後の“定番”となったシステム変革 発売30周年『ロックマンワールド4』はシリーズ史における重要な名作だ
後の定番となったサポートアイテム購入システムの始まりは『ロックマンワールド4』だった
『ロックマンワールド4』内では「ライト研究所(RIGHT LAB.)」と称されているこのシステムは、「Pチップ」と呼ばれる通貨に該当するアイテムを支払うことで、ステージ攻略に便利なサポートアイテムを購入・補充できるというものである。
「ロックマン」シリーズでは『ロックマン2』以降、使用することでロックマンの体力を全回復させる「E(エネルギー)缶」なるサポートアイテムが定番になった。ただし、それらは各ステージを攻略している最中に手に入れる、いわば”現地調達”が基本。しかも、その多くは若干の操作テクニックを必要とする場所に配置されがちで、簡単には入手できないようになっていた。一部のステージでは簡単に手に入ったり、また某シリーズ作ではいわゆる”リセマラ”の作戦が使えたりもしたが……それはさておくとして。
『ロックマンワールド4』の購入システムは、そうしたサポートアイテムを簡単に手に入れるための選択肢、救済措置として導入された。
前述の通り購入には「Pチップ」なる通貨アイテムが必要で、ある程度、稼いで貯めることが必要とされる。それゆえに恩恵にあずかるには多少の時間を要するのだが、手軽にサポートアイテムを入手できる機会が設けられたのは、「ロックマン」シリーズにとっては大きな変革だったと言えるだろう。これにより、攻略の幅が広がるのみならず、難易度の面でもお金の力に任せて押し通す選択肢が設けられたことによる柔軟性が生じたからだ。
また、サポートアイテム自体の種類も増えた。体力ではなく、特殊武器使用時に消費する「武器エネルギー」だけを全回復する「W(ウェポン)缶」、体力と武器エネルギーの双方を全回復させる「S缶」が新たに追加され、個々の状況に応じた回復が図れるようになったのだ。さらに4つ集めると「E缶」に変化する「ミニE缶」も追加されている。
さらに、サポートアイテムのなかには購入することで便利機能が備わるものも。それが「エネルギーバランサー」だ。これを手に入れ、武器エネルギー回復アイテムを取ることにより、現在装備していない特殊武器のなかで、一番消費している武器から順に回復してくれるのである。過去の『ロックマン』では回復するたび、個々の武器に装備しなおす手間が必要とされた。だが、本作はこのアイテムを手に入れてしまえばその必要もなくなる。同時にゲーム全体の進行も快適になるのだ。
極めつけとして、本作はゲームオーバーを繰り返すと、ロックマンの攻撃アクションのひとつで溜め技の「スーパーロックバスター」が強化されるイベントも発生する。なんと、苦戦しているプレイヤーに配慮した特別な救済措置まで設けているのである。
このようなサポート要素の強化により、ゲームとしての遊びやすさが格段に向上するだけでなく、『ロックマン』というアクションゲームの構造面にも柔軟性がプラスされた。
この結果、何が起きたかと言えば、外伝作品ながら本編「ロックマン」シリーズを超えたものになってしまったのである。
特にサポートアイテム購入システムの導入がもたらした影響は非常に大きく、全体的な難易度の傾向まで変化。システムの活用次第では、よりいっそう攻略しやすくなるという”優しさ”が備わったのだ。ある意味、RPGの発想を採り入れたとも言える。
同じようにRPGの発想を採り入れた『ロックマン』のひとつが、本作の約1か月半後、スーパーファミコン向けに発売された派生の新作『ロックマンX』だ。体力の最大値を上昇させるアイテム(ライフアップ)の導入、防御力などのステータスを向上させる「パワーアップパーツ」がそれに該当する。
『ロックマンワールド4』に導入されたのはそうしたものではなく、“お店(道具屋)”の要素だったが、それだけでもゲーム全体(主に難易度)に大きな変化をもたらしたのには、どことなく「ロックマン」シリーズとRPGの相性の良さを匂わせていて面白い。その後、事実上のRPGとして誕生した『ロックマンDASH』、『ロックマンエグゼ』、『流星のロックマン』の存在を思えばなおのことだ。
そして、『ロックマンワールド4』でのこの試みは、結果的に本編シリーズへの逆輸入が行われ、以降、新たな定番として定着した。現に『ロックマン7 宿命の対決!』以降のシリーズには、サポートアイテム購入システムが決まって採用されている。最も新しい『ロックマン11 運命の歯車!!』においても、件のシステムは健在である。さらに補足すれば、「ロックマンX」シリーズでも一部の作品で採用されている。
そのことからも、『ロックマンワールド4』がいかに重要な名作のひとつであるのかは言うまでもないだろう。
発売当時は本編新作である『ロックマン6』に話題性と注目を持っていかれたが、実は後の「ロックマン」シリーズに大きな変化をもたらす”きっかけ”となる作品だった。そのことを思うと、あらためて発売時期の悪さが悔やまれる限りだ。前作『ロックマンワールド3』も実は『ロックマン5』の1週間後の発売だったことから、それを踏襲したのかもしれないが、本作に関しては裏目に出てしまった感が否めない。