『ストリートファイター6』をプレイして感じた「モダン」の強さと難しさ。なぜ「モダン論争」は起こるのか
ハイレベル帯での可能性は未知数
もう一点、モダン操作で懸念されているのが、モダンでのプレーが最適化されてハイレベル帯、特にプロシーンの試合が膠着しすぎないかだ。
ハイレベル帯ではジャンプはもちろん、ガードさせられなかった通常技や難しい確定反撃にも対応できるプレイヤーばかりだが、モダン操作はその精度をより上げてくれる。お互い手が出せず、じりじりとした試合はそれはそれで面白いのだが、やはり攻めの楽しみを味わえるゲームの方が多くのプレイヤーに受け入れられるだろう。大会の視聴体験も同様で、やはり激しい展開の試合の方が盛り上がるはずだ。
とはいえ、ハイレベル帯やプロシーンで特定のキャラの対策でモダン操作が選択肢となることや、モダン操作のプレイヤーが活躍するのは喜ばしいことだと筆者は考えている。新たな操作法ならではのテクニックが開発されて大会で披露されたり、クラシックVSモダンの激突が決勝戦で実現したりすれば、これまでとはまた違った盛り上がりが見られるのではないだろうか。また、モダン操作のプレイヤーが大会で活躍することで、モダンを理由にゲームを始めたプレイヤーにとって励みになることもあるだろう。
だが、モダンで可能な防御テクニックのほとんどは、クラシックでは難しいというだけで理論的には可能となっている。そのため、クラシック操作を抑えて、モダン操作がどこまで使用率を伸ばすかは未知数だ。この点に関しては、今後モダンで活躍するトッププレイヤーが増えれば見えてくるものがあるだろう。『スト6』ではすでに活躍しているプロがモダンを使用する以外にも、他のゲームで結果を残してきたプレイヤーがモダン操作で参入している。彼らがどのような活躍をするかで、ハイレベル帯でのモダンシステムの評価は決まってくるのではないだろうか。
期待したいのは学習の機会と攻めへの動機付け
こうした特徴と、今後への期待と不安を持たれているモダンシステムだが、「新しい操作法」として存在感を示していることは間違いないだろう。
筆者としては、モダン・クラシックと操作法が2種類あることによって、双方の操作法で共通して上達のために壁となりがちな、地上戦を学習する必要性を明確にしているように思える。クラシックではモダン相手に無理に攻めないように、モダンではクラシックにダメージ負けしないように守り以外の選択肢をとれるようになることが、それぞれ上達の課題となっているのは面白い。
ゲーム内でもコンボトライアル等が増えているだけに、こうした立ち回りの学習をしやすくするようなコンテンツが充実すれば、『スト6』はより続けやすいゲームになるのではないだろうか。もちろん、立ち回りは抽象的な部分もあるので、ゲーム内のコンテンツで学べるようにするのは難しいが、「下がり続ける相手には焦らず歩いて距離を詰める」「追い詰められた相手がジャンプをしてきたら通常技対空でいいのでしっかり落とす。そのために画面の上方向への意識を増やす」といった初歩的な内容を知る機会がゲーム内にあってもいいかもしれない。本作はチュートリアルが従来の「ストリートファイター」シリーズよりも充実しており、ワールドツアーにもチュートリアル的なクエストが存在するので、これらをボリュームアップするのもいいのではないだろうか。
またゲーム外でも、自分の試合や、他のプレイヤーのリプレイを見たり、YouTubeなどに投稿されている動画を視聴したり、SNS等で情報を仕入れたりといったように、一昔前よりも学べる機会は増えている。そちらに誘導する仕組みを拡充するのもいいだろう。
ゲームシステムとしては、どうしても試合が膠着しやすいモダン操作に何らかの調整を施すことも考えられる。とはいえ、弱体化方向の調整だけではプレイヤーのモチベーションを低下させてしまうので、プレイヤーに攻める意識を持ってもらえるシステムの調整を個人的には期待している。
ともあれ、本作はリリースからまだ3ヶ月しか経過していない。今後の研究やアップデートに期待する。最後になるが、クラシック・モダン論争は今後もきっかけとなる出来事があるたびに火がつくだろうが、周囲の意見は気にせず自分に合った操作法でのプレイをオススメする。クラシック操作で行き詰まっている人は、一度モダン操作を試してみるのもいい。なにか見えてくるものもあるはずだ。
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