『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』の成功が映し出す、現代ゲーム市場のあるべき姿とは?

「エグゼ」復刻から考える、ゲーム市場のあるべき姿

 4月14日、『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』が発売となった。

 ゲームボーイアドバンス時代に発売された名作として、現在もなお多くのファンに語り継がれている「ロックマンエグゼ」。同シリーズはなぜゲームフリークの心をつかむのだろうか。概要を踏まえ、ゲームシーンに与える影響を考察する。

シリーズ10作品を1つのパッケージにした、ファン待望の復刻作

ローンチトレーラー『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』

 『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』は、カプコンの人気2Dアクションゲーム「ロックマン」シリーズのうち、「ロックマンエグゼ」と冠されたスピンオフタイトルを集めたオムニバスソフトだ。収録されているのは、『バトルネットワーク ロックマンエグゼ』『バトルネットワーク ロックマンエグゼ2』『バトルネットワーク ロックマンエグゼ3』『バトルネットワーク ロックマンエグゼ3 BLACK』『ロックマンエグゼ4 トーナメント レッドサン』『ロックマンエグゼ4 トーナメント ブルームーン』『ロックマンエグゼ5 チーム オブ ブルース』『ロックマンエグゼ5 チーム オブ カーネル』『ロックマンエグゼ6 電脳獣グレイガ』『ロックマンエグゼ6 電脳獣ファルザー』の10作品。オリジナル版はそれぞれ、2001~2005年までのあいだにゲームボーイアドバンスでリリースされた。該当するタイトルの数や、本家「ロックマン」シリーズとのゲーム性の違い、獲得した人気・評価などから、これらをまとめて「ロックマンエグゼ」シリーズとすることもある。発売から約20年が経過してもなお、根強い人気を誇るシリーズの復刻・完全版が『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』というわけだ。

 同タイトルは2022年6月、任天堂が配信する新作情報番組『Nintendo Direct mini ソフトメーカーラインナップ 2022.6.28』のなかで、その存在が明らかとなった。対応プラットフォームは、PlayStation 4、Nintendo Switch、Steam。価格は、パッケージ版が6,589円(税込)、ダウンロード版が5,990円(税込)となっている(※1)。

※1:1~3までを『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション Vol.1』、4~6までを『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション Vol.2』として販売する分割版もある。ダウンロード版のみの展開で、それぞれ3,990円(税込)。

世界観やシステムなど、無二の要素を盛り込みたちまち人気シリーズ化

 「ロックマンエグゼ」に共通して描かれているのは、「PET」と呼ばれるモバイル端末を誰もが所有する近未来の姿だ。人々は同端末のなかにある疑似人格型プログラム「ネットナビ」を活用し、便利な生活を送っていた。一方、世界では、IT産業の急速な発達にともない、ネット犯罪が深刻化。ウイルスの蔓延、サイバーテロの頻発が社会問題となっていた。主人公である小学生・光熱斗は、自身のウイルスバスティングの能力を生かし、凶悪なネット犯罪集団・WWW(ワールドスリー)に立ち向かう。彼のネットナビの名前は「ロックマン」。これが「ロックマンエグゼ」の物語の背景である。

 プレイヤーは、個別に効果が付与された「チップ」と呼ばれるカードのようなものを用い、ロックマンの特別な力を付与しながら、自らの操作で電脳世界のウイルスたちと戦う。「移動や探索、シナリオの進行とは切り離された戦闘画面」「ランダムエンカウント」「バトルのリザルトに応じ、少しずつキャラクター、チップフォルダをアップグレードしていく育成要素」といったシステムは、RPGに由来するものだ。本家の「ロックマン」とは異なり、「ロックマンエグゼ」は、カードゲーム・ボードゲームの要素を取り入れたアクションRPGの性質を持っている。

 シリーズが登場した2001年は、まだIT文化の草創期。1999年に登場したADSLがようやく商用化され、普及の兆しを見せていた頃だった。移動電話の契約数が固定電話を超えたのもこの頃。スマートフォンはまだ流通しておらず、モバイル端末の中心はフィーチャーフォン(ガラケー)やPHSだった。いま振り返ると、開発元のカプコンがいかに的確に未来を見据えていたかがうかがえる設定となっている。

 こうした世界観や、シンプルながら斬新なシステム、絶妙なゲームバランス、登場する魅力的なキャラクターたちなど、構成するさまざまな要素が評価され、「ロックマンエグゼ」は「ロックマン」における代表的なスピンオフとなった。また、「ロックマンエグゼ」はシステムの根幹に通信対戦を盛り込んだシリーズでもある。いまでは当たり前の仕組みとなっている同要素だが、当時はまだまだ浸透していなかった。その意味においても、同シリーズがゲーム文化史に刻んだ足跡は、あまりにも大きいといえる。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる