『ストリートファイター6』に実装された“モダンシステム” 格ゲーとコマンドの切っても切れない関係性
6月2日、『STREET FIGHTER 6』(以下、『ストリートファイター6』)が発売となった。
草分けとして、長らく格闘ゲームのジャンルを牽引してきた「ストリートファイター」。同シリーズは今回の最新作で、「操作の簡略化」という大きなチャレンジをおこなっている。
発表時には、賛否両論の議論を巻き起こしたこの新しい仕組み。同システムの実装を入り口に、格闘ゲームの大衆性・文化性・ゲーム性におけるコマンドのウエイトについて考えていく。
“ジャンルの草分け”が送り出す、7年ぶりのシリーズ最新作
「ストリートファイター」シリーズは、1987年にアーケードでリリースされた『ストリートファイター』を初作とする、カプコン開発・発売の2D対戦格闘ゲームだ。プレイヤーは、作中に登場する数々のキャラクターのなかから自身が操作する一人を選び、パンチやキック、必殺技、ジャンプ、ガードといったアクションを駆使しながら、対戦相手の撃破を目指す。ジャンルにおいては草分けとされるシリーズで、続編である第2作『ストリートファイター2』が当時の普及機・スーパーファミコンに移植されたこともあり、一躍人気のシリーズとなった。
今回発売となった『ストリートファイター6』は、前作『ストリートファイター5』から7年ぶりとなる最新作。シリーズのエッセンスを踏襲しつつ、さまざまな新要素を盛り込んでいる。対応プラットフォームは、PlayStation 4、PlayStation 5、Xbox Series X/S、Steamで、価格は、パッケージ版が8,789円(税込)、ダウンロード版が7,990円(税込)となっている(※)。2023年中には、アーケード版も稼働予定だ。
※どちらもゲーム本編のみを収録したスタンダード・エディションの価格。このほか、ゲーム本編に一部の追加キャラクター、追加キャラクターカラーなどを同梱したデラックス・エディション(税込10,490円)、デラックス・エディションに追加コスチューム、追加ステージなどを加えたアルティメット・エディション(税込12,490円)も発売されている。
コマンドをめぐる格闘ゲームの大衆性・文化性・ゲーム性
先述のとおり、『ストリートファイター6』にはさまざまな新要素が盛り込まれている。そのなかで、話題を集めているのが「モダン」と呼ばれる操作タイプの存在についてだ。本稿では便宜上、この仕組みを「モダンシステム」とし、話を進めていく。
モダンシステムとは、必殺技ボタン、もしくはそれに方向キーを組み合わせることで、各キャラクターが固有で持つさまざまな技を簡単に繰り出せる操作方法のこと。コマンド入力をボタン操作のみで完結できる点が特長で、格闘ゲームにありがちなコマンド入力のハードルの高さを緩和しつつ、入力ミスによる失敗を防止できる。
また、ゲージを使用する「スーパーアーツ」、基本的なコンボを自動でおこなってくれる「アシストコンボ」も、対応する方向キー+必殺技ボタン+強ボタン、アシストボタン+弱・中・強ボタンの連打でそれぞれおこなえる。『ストリートファイター6』では同システムの実装によって、あらゆる操作の簡略化を目指している。
格闘ゲームというジャンルにおいては、コマンド入力の難易度がプレイヤーの参入障壁となっていた。「格闘ゲーム=初見お断り」といったイメージを持つゲームフリークは少なくなく、その点が対人要素を持つ先駆的・代表的ジャンルでありながら、主に裾野の広さという意味で、そのほかの後塵を拝する要因となっていた側面がある。
歴史を振り返ると、この課題には同ジャンルのさまざまな新興タイトルが向き合ってきた。たとえばその作品性から新規層を多く取り込んできた『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ』や『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』、『グランブルーファンタジー ヴァーサス』などには、同様のシステムが実装されている。
シリーズの開発・発売を担うカプコンにとって、モダンシステムは長年にわたり格闘ゲームが抱えてきた課題を解決する“起死回生の一手”というわけだ。そこには草分けであるからこその葛藤も、使命感とともに存在していたはずだが、ジャンルとして今後長く生き残っていくことを考えたとき、参入のハードルを下げることが必須だという結論に至ったのだろう。