントを持った本に仕上げられている(※ちなみにこの2冊はエイプ編集のシリーズではない)。それを踏まえると、『スーパーマリオRPG』の物足りない内容は明らかに浮いており、なんらかの事情が影響した可能性を疑ってしまうのだ。

 思えば『スーパーマリオRPG』の外側、とりわけメディアミックス周りには不遇と思しき動きも見られた。小学館『コロコロコミック』連載の『スーパーマリオくん』でストーリーが最後まで描かれず、(ほとんど強制的に)打ち切られ、単行本にも収録されずに終わったのがそのひとつだ(※のちに発売された単行本50、51巻に約20年以上遅れる形で収録)。講談社『コミックボンボン』に連載されていた本山一城氏のマリオ漫画に至っては、『スーパーマリオ64』編の1話冒頭で1コマだけ言及されておしまいと、『スーパーマリオくん』のようにストーリーすら描かれていない。

 こうした動きをいまになって振り返ると、公式の監修が入るものほど制約があったのか、逆に「星空からのおくりもの」のように監修が最小限なものはある程度自由にできたのかなど、少し勘ぐってしまうところだ。漫画に関しては、1996年6月に『スーパーマリオ64』の発売が控えていたという事情も影響していると思われるが。

 あれから25年が経ち、一時期は修復不能なレベルにまで陥りかけたとされる任天堂とスクウェア(スクウェア・エニックス)の関係は改善。2006年にはニンテンドーDS向けに発売された『マリオバスケ 3on3』で久しぶりにコラボレーションを果たしている。その後も良好な関係を維持しながら今回、リメイク版が発売されるまでつながった。

 ちなみにリメイク版には、「なにかんがえてるの」の心の声を敵モンスターごとに確認できる「モンスターリスト」が新たに追加されている。「星空からのおくりもの」を知る人間からすると、ゲーム内機能としての実装は大変感慨深く感じると同時に、当時は容量的に困難だったと思しき要素を実現できるようになった技術の進歩を感じられるところだ。

 逆に攻略本に関する情勢は、インターネットの隆盛と浸透によって、当時にも増して厳しいものになってしまった。任天堂公式ガイドブックも2018年発売の『星のカービィ スターアライズ』を最後に刊行されなくなり、事実上の終焉を迎えてしまっている。残念ながら、リメイク版『スーパーマリオRPG』の任天堂公式ガイドブックが刊行される可能性はほとんどないに等しいだろう。

 ただ、任天堂公式ガイドブックの中には『MOTHER』、『スーパーマリオコレクション』のように新装版として復刻されたケースもある。なので、『スーパーマリオRPG』も当時、掲載できなかったさまざまな情報を含んだ本当の「FINAL EDITION」が登場しないかと、密かに期待してやまないこの頃だ。同じようにアスペクトこと現KADOKAWAからも、当時を思い起こさせるようなユニークな攻略本が発売され、双方が内容面で張り合う……みたいな展開を楽しみにしているのは自分だけだろうか。

 だが、それ以上に楽しみなのはマリオのRPGシリーズに再始動の機運が見られることだろう。

ペーパーマリオRPG [Nintendo Direct 2023.9.14]

 2024年には『スーパーマリオRPG』から派生したシリーズ『ペーパーマリオ』の2作目をリメイクした『ペーパーマリオRPG』がNintendo Switch向けに発売される。また、リメイク版『スーパーマリオRPG』の発売4日後の11月21日には、同じく『スーパーマリオRPG』からの派生で、精神面なども色濃く受け継いだ『マリオ&ルイージRPG』第1作の発売から20年を迎える。

 ただ、『マリオ&ルイージRPG』は開発元の倒産により、シリーズ復活の可能性は絶望的としか言いようがないほど厳しい状況にある。とはいえ、このような機運が高まりつつある状況。なんらかの動きがあることを密かに祈りたいところである。

© Nintendo/SQUARE ENIX  Characters: © Nintendo, © SQUARE ENIX

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